表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/224

73 クフォトの王女

 突然現れたクフォト王国の王女によって、この場に居た全員が一言も喋る事無く黙った。一人を除いて。


「レイラ姫こそ、こんな所で何をしに?まさか、僕の事が恋しくなって追いかけて来たとか?」

「自惚れるな!」


 おぉおぉ。日比島相手に、全く臆することなく噛み付いて来るな。なかなかに肝が据わってるな。


「私はただ、そちらの商人の方に用があってきただけだ」

「へ?」


 思わず間の抜けた声を出してしまった。この国のお姫様が、俺みたいな商人に一体何の様だろうか?


「ほほぉ。それじゃあ、あの無礼な商人はあなたの客人だと」

「そうだ。あと、無礼なのは貴様の方だ。この場から立ち去れ」

「チッ!行くぞ」


 シッシッと追い払う様にお姫様は、日比島達をその場から立ち去らせた。日比島の方は、若干腑に落ちない感じであったがこの際無視するとしよう。

 三勇者とその奴隷の姿が見えなくなったところで、お姫様は俺達の方に向き直した。


「彼等が迷惑をかけてすまない。付いて来て欲しい、馬車に積まれているマナダイトと、ブラックゴーレムの魔石を買い取りたい」

「あぁ、はい」


 お姫様に誘導されて、俺達は大勢の人で賑わう通りをかき分けながら馬車を進ませた。桜と紅葉も、人にぶつからないように気を使いながら歩いているな。ホント、馬にするには勿体ないな。

 三十分くらい進むと、黒光りする大きな扉が取り付けられた人気の無い建物が見えた。何と言うか、建物はぼろいのに扉だけが何だか立派に見えるな。

 それもその筈。だってあの扉は、ゲートなのだから。

 ゲートに魔力を注ぎ、扉を開けたお姫様の誘導で俺達は馬車事ゲートを潜った。

 その先には、緑豊かな草原が広がっていて、人はおろか魔物の姿も見えなかった。


「ここなら、誰の目を気にせずに話すことができるわ」


「帯刀翔馬様」


「っ!?」


 俺の名前を呼ばれた瞬間、俺とメリーと、馬車に隠れていたフィアナが姿を現して一斉に武器を構えた。アリシアさんとカナデとミユキも、馬車から飛び降りて周囲とお姫様を警戒していた。


「そんなに身構えなくてもいいわ。ここは君が飛ばされた国、トウラン武王国の草原だから、監視の目はないわ」

「トウラン武王国の‥‥‥」


 言われてみれば確かに、この場所から二百メートル進んだ先には俺が召喚された大きな木が見えた。


「偽装ではなく、本当のあなたのステータスを変える前に見せてくれませんか。代わりに、私のステータスをお見せしますので」

「何故それを‥‥‥」


 そう言うとお姫様は、何もない所に目を向けて、自分のステータス画面を見せてくれた。


=========================================


 名前:レイラ・チラ・クフォト   年齢:十七

 種族:人間(転生者)     性別:女

 レベル:31

 MP値:6100

 スキル:風魔法B   氷魔法B   呪魔法C   剣術C

     社交C   ダンスC   話術D   隠密D

 その他:神宮寺美穂子のパートナー

     クフォト王国第一王女


=========================================


 なるほど。それなら俺の事を知っていても不思議ではないな。というか、転生者だったなんて。しかも、神宮寺のパートナーだなんて。


「驚いているみたいだね」


 してやったりという表情を浮かべて、レイラと名乗るお姫様は全てを打ち明けた。


「私は沖原麗奈。前世では貧困に苦しむ十八歳の女子高生だったけど、病気にかかって命を落とし、カリンヴィーラによってあの国の王女として転生した元日本人」


 やはりこの人も、カリンヴィーラの犠牲者だったのか。


「そんな顔をしないでください。美穂子のお陰で、カリンヴィーラの呪縛からは解放されているわ」

「俺の事は、神宮寺から聞いたのか?」

「えぇ。トウラン武王国で活躍している凄腕のノラの冒険者。それがあなたですよね」

「ノラは余計だ」


 古墳剣を鞘に納めながら、他国のお姫様からもノラ呼ばわれされると何だか傷つく。


《王都に屋敷を所有していても、基本的に自由に行動している上に、休日の殆どを工房で過ごしているのだからねぇ。しかも、大体が気の赴くままに依頼を受けて放浪するだけだものねぇ》


 うるさい駄女神、お前は黙ってろ。


「今のが、デリウス様の声なんだ」

「へぇ、あんたにもこの声が聞こえてるんだ」


《ども!皆のアイドルデリウスちゃんだよ♡》


「戯言を言うな」

「最近では罵られる事に快感を覚えている変態のくせに」


 フィアナにカナデも、なかなかに容赦が無くなってやっているね。しかも、それを聞いて見悶えている駄女神が脳裏に浮かぶ。


「何と言うか、イリューシャもそうですけど、やはり神様感が全然ないわね」

「まぁな」


 俺達は慣れてしまったが、初めて聞く人にとっては信じられないだろうなぁ。


「ところで、あなたは一体ショーマさんに何の用があってここへ?」

「おっと!」


 そうだった。デリウスのせいでだいぶ逸れたが、レイラが何故俺達をここへ呼んだのかを聞かないと。


「何って、あのままにしては暴動に発展しそうだったから、あのバカ勇者三人から引き離す為に言った方便だよ」

「それだけかよ‥‥‥」


 まぁ、確かにあのまま放っておいたら間違いなく暴動になっていただろうし、俺も容赦なく日比島を叩きのめしていただろう。


「そうは言うけど、あなたと美穂子に何かあっては困るのよね。あの三人が使えない以上、魔王に太刀打ちできるのはあなたと美穂子しか残されていないのよね」

「相当溜まってるな」

「当然でしょ。あんな連中を、勇者を呼んでいい筈が無い」


 それからレイラは、俺達がこの世界に召喚されてからの事を話してくれた。

 俺がトウラン武王国に召喚された同じタイミングで、クフォト王国の王城の地下では異世界から四人の勇者が召喚された。だが、人数が一人足りない事に焦りを感じたクフォト国王、ナルダン・チス・クフォト王はすぐに捜索隊を編成した。

 トウランを含む四国には、五人の勇者が召喚されると大々的に宣言したにも関わらず、実際には四人が召喚されてもう一人、つまり俺が全く違う場所に召喚されてしまった事にかなり焦りを感じていたみたいだ。

 だが、焦っていたのは魔王が現れたからではなく、自国の戦力となり、圧倒的な力で他国を滅ぼし、制圧する事が出来る貴重な力を一つ失った事に対する事であった。そんな国王の身勝手を、レイラは頭を抱えていた。

 捜索を開始してから僅か一週間後に、トウラン武王国のオリエの町から、ギルドに登録してから史上最速で銀ランクに昇格した冒険者の噂が耳に入った。つまり、俺の事である。名前もショーマと言う事で、四人は真っ先に俺の事を思い浮かべたのだそうだ。だけど、髪と瞳の色が違うと言う事、神宮寺以外はすぐに俺の可能性を除外した。

 その後レイラは、俺をクフォト王国に近づけさせない為に、「もう一人の勇者は、召喚された場所で魔物に殺された」、と報告をして捜索を打ち切らせたのだそうだ。


「要するにお前は、俺達に早くクフォト王国から出て行って欲しいと言うのか?」

「えぇ。あの国は本当に異常だから。マナダイトを高値で買い取ってあげる、だから速やかにクフォト王国から出て行って欲しかったのよね。まぁ、一番の目的は君と話したしたかったからなのだけど」


 暴動を防ぐ為に、俺達に自分の素性を明かす為に、マナダイトを買い取る代わりにクフォト王国から早く出て行ってもらう為に、本当にコイツお姫様なのかと思う奴だなぁ。


「前世の記憶をそのまま引き継いでいるのだから、何とかあの国の思想には染まらなかったけどね。お陰で、建国以来の異端児なんて言われてしまったけど」

「それは良かったな」


 おそらく、前世ではかなり正義感の強い性格をしていたのだろう。そんな彼女が匙を投げるくらいだから、クフォト王国という国は相当歪んでいると言う事になる。もしかしたら、カリンヴィーラがレイラに与えた不幸は、最悪の国であるクフォト王国の王女として転生させたことなのだろう。


「王女である私が言う事ではないけど、あの国の歪みは人の心までも歪ませてしまうのよ」


 その確固たる例が、あの三人の勇者とミユキの姉と妹か。

 召喚された当初、四人は力を上げる為に積極的に魔物討伐に向かっていた。だけどある日、国王であるナルダンが勇者を権力の象徴として利用しだした時から、三人の性格はガラリと変わってしまった。

 四人の勇者に対して欲しい物を好きなだけ与え、更にこの国の成り立ちについての嘘の情報を吹き込ませ、東西南北を取り囲む四つの国の悪口を言って悪い印象を持たせ、自身のする事全てが正しい事なのだとしつこく言う事で、三人を自分の意のままに動く兵士へと変えてしまったのだ。


「王は勘違いしているみたいだけど、召喚勇者=最強なのだと信じ込んじゃったの。勇者と言えど、何もしないで強くなれる筈が無いのにね」


 いるよねぇ、そんな勘違いをする奴って。日に日に歪んでいく三人を見て、レイラはクフォト王国の金ランク冒険者・ガリウム・ガルバロスの協力を得て、ナルダン王のやり方に反発している神宮寺をザイレン聖王国へと亡命させたそうだ。


「というか、ガリウムってまともだったのか?」

「その言い方だと、まるでガリウムがまともじゃないみたいじゃない」

「違うのか?」

「まさか」


 でしょうね。金と権力目が眩み、自国を切り捨てるような奴だからな。


「でも、王が三人を祭り上げて、模擬戦でもガリウムにわざと負ける様に要求してきた事で目が覚めたみたいで、今では私の良き協力者よ」

「はは‥‥‥」


 折角国を裏切ってまで仕えてあげたのに、国王からそんな仕打ちを受ければ流石に間違っていた事に気付くか。

 だけどガリウムは、今更祖国であるホクゴ獣王国には戻れないと嘆き、神宮寺とパートナーの誓いを立てることで罪の意識を和らげているのだそうだ。

 神宮寺までもが居なくなったことで、ナルダン国王は更に苛立ちだし、四国の使者が神宮寺を殺したのだと出鱈目をほざき三人の四国に対する印象を更に悪くさせたそうだ。


「何処までも腐ってるな!」

「おいフィアナ!」

「良いんだ。事実だし」


 それ以上反論が出来ないレイラは、大きく溜息を吐きながら下を向いた。

 それから三人は、半年以上魔物討伐にも向かわずにずっと城で遊んでいるのだという。それ以来レイラとガリウムは、日比島達に全く期待しなくなり、三人の女神までも見捨てる様になってしまったのだという。嘆かわしい。

 だからレイラは、他所の国に居る俺と神宮寺を支援する事にしたのだな。正直言って、クフォトの王族にこんなまともな人がいるなんて思ってもみなかった。


「ちなみに神宮寺は、どうしてトウランで活躍している俺にすぐに気付いたんだ?髪と目の色が違うのに」


 今の俺の髪と目は、デリウスによってともに青に変えられている。普通の人は、それだけで全く気付かないものだが。


「イリューシャ様は、デリウス様が頻繁にあなたとコンタクトを取っている事に気付いているわよ」


《え?マジで!?》


 おいおい。すでに他の女神様にも気付かれているじゃない。


《ご安心してください。カラミーラーやアラエラー、サラフィの三人には話していませんので》


「え!?」

「えっえっ!?」

「ちょっ!誰!?」

「なっ!?」

「聞いたことが無い声だぞ!」


 突然頭の中に、聞いたことが無い女性の声が聞こえてきた。声の感じは、とても物腰が柔らかく穏やかな感じがした。


《イリューシャ!あんた一体何時から聞いてたの!》


 声を荒げて抗議するデリウスの声が聞こえてきた。どうやら、先程の声の主が聖の女神・イリューシャなのだろう。


《もちろん初めからです。レイラ様から、帯刀翔馬様が来られると聞きましたので》

《初めからって‥‥‥まぁいいわ。というかあんた、何時から気付いてたの?》

《はい。美穂子様が、ショーマ様の正体に気付いた時からです》

《それ、ほぼ最初からだよね。なのに、上級神様に報告しなかったの》


 やがて、神様同士の会話が始まった。というか、人の頭の中で話をするのはやめてくれないか。女神様ってマイペースな奴等しかいないのかよ。

 その後の会話から、イリューシャが俺の事を報告しなかったのは、このままクフォト王国に委ねるのは危険だといち早く察知したからである。

 元々イリューシャも、クフォト王国に対して良い感情は抱いていなかったので、担当女神に抜擢されたその瞬間から神宮寺を亡命させる方法を考えていたのだという。


《召喚された後で他所の国に行っても、誰も文句は言いませんので、その時が来るまでじっと耐えていました》

《ッタク!私がどんだけ大変な思いをしたと思ってんのよ》

《けど、それは翔馬様の事を思ってのことですよね。私にそれを咎める権利などありません。そんな事をしては、罰が当たってしまいます》

《待て。罰が当たるも何も、あんたは女神でしょ》


 会話の中から、イリューシャという女神の人物像が何となく頭に浮かんだ。どうやらこの女神は、聖女の様な感じの人で、神でありながら神に祈ろうとするところがあるのだな。


「変わった奴等ばかりだな」

「私も正直に言って驚きました」


 俺とアリシアさんがボソッとそんな事を呟いても、二人の女神はそんな事はお構いなしと言った感じであった。


「私も最初はビックリしたけど、今じゃもう慣れちゃったわ」


 レイラはあっけらかんとした表情で、頭の中で繰り広げられる女神同士の会話を聞いていた。


「それよりも、早い所商談をまとめましょうか」

「商談って‥‥‥本当にマナダイトとブラックゴーレムの魔石を買い取るのか?」

「もちろん。そうしないとあの暴動を治めた理由に繋がらないでしょ。あの国は、何処で聞き耳を立てられているのか分からないから」

「そうだな」


 とりあえず、井戸端会議を続ける女神二人を一旦放っておいて、俺は馬車からブラックゴーレムの残骸と魔石、計八十キロを金貨千五百枚で買い取ってもらい商談を成立させた。


《そうそう。帯刀翔馬の本当のステータスは、こんな感じだよ》


 デリウスから俺の本当のステータスを見せてもらったレイラは、目を大きく見開いて驚いていた。


「なにこれ‥‥‥半年でこんなにレベルが上がるなんて‥‥‥スキルも、SSなんて見た事ないし、称号もすごい数‥‥‥あの三人とは大違いだわ‥‥‥」


 一応褒めてくれているのだろうけど、俺にはそう感じられなかった。


「これなら期待が持てるわ。微力ながら、私とガリウムも協力するわ」

「それは助かる」


 こうして俺達は、レイラという新しい協力者を得て、先程通ったゲートを潜ってジュラノの中央地区へと戻っていった。その後レイラは、ゲートから俺達の通行許可を抹消してから城へと帰っていった。


《翔馬様。美穂子様が、王都・アスラでお待ちしているとおっしゃっていました》


 去り際にイリューシャがそんな事を言っていたので、俺達はすぐにザイレン聖王国へ向けて馬車を走らせた。


        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「まったく。お前がトウランの商人とコンタクトを取って、マナダイトとブラックゴーレムの魔石を注文していたなんて」

「私個人の買い物だったので、報告する事でもないと思ったの」


 城に戻ったレイラは、兵士の訓練場で父であり国王であるナルダンに呼ばれ、お昼での出来事を聞かれた。

 レイラは、嘘と事実を織り交ぜながら父ナルダンに話した。


「はぁ。金貨千五百枚の損失は大きいな」

「あら、有るとこっちとしても助かるのでは?」

「確かにそうだが、そういう時は何とかして銅貨十枚以内に納めないでどうする。その貴重な金は、我が国の軍備を整えるのに必要不可欠な資金となるというのに」

「国を豊かにするのではなく?」


 呆れた事に、ナルダンはマナダイトとブラックゴーレムの魔石を銅貨十枚で何とかしろと言いだし、残りを軍資金に投資しろと言いだした。


「この大陸全土を、否、全世界をクフォト一色に染め上げることこそこの国の発展に繋がり、ひいてはこの世界全体の繁栄にも繋がるだろ」

「くだらない!それで苦しむのは国民なんだよ」

「我が国の力を示す事が、国民の為になるというのがお前には分からないのか!」

「話にならない!」


 話に全く耳を傾けず、己の野望ばかりを口にする父に踵を返して、その場を去ったレイラ。


「何が繁栄だ。破壊と略奪を行う盗賊そのままの発想じゃない」


 イライラしながら廊下をスタスタと歩くレイラ。そんな彼女の前に、騒動の元凶である三人の勇者が姿を現した。


「よぉ。僕達の為にマナダイトを発注してくれてたんだな」

「勘違いするな。私個人の買い物であって、貴様等の為ではない」


 三人を無視して、レイラが通り過ぎようとした時、左京に腕を掴まれて引き留められた。

「待て。その前に聞かせろ。あの商人の事を」

「ショーがどうした?」

「あいつの正体は、トウランの金ランク冒険者、ショーマ・タテワキじゃんないの?」


 堕落していても、勘の鋭さは健在なのだなと感心するレイラだが、今はそれが悪い方へと向いていた。


「バカ言わないで。何でそう思うの」


 とぼけて聞き返した瞬間、左京は不敵な笑みを浮かべて言った。


「私が思うに、ショーマ・タテワキの正体は、帯刀翔馬ではないかと思うの」


 表情こそ変えていないが、内心ではかなり驚愕していた。


(何よこの女。美穂子がそう言った時は、髪と目の色が違うと言って否定したくせに)


「私も信じられなかったが、あのショーという男のステータスを見た瞬間に、妙な違和感を感じたの。理由は分からないけど」


 異世界の勇者には、普通の人とは比べ物にならないくらいに強い運を有していて、それによって物事を有利に進めることが出来る様になっている。

 おそらく、顔を見た事で翔馬の存在が現実味を帯びて、デリウスによって偽装したステータスを何となく感じた事で、徐々に確信へと近づいてきているのだろう。


(流石は元クラスメイト。顔を見ただけで何となく気付くなんて。だけど、邪魔をさせる訳にはいかない)


 翔馬は、美穂子と同様にこの世界に残された最後の希望。そんな彼の、今後の活動の妨げを生み出す訳にはいかない。レイラはそう思った。


「そんな訳ないでしょ。そもそもその帯刀翔馬は、目付きの悪い黒髪黒目の男なんでしょ」

「目付きが悪いのではなく、三白眼がそういう風に見えてしまっているだけなのよね。そしてあのショーという商人も、ショーマ・タテワキも三白眼。こんな偶然ってあるかしら?」


 まさか目を見ただけで本人と結び付けるなんて、元クラスメイトというのも伊達じゃない。


「たまたまでしょ。ショーマ・タテワキなら今、ジェシカ教皇に招待されてザイレン聖王国にいるわよ。同一人物な訳がないでしょ」

「あら、そうなの。残念」


 残念何て言いながらも、ちっとも残念そうにしていない左京達。一体何を考えているのだろうか?


「仮にそうだと言ったら、その帯刀翔馬をどうする気?」


 仮定の話として聞いてみると三人は歪んだ笑みを浮かべ、三人を代表して日比島が答えた。


「もちろん。殺すに決まってるだろ」


 その回答に、レイラは戦慄を覚えた。


「あいつは地球でもすかした態度を取っていやがって、剣道部のエースだった僕を剣道でコテンパンにして、僕のプライドをズタズタにした。だが、今の僕は勇者として高い功績を残している。今ならあんなクズにも勝てる。勝って殺す事で、どっちが偉いのが、どっちが本当に強いのか示してやろうと思ってな」

「そんな理由で、元クラスメイトを殺すというの!馬鹿馬鹿しい!」


 そう吐き捨ててレイラは、再び廊下をスタスタと歩いて行った。


「まさか、ここまで腐るとは」


 レベルが220代もある翔馬が、レベル28の日比島に負ける確率は万に一つもないが、何の躊躇いもなく殺そうと企んでいる三人にレイラは、背筋が凍る程の恐怖を感じてしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ