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キャラメルレモンソーダ  作者: 河北春
3/8

三話 胡散臭い人ですね

 「ここが異世界って信じてくれましたか?」

 みこと先生はニコニコとしながら尋ねてきました。

 実感は沸きませんが私は異世界にきてしまったようです。

 「……ええ、まあ。一つ聞きたいんですけど私はどうして異世界にいるんでしょう?」

 「知りませんよ、そんなこと」

 はぁ!? それはないでしょ! この流れならみこと先生がナビゲーター的な立ち位置で、異世界に来た主人公にいろいろ説明するみたいな雰囲気だったじゃないですか!?

 私は驚き過ぎて唖然とすることしか出来ませんでした。

 でもここが異世界ということは私はどうやって誘拐されたのでしょうか。そもそも誘拐されたというのは私が勝手に思い込んでいるだけなのでしょうか?

 「で、何の話をしていたんでしたっけ? えっと、あっ、思い出しました。私の目の話でしたね」

 そういえばそんな話をしていたような気がします。この短時間で起きたことの情報量が多すぎて頭がパンクしそうです。

 「魔女の目と自分の目の色が同じだから差別を受けないように眼帯を着けてるってことですか?」

 私は自分の予想を言ってみました。

 「おお、ご明察! その通りです」

 こういうのはゲームやアニメを見ていれば大体予想はつきます。

 「私の目はまんま青色ですがあなたの目は……珍しいですね、モスグリーンというやつでしょうか?」

 「ええ、そうですね」

 私は生まれつき見た目が派手なので仕方がありません。私はアルビノというやつです。なので髪の毛は真っ白で、目はモスグリーンという珍しい外見をしています。この外見のせいで面倒なことに巻き込まれやすかったりするんです。

 「……私の目も光の強さによっては青色に見えなくもないですね」

 私の目の色が差別の対象になると後からきっと面倒なことが起きる気がします。

 「そうですねぇ、でも心配することはありませんよ。あなたの真っ白な髪は女神の外見とほとんど同じですから」

 みこと先生はそんなことを教えてくれました。女神という程なら相当すごい人なんでしょう。

 「魔女がいるのに女神もいるんですね」

 魔女がいるから女神がいるのでしょうか?

 「魔女や女神っていうのは名前だけですよ。実際、女神と呼ばれた女性は魔法が得意というわけではなかったらしいですしね。ちなみに彼女たちは人間ですよ」

 あー、情報量が多い。もっと簡単な設定にしといてくださいよ。まず何から聞けばいいのでしょう。

 「えっと、過去形なんですね」

 なんで私はそこから聞いたのでしょう? 謎です。

 「ええ、でも四年前の話なんですよ。意外と最近でしょう」

 そんな人間らしくない呼び名の人たちがいたのが四年前とは不思議ですね。

 「それで、魔法っていうのはさっき使ったやつみたいなもののことをいうんですか?」

 「ええ、そうですけど、あなた順応能力高すぎません? 普通はもっとパニックになったりするもんじゃないですか?」

 まあ、確かにそう思われるのが普通ですよね。

 「うーん、確かにそうですね」

 「そうですねって……。あなたは冷静過ぎますね」

 いいじゃないですか。冷静でも。私は良いと思いますよ。冷静な人。

 まあ、自分でも流石に気づきますよ。普段は冷静さに欠いていますが、大事なときほど変に冷静になっています。もっと感情的な方が好かれるのでしょうか。

 私はふと、自分がさっきまで入っていた箱の方を見ました。

 ん? 見間違いでしょうか? 何か入っている気がします。

 「? どうかされました?」

 「いえ、箱の中に何か入っている気がしたので……」

 「またぁ、冗談はよしてくださいよぉ! そんなことあるわけないでしょう」

 みこと先生の言葉にイラッとしましたが、これはフラグというやつですね。絶対箱の中に何か入っています。

 私は箱の近くに寄りました。箱の中身を覗いてみると黒い衣装に身を包んだ一人の男の子がいました。十歳位でしょうか?

 「あのー、男の子が入ってるんですけど」

 この男の子からは俺TUEEE系ラノベの主人公の幼少期って感じがします。多分、黒髪のせいですね。

 「えっ!? いや、そんなことないですよ、多分」

 「いや、そんなことあるんですよ。疑うなら見てみてください」

 そう言うとみこと先生は箱の近くに行って恐る恐る箱の中身を覗きました。

 「えぇぇぇ!? えっ!? ちょ、いや、おかしいでしょ!? なんでもう一人入ってるんですか!?」

 みこと先生はかなり動揺しています。感情豊かな人ですね。

 「いや、でも今年は入学者選定がすごく厳しいはずですし……学園長管轄の人間がこんな手違いもするはずがない……」

 みこと先生はぶつぶつと一人で話し始めました。やっぱりやばい人なんでしょうか? それとも私を誘拐した人なのでしょうか?

 でも誘拐されたと決まったわけではありませんし……。

 一人で考えても答えは出ないでしょう。いっそのこと本人に聞いて見ましょう。

 「あの、一つ聞きたいことがあるんですけど、私って誘拐されたんでしょうか?」

 「えっ? ああ、そうですよね。普通は誘拐されたかと思いますよね。私が言っても信憑性はゼロなんですけど、あなたはある学園に入学するためにこの棺に入っていたんですよ」

 本当に信憑性ゼロでびっくりです。信憑性ゼロですがこの話が本当ならいつくか引っかかる部分があります。

 私が入っていた箱のようなものをみこと先生は棺と表現しました。本当に棺だと私死んでる扱いされたことになるんですけど……。

 それに学園に入学させるならこの世界の人たちで十分だと思いますけど、わざわざ異世界から私を呼び寄せたとなると何か裏がありそうで怖いです。

 「ああ、それなのにどうしてもう一人入っているのでしょう……今学園側に報告したら儀式の手順をすっとばして勝手に棺を開けたことがばれてしまいますし……。ああ、私はどうしたら……」

 みこと先生が言っていることよりこの男の子の方が心配です。まあ、情けない大人は無視しましょう。

 「あの、大丈夫ですか? 意識ありますか?」

 男の子は全く反応しません。

 「ああ、多分その子は入学式まで目覚めませんよ。棺にはそういう魔法の効果が付与してあるんです。あなたはなぜかピンピンしてますけど」

 そういえばさっきみこと先生がぶつぶつとそんなようなこと言っていた気がします。しかし、どうしてみこと先生は先生なのでしょう。さっき生徒に変態クソ野郎と呼ばれていると言っていましたし、本当に教諭をやっているのでしょうか?

 というか早くこのたくさんの人の武装を解除してほしいです。流石にずっと見られているのはいい気分ではありません。

 「あの、この武装した人たちどうにかなりませんか? ずっと見られているのは疲れてしまうというか……」

 「えっ? 気づいてたんですか?」

 「そりゃ、誰だって気づきますよ」

 こんなに殺意のこもった熱烈な視線を送られて気づかない方がおかしいと思います。

 「そうですか。あなたは不思議な人ですね」

 「……?」

 なんのことでしょう?

 「じゃあ皆さん、お疲れ様でしたー、解散でーす」

 わー、思った以上に軽ーい。もっとなんかいい感じの解散のさせ方あったでしょうに……。

 武装している方たちも動揺しているようです。まあ、私もあの人たちの立場なら驚いてしまうでしょう。

 「ではここで立ち話もなんですから、私の家でゆっくりお話しませんか?」

 怪しい。怪し過ぎます。なんですか、この下手なナンパみたいな誘い方。

 そもそもみこと先生は棺を開ける前に私が入った棺を見て億万長者だのなんだの言っていた人ですよ。絶対私を売りに出すに決まっているじゃないですか。そんな人についていくほど私はあんぽんたんではありません。

 「正直に言うと、嫌です」

 「何を言うんですか。あなたは不運にも異世界に転移してしまった可哀想な美少女ですよ。一人で行く宛もなくふらふらと歩いていたらすぐに食べられてしまいますよ」

 「美少女なのはわかりきったことですが、そういう脅しは良くないと思います。私はいたいけな十五歳の美少女ですよ」

 「ふむ、あなたの自分への自信がすごいことはよくわかりました。別に脅してなんかいないのですよ。まあ、ぶっちゃけると棺を見つけたらすぐにでも売り払おうと思っていたんですけどね、事情が変わったんですよ。大人の事情というやつです」

 「私があまりにも美少女なので手元においておきたいということですか?」

 私は冗談混じりにそう言ってみました。

 「それじゃあ私がロリコンみたいになるじゃないですか。まあ、確かにあなたは美少女ですがそれ以上の価値を見つけましたのでね」

 「その価値を教えてもらいたいんですけど……ダメですか?」

 「あなたその上目遣いを無意識にやってるなら天才ですよ」

 何のことでしょう? 話を逸らされたのでしょうか?

 「はぁ、あなたにその価値を教えてもいいですけど、その代わり絶対私の家に来てくださいね」

 正直迷います。みこと先生が言うように私は行く宛のない人間です。知り合いのいないこの異世界で一人で生きていくなんて多分無理でしょう。

 そんな私にみこと先生から都合のいい提案。価値を見出だしたとまで言っているのですから、今日くらいは寝泊まりできる場所を確保できるはずです。私がみこと先生に最大限自分の良さをアピール出来れば、少しの期間だけでも家においてもらえることだって夢ではありません。ですが、そのためにはみこと先生が私の何に価値を見出だしたのかがわからない限りアピールのしようがありません。

 アピールするためには私の価値を知らなければならない。でも価値を教えてもらう代わりに家に行かなければならない。

 みこと先生についていかない限り私が野垂れ死ぬ未来しか見えません。

 ここは腹を括るしかありません。

 「わかりました、ついていくので私の価値を教えてください」

 「ええ、もちろん。賢いあなたならその決断をすると思っていましたよ。……あなたの価値は……その固有魔法です」

 「えっ?」

 何を言っているのでしょう? 私の価値がなんたら魔法だなんて言われてもよくわかりません。私は生まれてこの方不思議な力なんて使えたことがありませんから。なのに私の価値が魔法だなんて信じられません。

 「まあ、よくわからないとは思いますけどあなたの固有魔法は価値のある魔法です。どんな魔法かはまだ教えることはできないですけどね」

 そこまで断言されると本当にすごい力があるような気がします。ですがなんだか納得出来ませんね。

 「はいっ! じゃあ私の家に来てくださいね。そうだ! ついでにその男の子も連れて行きましょう。勝手に死なれても困りますしね」

 なんか勝手に話が進んでいる感がすごいです。でもこの男の子を連れて行くのは賛成です。なんかすぐ死んじゃいそうですし……。

 「そうだ、あなたの名前をまだ聞いていませんでしたね。名前、聞いてもいいですか?」

 「私の名前ですか? 私は東雲葵です」

 私がそう名乗るとみこと先生は目を丸くしました。どうしたんでしょう?

 「東雲、ですか……。珍しい名字ですね」

 「?」

 私はみこと先生の反応に違和感を覚えました。ですが何がおかしいと感じたのかはわかりませんでした。

 「じゃあ、早速私の家へ向かいますよ。ちゃんとついてきてくださいね」

 そう言ってみこと先生は男の子を棺から出して担ぎ上げました。

 そして私たちはみこと先生の家へ向かい始めました。

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