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悪の組織にいたらしい女の子が好みだったので、同居することにしました。  作者: 四季


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21話 お土産を持ってきた……らしい

「まぁ! お土産? ありがとう、露澤さん!」


 一旦家の中に入り母親に事情を説明する。

 すると母親は嫌な顔一つせず外に出てくれた。

 私はその様子を家に入ってすぐのところから観察する。玄関の扉を少しばかり開けて、隙間から覗くようにして様子を見るのである。


「いえいえ」


 ローザは相変わらず笑顔で接している。

 本当に悪の組織の人なのか? と疑問に思えてくるくらい自然だ。


「いつもごめんなさいねー。色々貰ってしまって申し訳ないです、お返しもできないのにー」

「気になさらないでください、奥さん。自分がしたくてしていることですから。お返しも必要ありませんし」


 玄関で外の様子を見ていると、背後からリリィが現れた。

 尻を突き出すような体勢で外を見ている私を見て不思議に思ったのか、リリィは「何してるの、そんな格好で」と声をかけてきた。


「実はね、ローザさんが」

「なっ……! また……!?」


 リリィは顔面を硬直させる。


「対応は母に頼んだんだ。私はちょっと嫌だから」

「その方がいい」

「今のところ怪しい動きはないけど、一応、こうして見張ってるんだ」

「……そういうこと」


 私は僅かに開いた扉を隙間から外の様子を窺う。いつ何時ローザが本性を現すか分からないから、目を離すことはできない。いや、ローザが本性を表しても、素人の私では抵抗できないだろうけど。ただ、通報するとか駆け寄るとか、できることも少しはあるはず。だからこうして常に様子を確認しておくのだ。もしもの時に備えて。


 母親とローザが話し出して数分、母親が戻ってきて扉を勢いよく開ける。


「日和ここにいたの! ちょうど良かった。ちょっと出てきてもらってもいい?」

「え……何で……?」


 戸惑う私の後ろにいるリリィは不愉快さを前面に押し出した顔を作っている。


「露澤さんが校門前でのことを謝りたいって仰っているのよ。何かあったのでしょう?」

「たいしたことじゃないよ」

「気にしてられるみたいなの。謝りたいんですって」

「……う、うん、分かった」


 彼の前にわざわざ出ていくのは嫌だった。

 偶然出会ってしまうだけでも複雑な心境なのに、わざわざ彼の前に出ていくなんて、複雑なんて言葉ではまとめられない何とも言えぬ心境にならざるを得ない。


 ただ母親が共にいてくれるという意味ではリスクは低めと言える気がする。さすがに母親の目の前で娘に手を出したりはしないだろう。そこまで思考力なしではないはず。


 そんな風に考え、今は母親に従うことにした。


「あの、何でしょうか。謝罪なら要りませんけど」


 こんな形でまたしても対面することとなるとは。


「あの時は悪いことしちゃったね、ごめんね」

「はい……?」

「いきなり贈り物は駄目だったよね。確かに失礼だったなーと思って」


 ローザの思考が読めない。


 最初はリリィに絡んできて、さらに攻撃まで仕掛けてきて。その後は攻撃を仕掛けてくることはなくて。けれどもやたらと会いに現れる。妙に近づいてくる、そして関わろうとしてくる。それも、善人のような表情で。


 何を企んでいるの?

 どんな意図があってこんなことをするの?


「謝りたくてさ。ごめんね、急に」

「いえ」

「お詫びに。はい、これ」


 彼が出してきたのは白い薔薇一本。


「え……」

「どうぞ。今回は受け取ってもらえるかな?」


 なぜまたしても薔薇を渡そうとする!?


「あの……えっと、困ります」

「あらあら、露澤さん、日和にもプレゼント持ってきてくれていたのー? ありがとうございますー」


 母親は勝手に受け取ろうとする。


「待って、勝手に話を進めないで」

「いいじゃない日和、せっかくだからいただきなさいよ。素敵なお花よ? 良かったじゃない」


 結局今回は薔薇を受け取ることとなってしまった。

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