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悪の組織にいたらしい女の子が好みだったので、同居することにしました。  作者: 四季


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24話 雨の休日も楽しく過ごしたい

「……ホント? ……怒ってない?」


 リリィは疑いの目を向けてくる。

 私はそんなに怒っているように見えるだろうか。そんなに怖い顔をしているだろうか。そんな風に振る舞っている自覚はないのだが。


「怒ってないよ!」

「……ホントに?」

「本当だってばー。そんな嘘、つく必要ないでしょー」

「ま、それならいいけど……」


 私は勉強机の上の片付けを続けている。集中して片付けるのも効率は良いかもしれないが、個人的には、喋りながら片付けをするのが好きなのだ。もちろん、こういう部分は個人の好みの問題なのだが。


「でも、ローザさんのことは、ちょっと考えてみて! もしかしたら悪人じゃないかも!」

「はぁ……。まだ信じるつもりでいるワケ」

「だって悪人には見えないでしょ? 最初に会った時以外は害を与えてもこなかったし」

「日和は何も知らないから信じられる、それだけのこと」

「えー、そうかなー」


 その日はそんなことを話しながら就寝時間を迎えた。

 と言っても、就寝時間が決められているわけではないけれど。


 翌日は休日。学校はない。つまり、リリィとずっと一緒にいられる日、である。それはもはや祝福と同義である。朝はつい寝坊してしまうが、一度起きたらリリィと共に暮らせる。これがたまらなく幸せ。


 リリィも同じ気持ちだったらいいな、なんて考えたりもする。


 しかし今日は雨。

 私が起きた時には、既に、無数の雨粒がアスファルトを叩いていた。


「今日は雨かー。残念だなー」


 せっかくの休日だ、リリィと出掛けたかった。

 しかしこうも本格的な雨だと外出はしづらい。

 もちろん雨でも出掛けられないわけではないのだけれど。ただ、雨の時に出掛けると、後処理が面倒だ。傘を拭いて乾かしたり、服を一応干しておいたり、と、急激に用事が増えてしまう。

 それに、家事を主に担当している母親にも迷惑がかかる。

 それもまた雨の日の外出を避けたい理由の一つだ。


「何を当たり前のことを言ってるワケ。見れば分かるし」

「もー! つーめーたーいー!」

「家にいれば濡れないし、べつによくない?」

「出掛けたかったよー!」


 本心をだだ漏れにする私を見てリリィは少し引いているようだった。

 取り敢えず話を変えよう。


「あ、お菓子食べる?」

「唐突過ぎ」

「何か貰ってくるよ! リリィは何系がいい?」

「べつに、何でも」

「オッケー!」


 私は自室を出ていく。

 その足取りはとても軽い。


 雨は少しばかり憂鬱で残念。でも、今はリリィがいてくれるから、不快ではない。当然退屈でもない。近くにリリィがいてくれれば、いつだって世界は明るい。


 リビングへ着くと、母親に声をかける。


「リリィにあげるお菓子ない?」

「あるわよ。昨日買ってきた桃ゼリー」


 桃ゼリー、それは恐らく母親が最近コンビニで買ってくる商品のことだろう。

 私も何度か食べたことがある。

 するりと喉を通り過ぎていく心地よさがたまらない。甘くて、けれども甘過ぎはせず、食べやすい。

 あれならきっとリリィも気にいるはず。


「ちょっと待ってて。器に移すから」

「ありがとう」


 待つこと数分、母親は丸いお盆を渡してきた。


 乗っているのは透明な器二つと銀スプーン二本。透明な器には、既に、きちんと桃ゼリーが乗っている。ドーム型になっている桃ゼリーは見るからにぷるんとしていて可愛らしい。


 これは慎重に運ばなくてはならない。

 ひっくり返してしまったら大変だ。

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