第1話 START!
こんにちわ。
有希子の留学生活始まります!
現地時間の昨日夕方、私は留学仲間の沖村さんと一緒にイギリス、ロンドン市内にあるヒースロー大学に到着した。だが、本当に大変だったのはその後だった。空港からマイクロバスで大学に到着した後、荷物を下ろして大学の留学生用宿舎まで運んだのだが、どういう訳か私達の部屋は3階で、しかもエレベーターが無いので重いスーツケースを階段まで運び込まなければならなかった。これだけでも重労働なのだが、そこから街の方へ出向いて生活必需品なども調達し、しかも結構な量になってしまったので全てが終わって夜になった頃は完全に疲れ切っていた。そして、一晩が経ちイギリスで最初の朝を迎えた。
「ふぁぁ、眠い。身体痛い…。」
久々にこんなに体を動かしたせいもあるのか、所々筋肉痛になっている。時計を見て見ると、朝の七時だった。
「まだ眠いけど、二度寝しての棒する訳にもいかないから準備しよ。」
私は無理やり体を起してシャワーを浴び、寝まきから服に着替える。この部屋は二人部屋なのだが、ルームメートはまだ決まってないので私一人が使っている状態だ。
「いきなりの強行日程は少しきついけど、頑張んなきゃ。でも、ちょっと楽しみかも。」
そう私は胸を躍らせて出かける準備を整えた。
「あ、先輩。おはようございます!」
「おはよう、沖村さん!」
「一恵でいいですよ、先輩!」
「分かったわ、一恵ちゃん!」
宿舎の入り口では、すでに一恵ちゃんが準備をして待っていた。特に眠そうな様子も無く、至って普通そうにしているのを見ると体力あるなって思った。
「まだですかね、先輩。」
「時間も場所もここって言われたから、もうそろそろ来ると思うけど。」
そう、今日も大事なカリキュラムがあるのでここで待ち合わせだ。そして数分後。
「綾瀬さん、沖村さん。お待たせしました!」
「「アーサーさん!」」
昨日私達を出迎えてくれたこの大学の職員さんである、アーサー・ロビンソン室長が駆け足でこっちに来た。
「ごめんなさいね。昨日の今日でこんなカツカツな日程になってしまいまして。」
「大丈夫ですよ。」
「それに、ちょっと楽しみですし。」
私は正直にそう答える。そう、今日はこれから大学の教室に向かい、夏期講習を受けるのだ。まず、アーサーさんに教室を案内してもらい、その後昼過ぎまで授業を受けてその後は自由時間。他の受講生もいるとのことで私は新しい友達ができると思って楽しみにしていた。
「じゃあ、行きましょうか。他の皆さんもお待ちしていますよ。」
「「はい!」」
私と一恵ちゃんはそう言ってアーサーさんに続き、授業があると言う教室へ向かった。
「失礼します!」
アーサーさんがノックしてドアを開ける。すると、教壇に眼鏡をかけた30代位の金髪の女性、机には様々な地域から集まった留学生らしき人達がいた。この人達と一緒に受けるのか。
「昨日日本から到着した綾瀬さんと沖村さんです。今日は宜しくお願いします!」
「分かりました。二人とも、初めまして!私はここの講師、ウィンディ・ブラウンよ。一緒に頑張りましょう!」
「お、沖村一恵です。」
「綾瀬有希子です。宜しくお願いします。」
ウィンディ先生は優しい笑顔で私達を迎えてくれた。その後、アーサーさんは国際交流センターの事務室に戻り、私達は案内された席に着く。
「えー、改めましておはようございます。初めての人もいるので私の自己紹介をします。ヒースロー大学言語学科で、今回皆さんの英語カリキュラムを担当するウィンディ・ブラウンです。宜しく!」
ウィンディ先生の自己紹介が終わった。そして、まだみんな顔合わせして間もなく、どうしていいのか分からない雰囲気の中、生徒達も自己紹介するように先生から言われた。皆がどんどん英語で自己紹介する中、本当にいろんな所から来てるんだなって思いつつ、自分の英語の自己紹介が上手くできるか不安だった。そして、ついに私の出番が来た。
「は、初めまして…。に、日本の千葉県浦安市から来ました綾瀬有希子です。イギリスは初めてですが楽しく過ごしたいです!宜しくお願いします!」
ふぅ、緊張した。だけど変なこと言わなくて助かったし、みんなにも伝わったはず。次は一恵ちゃんの番だ。
「おはようございます。日本の神奈川県横浜市出身の沖村一恵です。趣味は音楽を聴くことです!皆さんと仲良くしたいので、今後ともよろしくお願いします!」
流石英語学科の一恵ちゃんだ。私よりも語学を扱っている時間が長い分、流暢でスラスラと英語を話しててカッコよかった。そして、全員の自己紹介が終わると、再びウィンディ先生が話し始める。
「えー、みなさん。これから夏季講習を始めますが、ここにいる人達は皆言語が違うので勿論共通語は英語です。授業以外でもしっかりと使って、9月の開学までにしっかりとレベルアップに励んでください。では早速、机の上にあるテキストを開いてください。」
さあ、授業開始だ。いつまでも恋で悩んでいる訳にはいかない。ここは最初の授業に集中して、いいスタートを切ろう。私はドキドキしながらそう思ったのだった。
こんにちわ。
授業が始まりました。
有希子と一恵は、この後どんな出会いをするのか?
次回もお楽しみに。