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49 ヴァリーバ鉱山跡地

 魔法銃の材料を求めて旅を進めてから二日目の夕方、ようやく俺達は目的地のヴァリーバ鉱山跡地へとたどり着いた。


「はぁ、着いたか」

「着いたはいいけど、魔法銃一つ作るのにこんなに手間がかかるなんて」


 俺とカナデは、馬車の壁にもたれかけてぐったりしていた。ヴァリーバ鉱山へ向かう道中、デリウスが思い出した様に他に必要な物を言ってきたのだ。

 軟水六リットル、石灰百グラム、木炭一つ、食塩二百グラム、硫黄七十グラム、ここまでは俺でも知っているが、カルデリッヒ百二十グラム、ノウバイ二十グラム、ヒャルア七十グラムも必要と言われてしまった。というか、後半の三つの物質は聞いた事が無いのだけど!

 アリシアさんによると、後者の三つはこの世界にだけ存在する薬品の一種で、言うなればファンタジーな薬品みたいな物だ。カルデリッヒは主に風邪薬に使われる物で、ノウバイは解熱剤等に含まれている成分。

 最後にヒャルアは、カビや油汚れを落とすのに使われている物だが、毒性もあり最悪命を落とす危険な毒でもあるらしいから、取り扱いには細心の注意が必要な物だ。

 軟水と食塩と石灰はメリーが持っていて、カルデリッヒとヒャルアはアリシアさんが持っていた。何故持っていたのかは不明だが。

 硫黄とノウバイは持っていなかった為、サリーとローリエに買ってもらうよう念波でお願いした。

 それらの材料を、バケツに入れた四リットルの軟水の中に入れ、しっかり混ぜたその液体の中にマギグラムゴブリンの魔石を一晩浸け込んで不純物を取り除く。一晩浸けた後、二リットルの軟水に木炭を1本沈めて、その中に不純物が取り除かれて小さくなった魔石を浸けて、魔力を込めながら十分ほど手でゴシゴシと洗って完成だという。魔法というよりは錬金術の気がしてならないが。

 ここまでの工程で、トータル8時間。本当にギリギリ出来るかどうかという瀬戸際であった。


「モタモタしている暇はないな。ないのだけど‥‥‥」


 流石に夜に鉱山跡に乗り込むのは危険なので、ゴブリン狩りは明日にする事にした。

 その間にアリシアさんとメリーが夕食の準備を進め、俺とカナデとフィアナは馬車の中で夕食が出来るのを待っていた。


「しかし、これは下手をしたら完成は王都に移住してからになりそうだな」

「あたしも何となくそんな気がしているわ」


 俺とカナデは、ほぼ同じタイミングで「はぁ‥‥‥」と溜息を吐いた。複雑な武器だとは思っていたが、まさかここまで面倒な工程がいるなんて思いもしませんでしたよ。


「でも、素材の確保は大事だから私達がここに来たのは正しい事だと思うぞ」


 フィアナの励ましが、何だが胸に染み入るぞ。悲しい意味で。


《まぁ、お互い銃の製作に関しては素人だから仕方ないわよ。そもそも、あのカラミーラーが何も聞かずにあっさりと教えてくれたこと自体が驚きだったわ》


 そう言えば、デリウスとはあまり折が合わないと言っていたな。そんなカラミーラーが、何の疑問も抱かずにあっさりと作り方を教えるなんて。


《その時のカラミーラー、何か強いショックを受けていたのか、物凄く落ち込んでいたわね》


「落ち込んでいたって、何に?」


《さぁ。流石にそこまでは》


「その理由、自分なら知ってるっすよ」

「「「うわぁ!?」」」


 突然声をかけられて、驚いた俺とカナデとフィアナはバッと御者台の方を向いた。そこに居たのは、ガルゴの町で出会った拳の女神・アリーナことマリアであった。いつの間にそこに居たのだ!?


《アリーナ!?あんた今まで何処ほっつき歩いていたのよ!》


「いやぁ、折角の有給だったっすからもっといろんな所を回ろうとしてたら‥‥‥」


 最後の方は言葉を濁していたが、ここまで聞くと何となく想像がつく。


《迷子になっていたのね》


「あははは‥‥‥はい」


 図星だったのか。じゃあ、ここに居たのはたまたまで、俺達の前に姿を現したのは、夕食を恵んで欲しかったからなのだな。本来神様は食事を取る必要はないのだが、人化してしまうと人間と同じ様にお腹も空くからな。その証拠に、マリアのお腹からギュルルルと腹の虫が聞こえた。


「一緒に夕食でも食うか?」

「是非っす!」


 お腹が空いたのは分かったから、そんな肉を求めるゾンビみたいな顔をするのはやめろ。

 夕食の席に着くと、料理をしていた二人がいつの間にか姿を現したマリアに驚いていたが、気にするだけ無駄だと判断し、その後は何食わぬ顔でマリアの分の夕食を用意してくれた。


「助かったっす!五日ぶりに食事にありつけたっす!」

「五日も何も食わずに、よくここまで来れたな」

「それ以前に、何故わざわざこんな所に来たのかを疑問に思った方が良いぞ、フィアナ」


 言っちゃ悪いが、ここには小動物はもちろん、食料となる木の実も何もないのだぞ。いたとしても、ゲロが出るくらいにマズイゴブリンしかいないのだぞ。


「この付近にデリウスの神気を感じたので、それを辿って転移魔法でここまで着たっす」

「「「「「転移魔法!?」」」」」


 ちょっと待て!博学のアリシアさんでさえ仰天するくらいだから、おそらくそんな魔法は本来存在しないのだろう。


《魔法なんて言っているが、実際は神の技の一つであって、五人の上級神様の誰かにバレたら千年以上有給休暇が取れなくなる超反則技なのよ》


 超反則技だったのですか!それを使ってしまうくらいに、マリアのお腹は追い詰められていたのか!


「お願い!誰にも言わないでくださいっす!」


 天に向かって両手を合わせて、拝み倒す様なポーズをとるな。傍から見たら変な人だと思われるぞ。


《だったら、マギグラムゴブリンの魔石の入手のお手伝いと、その後帯刀翔馬達を古代樹の森の近くまで転移させてくれたら、この事は私の胸の中にしまっておくわ》


「自分にまた転移魔法を使えって言うっすか!?デリウスさん、マジ鬼っすわぁ!」


 鬼かどうかは知らないが、二日かかる距離を一瞬で転移させてくれるとかなり助かる。マリアには悪いが、デリウスの提案に乗らせてもらう。千年分の有給休暇を犠牲にする覚悟を持って。アリシアさん達も、俺と同じ気持ちだった。


「皆酷いっす。分かりやした、協力するっす」


 自身の今後の有給休暇が掛かっているマリアは、渋々デリウスの提案に乗る事にした。悪い事をしたという自覚はあるが、こっちだって急いでいるのだから仕方がない。


「それはそうとマリア、一つ聞きたい事があるんだけど」

「ん?何すか。ちなみに自分のバストサイズは、」

「ふざけるな。真面目に聞け」


 似たような悪ふざけを常に頭の中で受ければ、自然と塩対応になっていくというものだ。それよりも、真面目な話をしようという時にあんなアホ発言がよく出来るな。まったく。


「俺が聞きたいのは、何故女神カラミーラーが落ち込んでいるのかを知りたいんだ」

「それあたしも気になっていた。そもそもデリウスとカラミーラー様って、そんなに仲良くなかった筈なのに、どうして魔法銃の作り方をあっさり教えちゃったのかも気になるし。どうなの?」


 カナデも、俺と同じ疑問を抱いていたみたいで、マリアの顔をジッと見ていた。それを聞いたアリシアさんとメリー、フィアナの三人も食い入るようにマリアを見た。

 だけどマリアは、険しい表情を浮かべ、料理が盛られている木皿をジッと眺めて黙っていた。


《良いから話しなさい。私も気になっていたのだから。あのカラミーラーが、あそこまで落ち込んでいるところは初めて見たから》


 デリウスの後押しもあり、マリアは重い口を開いた。


「クフォト王国に残った三人の子供達の性格が、目を覆いたくなるくらいに歪んでしまったからっす」

「歪んだって、どういう事だ!」


 三人の子供達というのは、俺と同じタイミングでハルブヴィーゲに召喚された勇者。つまり、俺の同級生の事だ。


「クフォト王国に残ってしまった3人の勇者は、最初は責任感と使命感を持って行動をしてたっすけど、一ヵ月以上もあんな国に留まってしまったせいで、思想が徐々にクフォト寄りに変化してしまったんすよ」

「なっ!?」


 クフォト王国って確か、上の人間が下の人間を駒のように扱い支配していくという国風で、国王や貴族達の言う事は絶対厳守であり逆らう事が許されない独裁国家。

 自分達こそが世界の中心だと思い込み、他所の国から領地を奪い、そこに住む人を虐げ、人を人として扱わない盗賊に近い国民性を持つ国だ。

 その思考に染まりつつあると言う事は、残った三人もそんな連中と同じ事をしているというのか。


「何で女神達は、あいつ等の行動を咎めようとしなかったんだ」

「何度も咎めたみたいっす。最初は素直に反省していた見たいっすけど、回数を重ねていくうちに徐々に

言う事を聞かなくなり、最終的には自分に加護を与えてくれた女神達を邪魔者扱いするようになったっす」

「そんな‥‥‥」


 衝撃的な内容に、俺はただただ呆然とするしかなかった。俺達がこの世界に召喚されてから、もう五ヵ月以上経っている。その間に、クフォト王国に残ってしまった三人の仲間の性格は歪み、堕落してしまったのかよ。


「変わり果ててしまった子供達を見て、カラミーラーを初めとした三人はすっかり落ち込み、もう三ヶ月以上も交信を行っていないそうっす」


 そりゃ落ち込むよ。元々は、自分が気に入っていた相手だったのに、こんな事になってしまうのだからショックも大きいのだろう。アリシアさん達も、それ以上何も言えなかった。


「マリア。堕ちてしまった三人の名前を知っているか?」


 名前を聞いてどうこう出来る訳でもないが、どうしても聞かずにはいられなかった。


「剣の女神・アラエラーのお気に入り、日比島武治ひびしまたけはる


 日比島武治。俺が元居た世界では、剣道部に所属していて、ルックスも良く女子の人気が非常に高かった。正義感が強く、曲がった事が嫌いな好青年だった男だ。おそらく、強すぎる正義感が仇となってしまったのだろう。


「銃の女神・カラミーラーのお気に入り、丸本日和まるもとひより


 丸本日和。放送部に所属していた、いつも明るくニコニコしていた活発な女の子。持ち前の明るさと、容姿の良さから男女問わず人気が高く、本人もとても人当たりの良かった女だ。日比島に惚れていたから、アイツと一緒に残りたかったのだろう。


「魔法の女神・サラフィのお気に入り、左京弘美さきょうひろみ


 左京弘美。生徒会役員を務め、更に俺のクラスの学級委員長も務めている、眼鏡を掛けたしっかり者の女の子。リーダーシップが取れて、勉強もスポーツも完璧な文武両道、容姿端麗という言葉がしっくりくる女。人一倍使命感の強い子だから、クフォト王国がどんな国であっても最後まで残って守ろうとしていたのだろう。

 いずれも、前の世界ではとても人当たりが良く、その上とても人気の高い三人だ。それがクフォト王国の思想に染まり、歪んでしまったというのだから信じられない。そう、信じられないのだ。


「何で、何であの三人が‥‥‥」


 未だに信じられない俺は、箸を皿の上に落とし、両拳を強く握りしめた。


「ショーマさん」

「翔馬」


 俺の両隣りに座るアリシアさんとフィアナが、そっと俺の拳を包み込むように握ってくれた。二人の温かさに、少しずつではあるが落ち着きを取り戻していった。


《と言う事は、クフォト王国に嫌気がさし、他の国に亡命した勇者は、神宮寺美穂子じんぐうじみほこね。聖の女神・イリューシャのお気に入りの》


 図らずも、もう一人の勇者の名前も分かってしまった。

 神宮寺美穂子か。確かにあの子は、人が嫌がる事をするのが大嫌いな性格をしているから、弱者をいたぶるクフォト王国の思想に嫌気がさし、壁を守っている兵士の目を盗んで逃げたとしても不思議ではない。


「まったく、魔王を倒してもらう為に召喚されたのに、こんなんじゃ召喚に関わった女神様達が浮かばれないわ」


 腕を組んで、怒りを露わにするカナデ。これでは世界を守るどころか、人類史上最悪の敵になってしまう可能性もある。


「最悪の場合、その三人の勇者が敵となる可能性だってあるのかもしれません。その為の備えを、わたし達もしていくべきだと思います」

「‥‥‥そうだな。メリーの言う通りだ」


 最悪の場合、その三人と刃を交える時が来るのかもしれない。魔王が滅んだ後、この世界に新しい混乱を招くというのなら、同じ学校の同級生とは言え容赦はしない。出来れば、そんな未来が訪れない事を祈る。

 最悪の事態の為の備えとして、今後はいろんなアイテムを集める必要があるのかもしれないな。今までみたいに、偏った物ばかりを集めてはいざという時に対応できない。


「はぁ。大事なゴブリン狩りを前に、こんな暗い話をしたくなかったから黙ってたっすけど」

「いえ。知る事が出来て良かったと思っています」


 そう。大事なのは知る事だ。もし間違いがあったら、二度と同じ間違いを繰り返さない様にする事が出来る。メリーがいつもそうしているように、俺達も知らなければならない事をどんどん知っていかなければならないのだ。

 ピンと張り詰めた空気を壊す様に、アリシアさんがパンパンと手を叩いた。


「さて、この話は終わりです。今は、明日行われるゴブリン狩りの為に英気を養うのが大切です。その為には、先ずはきちんと食事を取って、きちんと睡眠を取るのが大切です」

「そうだな」


 今後の課題と懸念が分かり、それの対処を考えるのは良いが、今は目の前の事に集中しないといけない。

 夕食を食べ終えた後、自ら夜番をすると言う事でマリアに最初の夜番を任せて俺達は睡眠を取る事にした。それから三時間後に俺が夜番をし、更に三時間後にはメリーが夜番を担当した。


       ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 翌早朝。朝食を食べ終えた俺は、虎鉄とアイアンロブスター製の刀と、オリハルコン製の刀を腰に差していた。


《ゴブリン相手に、ハバキリも蒼龍も火車斬も使うまでではないと言う事ね。まぁ、虎鉄でも楽勝でしょうけど》


 まぁ、虎鉄もオリハルコン製の刀(金鉄と命名)はBランクの上物だし、アイアンロブスター製の刀(海鉄と命名)はCランクだもんな。

 アリシアさんも、アイアンロブスター製の剣を腰に提げ、ミスリルの杖を手に持って出発の準備を整えていた。

 カナデは、リボルバー銃を二丁装備した。ゴブリン相手なら、普通の銃でも十分に倒す事が出来るからな。

 メリーは、大小二振りのアイアンロブスター製の刀を腰に差していた。

 フィアナは、黒曜を腰に提げて、古墳剣を手に持っていた。おそらく、出来たばかりの自分の剣を使ってみたいのだろう。

 それぞれ準備を終えた俺達は、マリアを先頭に目の前にそびえ立つゴブリンの巣窟、ヴァリーバ鉱山跡地を見上げていた。


「先導は任せるっす。あの中はマジでゴブリンだらけだから注意するっす。下級の魔物と言えど、群れで襲い掛かってくるとかなり厄介っすから」

「ああ」


 それに、ヴァリーバ鉱山跡地は昔掘られた穴がそのまま残っているので、中は完全に迷路のようになっているのだというのだ。マップで確認しながら進んでも、油断したら迷って二度と出られなくなってしまう事もあるのだという。


「目的のマギグラムゴブリンなら、あの鉱山の中腹の大空洞に居るっす。ただ、大勢のゴブリン達が行く手を阻んでいるっすから、容易にはたどり着けないっす」


 随分と詳しいな。まぁ、転移魔法を使った事がバレると有給休暇が千年も遠のいてしまうのだから、そりゃ必死にもなるか。


「先に言うけど、魔法は使っちゃダメっすよ。大規模な爆発や衝撃で、鉱山自体が崩壊してしまう危険があるっすから」


 つまり、武器による応戦だけで対処しないといけないのか。穴だらけの鉱山跡だから、それも仕方なしか。全員ほぼ同じタイミングで頷いた。


「それじゃ、行くっすよ」


 山の麓にある木の骨組みがむき出しになった入り口から、俺達は洞窟の中へと入って行った。


「ふぅん。中は意外と広いな」


 ライトの魔法で周囲を確認すると、洞窟は天井までの高さが三メートル以上もあり、道幅もトラック一台が通れるくらい広かった。これだけ大きな穴が開いているにも拘らず、洞窟はしっかりとしていて、崩れる気配が感じられなかった。見た目は。

 アリシアさん曰く、掘った後すぐに崩れては危ないので、こういう穴を掘る際は必ず土魔法が使える従業員が必要不可欠なのだという。


「うぅわ。そこら中ゴブリンだらけだな」

「はい。正面から六十。右の横穴から三十。更にその先の分かれ道の両方から、百を超えるゴブリン達がひしめき合っています」


 危険察知でゴブリンの居場所を把握し、メリーが猫耳と鼻を最大限に活用する事で正確な数を把握する事が出来た。流石、ゴブリンの巣窟だ。


「この辺り一帯に出没しているゴブリンの殆どが、ここヴァリーバ鉱山跡地から出てきて迷い込んだのではないかと言われていますが、相手がゴブリンと言う事でギルドもさほど危険視していないのです。ゴブリンの魔石自体は小さいので、いろんな道具の核に使われることが多いので討伐依頼は多いですけど」


 危険度が低い割には、魔石は広い範囲で有効活用されているのだな。

 そもそも魔石は、魔法の武器や使い捨てライトや、魔物除けの結界石等の原料として使われていて、行商人や貴族、職人達がギルドから大量に買い取っているのだという。


「ゴブリンの魔石は、主にどんな事に使われているんだ?」

「大きさが十センチ弱、不純物を取り除くと三センチ弱と言う事で、蛍光ライトはもちろん、商人や王侯貴族の間で使われている通信機の核として使われています。だた、長くても九十日くらいしか持たないので、実質魔法具の使い捨てコアとして使われることが多いのです。なので、平民でも格安で買える値段で売られているのです」


 まるで乾電池だな。というか、完全に電池の代用として使われているな。ゴブリンに限らず、どの魔物の魔石も大抵は魔法具の使い捨てコアとなっている為、定期的に交換しないといけないらしい。そりゃ、常に魔石が必要とされているのも頷けるわ。

 ただ、その中でもマギグラムゴブリンの魔石は非常に純度が良く、アイテムボックスに入っている状態でも常に大気中の魔素を取り込み、魔力を蓄えているので永続的に使えるのだという。つまり、自力で充電が出来るのだな。その為、荷電魔銃の様な高級な魔法銃の核としてよく使われているのだそうだ。

 って事は何か!?何もわざわざ、マギグラムゴブリンの魔石だけを狙う事は無いのじゃねぇと思ったけど、ここまで来てしまった以上今更後戻りも出来ない。それに、カラミーラーがざわざわマギグラムゴブリンの魔石を指したのは、おそらく自身の鬱憤を少しでも晴らす為にデリウスを利用したのだろう。とんだ嫌がらせだ。そのカラミーラーという女神も、かなり性悪な性格をしているみたいだな。


「さて諸君。お勉強タイムもその辺に、そろそろゴブちゃんが襲ってくるっすよ」


 拳を構えるマリアを見て、俺は海鉄を抜き、周囲の警戒をした。皆もそれぞれ武器を構えていた。


「背中合わせに円陣を組め!」


 単体では弱いゴブリンも、群れを成して襲い掛かってくるとベテランの冒険者でも命を落としてしまう事がある。弱いからと言って、決して油断してはならないのだ。

 皆と背中を合わせた直後、洞窟にある穴という穴から緑色の身体をした不気味な小鬼が、武器を手に次々と這い出てきた。しかもその数が、半端じゃなかったのだ。


「フッン!」


 俺は海鉄でゴブリン達の首を切り落とし、次々と倒していった。しかし、いくら倒してもゴブリン達の数が減った気がせず、いろんな穴から際限なく湧いて出てきた。


「これは厳しいですね」

「この数を魔法抜きで対処しないといけないなんて!」


 アリシアさんとフィアナは、この状況で魔法を使えない事に若干表情を強張らせていた。

 ゴブリンの巣窟とは聞いたが、流石にこの数は異常だ。長年放置された結果、ここまで大繁殖してしまったのだろう。

 これが、ヴァリーバ鉱山跡地の現状か。


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