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キャラメルレモンソーダ  作者: 河北春
7/8

七話 入学式です

 みこと先生が去ってから数分が経ちました。そろそろ棺が開く頃でしょうか?

 そんなことを考えていたら棺の蓋が勝手に開き始めました。

 あまりにも開くのが遅いので手で開けてしまいました。起き上がって周りを見渡すと、私のように周りを見渡す人が大勢います。ほとんどの人は私と同じ年の人でしょうか。

 すると周りの人たちは何かを思い出したのか、立ち上がってどこかへ向かって歩き出しました。私はぼーっとしながらその人たちを見ていました。

 「ちょっと、そこのあなた! 早くしないと入学式が始まるわよ。せっかく入学できたのに初っ端から悪い意味で目立ってどうするのよ」

 誰でしょう? この人もこの学園に入学する人なのでしょうか。

 ていうか女の子いるじゃないですか! それも超美形の子が!

 「ちょっと、私の話ちゃんと聞いてる?」

 「あっ! すみません。聞いてなかったです」

 「正直なことはいいことだと思うけど正直すぎるのもどうかと思うわね。まあ、そんなことはどうでもいいわ。あなた、まず私についてきて頂戴」

 その女の子は私の手を引っ張って歩き出しました。

 「あの、どこに行くんですか?」

 「それも知らないの? 今から学園長に挨拶しに行くのよ。あなた何も知らなさそうだから教えてあげるけど、学園長に自分の魔力が気に入られたら一巻の終わり。戻ってきた人はいないわ。だから決して目立たないようにね」

 あっ、この人意外と良い人ですね。漫画でよく見るいじめっ子みたいな人かと思いました。第一印象だけで人を判断してはいけないとはわかっていますが、やはりある程度会話をしないとその人の人格はわからないものですね。

 「学園長ってそんなに怖い人なんですか?」

 「えっ!? もしかして学園長のことも知らないの? そうね、学園長については授業で習うと思うし今説明する必要はないわね。それと、途中までは案内するけど、私も学園長に目をつけられたくないからその後は自分で行ってね」

 「あ、ありがとうございます」

 めっちゃ良い人じゃないですか! 久しぶりに人の優しさに触れて涙が出そうです。

 「ここに並んでしまえばあとは前の人についていくだけよ。それじゃ」

 そう言って女の子は颯爽とどこかへ行ってしまいました。本当に良い人でしたね。

 ……何か忘れているような……あっ! あの男の子連れてくるの忘れてました!

 早く戻らないと変な人に誘拐されているかもしれません。私は全力で走りました。

 棺の目の前まできましたがあの男の子の姿はどこにも見えません。どうしましょう。

 私が焦っているとどこかから悲鳴が聞こえてきました。さっきあの女の子が案内してくれた場所です。あっちに男の子がいるかもしれません。もしかしたらすれ違ってしまったのかもしれません。

 私は急いでさっきの場所へ向かいました。

 「ノアに近づくな! ノアは、ノアはもう誰も信じないって決めたんだ!」

 あっ! あの男の子です!

 男の子は氷を刃物のような形にして威嚇しています。あの子の名前はノアと言うんでしょうか? まずあの子を落ち着かせなくてはいけません。

 そう思ったので私はあの男の子に声をかけようと近づきました。

 「おい、あんた、今はあいつに近づかない方がいいぞ」

 近くにいた人に声をかけられました。

 「でも誰かがどうにかしなきゃいけないですよね」

 そう言って私はあの男の子の方へ歩きました。

 「誰だ!」

 男の子はとても話を聞いてくれる感じではありません。でも誰かがこの子を落ち着かせないといけません。

 「私……じゃなかった。僕は東雲葵です。あなたはノアさん、ですか?」

 「ノアに近づくなって言っただろ!」

 するとその男の子は氷の刃物を私に向かって放ちました。私は思わず腕で自分を守ろうとしました。

 やばいです! 確実に当たってしまいます!

 ……って、あれ? どこも痛くないです。

 絶対当たったと思ったのに……。

 「なんで、なんでノアの攻撃が効かないんだ!」

 でもこれは逆にチャンスです。攻撃が当たらないならこっちが有利です。

 「大丈夫、安心してください。あなたを攻撃する人はいません。だから落ち着いて」

 「攻撃しないってどうしてわかるんだ!」

 「わかりますよ。だって攻撃されている僕がやり返してないんですよ?他の人だって攻撃しませんよ」

 「じゃあどうしてあいつらは今までノアに酷いことしてきたんだ!」

 あいつらとは誰でしょう? この場にいない人のことを言っているのでしょうか。

 「その『あいつら』はここにはいないと思いますよ」

 「でも、でも!」

 「棺に一緒に入っていたのも何かの縁です。僕がその『あいつら』から守って見せますよ。僕がそんなこと出来るかはわかんないですけどね」

 「……でもそんなの信じられない! もう怖いのも寂しいのも嫌なんだ!」

 怖いのも寂しいのも嫌……ですか。私もそれは嫌いです。けれど今この子に必要な言葉は安心できる言葉です。私の体験談なんて聞かされても反応に困るでしょう。

 「じゃあ、僕が怖いのや寂しいのから守ります。ね? だから大丈夫」

 「……う、うう、うわーん」

 えっ!? ど、ど、どうしましょう!? 泣かせてしまいました。何か傷つけるようなことを言ってしまったのでしょうか。

 「……ノアの名前はノア。葵、ノアのこと絶対守れよ」

 私があたふたしているとノアはそう言ってきました。

 「……ええ」

 私は満面の笑みでそう答えました。

 良かった。少し落ち着いたみたいです。私はノアと約束しましたからノアを守れるようにならないといけませんね。それにしても『あいつら』って誰のことでしょう。

 「なあ、葵。ここはどこだ?」

 あっ、そうですよね。目が覚めたら知らない場所にいたんですから、そんな反応をするのは当たり前ですよね。多分ノアは知らない場所で一人ぼっちになってしまって怖かったのでしょう。

 「何の学園かは知らないですけど、学校らしいです」

 「じゃあ、どうやって帰るんだ?」

 「えーっと、まず学園長に挨拶をしないと帰れないと思います。でも、まずはこの騒動に巻き込んでしまった人たちに謝った方がいいんじゃないですか?」

 「でも、うーん……ごめんなさい」

 ノアが謝ると周りは急にざわざわし始めました。

 「さっきまであんなに暴れていた奴をこんなに大人しくさせるなんて……」

 「にゃーご」

 なんか猫の鳴き声も聞こえた気がしますが、一件落着です。

 それにしても怪我人が出なくて本当に良かったです。もし誰かが怪我をしていたら、ノアが落ち着いたとしてもノアのトラウマになっていたかもしれません。

 「じゃあ、学園長に挨拶しに行きましょうか」

 そう言って私が歩き出すとノアは私の後ろについてきました。なんだか弟ができた気分です。

 そう言えば、服が制服に変えられましたけどペンダントはちゃんとあるでしょうか。

 えーっと、あっ! ありました!

 良かったです。もしペンダントがなかったらまじで泣くところでした。

 そうして私たちは学園長に挨拶をしに行きました。

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