全てのはじまり。
真っ暗な宇宙に浮かぶ大きな人工衛星、
国際宇宙ステーション、そこに滞在しているのは1人の男性ロシア人と1人の女性日本人、
ロシア人の宇宙飛行士チェコフはその小さい窓から、驚くべき光景を目の当たりにしていた。
青く輝く美しい星、地球、そこへ数えきれない程の無数の光が、一筋のレーザ光線のように降り注いで居たのだった。
慌てて日本人宇宙飛行士の千春を呼びにチェコフは走る、
しかし千春はもっと驚くべき事態に遭遇していた。
彼女が持つ端末、そこへその光の筋が1本伸びて留まり、そして遂にはフラッシュのような線香を放った後にその端末は話をし始めた。
「どうも、あなた方は地球人でしょうか?はじめまして。」
千春は取り乱しながらも端末に話かけた。
「あ、あなたは?」
すると端末の画面に1人の少年のような風貌をしたアバターが浮かび上がり、恭しく礼をした後に話を始めた。
「僕は…いえ、僕達はナノ寄生生命体です。地球へ我々は亡命しに来ました。地球からは凡そですが5000億光年、あなた達地球人が観測出来る範囲外の遥か外、事象の地平面ホライゾンの彼方より旅をして来ました。」
「ナノ寄生生命体?一体あなた達の目的はなんなの?」
千春は震える手を抑えながら画面の中の少年に問いかけた。
「目的…ですか?あなた方と恐らく違いはありません。」
少年はそういうと窓の外の地球へ目をやりこう答えた。
「繁栄ですよ。」
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ほぼ同時刻に世界中の観測所でもこの宇宙から降り注ぐ光が観測されていた。
そしてその光は地上のありとあらゆる機械に向かって照射されるように、ただ誰かが手にしている物にだけ向かって…
機械と言うとかなり曖昧ではあるが、最も多かった例ではスマートフォンに、またある人は腕時計やスマートウォッチに。
珍しい例ではチェーンソーや電動ドライバーなどの工具、
そして限られた例では、各国のコンピューター。
1台ずつにその光が照射された。
そしてこの物語の主人公、
眠りこける彼の枕元に置かれたデジタル一眼レフカメラへと、
宇宙から来た来訪者は入り込んだのだった。