11話 月曜日の朝
ある月曜日の朝。
玄関先でリリィと喋っていると、夢見さんが通りかかった。
「あっ。夢見さん、おはよう」
「おはよう」
家の前で夢見さんを見かけるのは初めてな気がする。
何か訳があってたまたまここを通ったのだろうか? 今日だけ? あるいは、少し引っ越したとか、何らかの事情があるのか。謎に満ちている。さすがに、私に会いに来たということはないだろうけど。
「あれ? 夢見さんって家この辺だった?」
「えと……実は、そうじゃなくって……」
引っ越してきたというわけではなさそうだ。
「じゃあ何か用事なの?」
「実は……噂が気になってて」
「噂?」
「浅間さんが可愛い女の子と同居しているって噂を聞いて、気になってて……」
何だその噂。
そんな話が流れているなんて聞いていない。
「えっ、そんな噂が。そうだったの。……で、噂が本当か確かめたくて見にきてみたということ?」
「う、うん。実はね。そんな感じ」
まさかそんな話が出回っているとは。予想外の展開だ。しかし、そんな噂、誰が流したのだろう。私はまだ母親意外誰にも話していないのに。リリィとの外出を誰かに見られていたのだろうか。
それにしても。
行動力凄いな、夢見さん。
「同居してる子って、もしかしてそちらの?」
「そうよ」
もはや何を言っても無駄だろう。こうして見られてしまった以上、ごまかすことはできない。ならば、もういっそ、思いきって本当のことを話そう。それでいいのだ、犯罪ではないのだから。
「日和、誰」
リリィが警戒したような顔で尋ねてきた。
「クラスメイトの夢見さん!」
「……ふーん」
リリィはじっとりした視線を夢見さんに向ける。
「悪い人じゃないから安心して」
「そ。ま、どうでもいいケド」
「せっかくだし、友達になったら?」
「あたし、そういうの興味ないから」
「リリィちゃん……」
どうやらリリィは夢見さんには興味がないらしい。
どうでもいい、と叫んでいるかのような顔つきだ。
夢見さんならからかったりせず付き合ってくれそうなので、リリィの友達候補としては適任かと思ったのだけど。
「邪魔してしまってごめんね。わたし、もう行くね」
気まずさを感じたのか夢見さんは歩き出そうとする。
その腕を、無意識で掴んでいた。
「待って! 夢見さん!」
「え」
「あっ、急にごめんなさい。よければだけど、学校まで一緒に行かない?」
驚いた顔をする夢見さん。
「えっと、その……わたしと? どうして?」
いきなりこんなことをするなんて、どうかしている。
ついこの前まで喋ったこともなかったのに。
でも、彼女は、私の噂の真相を自ら調べに来た。そういう意味では、私に対して興味を持ってくれているとも考えられる。もしそうなら、親しくなれる可能性もないことはないように思う。
好きと嫌いは変えられる。
無関心だけはどうしようもない。
「夢見さんと話してみたいなーって思ったの」
「そう? 話題とか合わないかも」
「私と一緒だと困る?」
「ううん、そんなことはないよ。そこまで言ってもらえるなら、一緒に行こうかな」
「やった! ありがとう!」