三ノ星 別れは突然に
誕生日の夜、何ともよく分からない出会いをした天十郎とセレーナ。セレーナは、アレからこっそりと、天十郎の家で匿われていたのだった。
「アタシのこと、忘れてない??ねえ!!」
ミソラには、特に何も変化はなかった。
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一一半年後、世界は正体不明なウイルスに冒されていた。世の中では"マスクが当たり前"になってしまった、そんなある日のことである。
「て〜ん!マスクが邪魔なのだ〜♪」
渾名は「てん」に省略されていた。
「セレーナ。いくら精霊とはいえ、感染しないとは限らないだろ?だから大人しく付ける!」
「え〜やだ〜♪・・・・・・びぇっくし!!」
「豪快なくしゃみだなおい」
「それほどでも〜♪」
「いや褒めてないから!」
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学校に向かう天十郎とセレーナ。その道中である。
「そういやさ、アレから半年くらい経つけど、天紋印の音沙汰なくね?」
「結構かかるもんだな〜♪ま、気まぐれだからな〜♪」
「ずっと楽しみにしてるんだけどなぁ〜」
二人で会話してると、後ろから「よっ!」と声をかけられる。こいつは俺の親友、〈十文字 南雲-じゅうもんじ なぐも-〉だ。セレーナは咄嗟に姿を隠す。
「おう、南雲!今日は早いんだな!」
「いつもって言ってくれ(笑)・・・・・・ところで、さっき誰かと話してなかったか?」
「いやいや、空耳でしょ!」
「ほ〜ん。まあいいや!ところで、昨日のテストどうだった?っても、また高得点か〜お前は」
「いやぁ、あんま眠れなくてな。たぶん落ちたわ」
「ココ最近ずっとそうだよな(笑)なんか悩みでもあんの?」
「アハハ、そんなことは・・・・・・」
と、右肩に乗った透明なセレーナを見る天十郎。
「そっか、んまあ・・・寝なきゃ体に響くからな、寝ろ!授業中に」
「いやそれはダメだろ(笑)」
なんでやねん、と言わんばかりに南雲の右肩を軽く叩く。天十郎の右肩は、「クスクス」と震えていた。
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放課後。
「ふわぁ〜よく寝た!快調快調!」
「南雲・・・まーた寝てたのか」
「そりゃあ寝るっしょ!こんなにも!晴れ!」
「いやいや、めっちゃ雨降ってるけど」
「傘、どうすっかねぇ」
「ああ、天気予報も晴れだったのにな。台風来てたか?」
そう。突然の豪雨である。
朝は快晴だったのに「人類皆雨男!雨女!」と言わんばかりに降っている。
「うーん、こうなったら!ダッシュで帰るしかねぇ!走るぞ、天十郎!」
「マジか!おい待てって!」
勢いよくかけ出す二人。
校門を出て、角を曲がった刹那一一。
「天!危ない一一」
先に曲がっていた南雲に押され、吹っ飛ばされる天十郎。その頬を掠める車のサイドミラー。
車は、そのまま逃げるように、その場を後にした。
吹っ飛ばされ、コンクリートの壁に体を打ち付けた天十郎は、そのまま意識を失った。
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「て〜ん♪お〜い、て〜ん♪起きろ〜♪」
「・・・・・・セレー、ナ?ここは・・・どこだ?」
起きると、そこには覗き込むセレーナの顔と、白い天井が広がっていた。
「よっ♪ようやく目覚めたか♪もうアレから一週間も・・・あ、やべっ」
スっと姿を消すセレーナ。そこに、白衣を纏った眼鏡の男性がやって来る。医師だ。
「おお、目覚めたかね!良かった」
「あの、ここは?」
「病院さ。覚えていないのかね。君は、一週間前に交通事故に遭ったんだよ」
「事故・・・?あっ!そうだ、南雲は?南雲はどこだ!?」
「南雲?君のお友達かね?」
「そう!俺と一緒に帰ってて!で、南雲に飛ばされたお陰で、轢かれずに済んだんだよ!南雲はここに居ないのか!?」
「さて・・・運ばれたのは君一人だったが」
「そんなはずはない!まさか、南雲は・・・?嘘だ!そんな訳ない!あっ、痛ッ・・・」
起き上がろうとした天十郎は、そのまま痛みで元の体勢に戻される。
「落ち着いて、君の怪我も相当なものだ。それにその、南雲君?って子は誰の事かね?」
「・・・は?」
「事故現場に居たのは、君だけ・・・いや、君ともう一人、目撃者の女性だけだったらしい。」
「女・・・性?」
「そう。警察曰く『顔の右半分が仮面みたいなもので覆われていて、全身真っ白、髪も白く長くて・・・。話を聞こうと寄ったら消えてしまって、不気味だった』とか何とか。消えるなんてね。まったく、奇妙な話だよ」
「・・・・・・」
「兎に角、今は安静が最優先だ。もう夜だし、今は寝なさい」
「・・・・・・はい」
その日も、雨が止むことはなかった。
★キャラクター解説-その2-★
■ 十文字 南雲-じゅうもんじ なぐも-
・誕生日:2月16日
・天十郎の親友。成績は天十郎よりも劣るが、勘がいい。
・楽観的な性格。
・好きなもの:睡眠、面白いもの
・嫌いなもの:ジメッとしたもの
・9月某日。不慮の事故で天十郎を庇い、姿を消す。
■ 片面の女
・顔の右半分が仮面に覆われた長髪かつ白髪の女性。身に纏う装束も白い。
・天十郎と南雲の事故現場に現れたが、その正体は謎である。