39 戦いの終わり
「大丈夫か?」
「あぁ」
首を締め上げられているフィアナを助けるために、ハバキリでクマガの左腕を切り落とし、地面に落ちる前にフィアナを抱き抱えて救出する事が出来た。抱き抱えるというのは、周りから見たらいわゆるお姫様抱っこというものだ。
《いいねぇ♪お姫様の危機に颯爽と駆けつけた王子様みたいで》
頭の中で余計な事を言っているアホ女神は放っておいて、俺は左腕を切り落とされ、痛みで叫んだ後二メートル以上下がってこちらを警戒する大男を睨み付けていた。
あいつが、クアガ族の族長のクマガで間違いないだろう。ボディービルダー顔負けの筋肉質な身体と、黒い武将髭顔を覆われたその容姿はまさしく熊であった。クマガという名前だけに。
《笑えないジョークは結構。それよりも、向こうはかなりヤバい事になっているわよ》
面白くなくて悪かったな。ま、それは一旦置いておいて。しばらく睨み合った後、クマガの様子が急に豹変しだした。
「ああああっ‥‥‥ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
悲痛な叫びを上げながら、クマガの姿が徐々に変質していった。
皮膚の色は赤くなり、上の犬歯が伸び、そして切り落とされた左腕からボコボコと肉片が盛り上がり、新たな腕が生え変わってきた。その腕もすぐに形が歪み、長く伸びていったと思うとそれは先端が太い柳葉刀の様な刀へと変わっていった。更に、右手も大剣の柄と一体になり完全に腕の一部となった。
《マズいわね。完全に魔族化してしまったわ》
やっぱりそうか。元々半分魔族化してしまっていたから、何時かは完全な魔族になってしまうのではないかと思っていたが、まさかこんなに早くなるとは。しかも、こんなタイミングで。
「フィアナ。お前は下がって隠れてろ。こいつは、俺が倒す」
俺の胸に顔埋めているフィアナを下ろし、隠れるように促した。心配そうに俺を見ていたが、変質したクマガを見て渋々後ろに下がり、茂みの陰に隠れた。
《油断しないでよ》
「分かってる」
俺は右手にハバキリを、左手に蒼龍をもって構えた。本来はあり得ない事なのだが、クマガには魔力吸収のスキルが宿っている。その為、火属性付与の能力がある火竜の剣は使えない。
「先程は油断したが、我には勝利の神であせられるアルベール様から加護を頂いた。貴様ごとき何処の馬の骨に負ける訳がない」
変質を終えたクマガは、驚く程落ち着いていた。おそらく、その変質もアルベールの加護の影響とでも思っているのだろう。アルベールに選ばれたと信じて疑わない、その信仰心は逆に狂気を感じるぞ。
「だから何だ。俺だって、刀の女神であるデリウス様から加護を貰っているのだぞ」
「ほほぉ。貴様も神から加護を与えられし者だったのか。刀の女神であらせられるデリウス様から。刀を扱う貴様にピッタリの加護だな。あとは力だな」
腕と一体化した剣を構え、腰を少し落としてどっしりとしていた。
「悪いな。お前みたいな熊に、負ける気がしないな」
俺は強がりを口にはしないし、前の世界で散々な目に遭って以来見栄を張る事もやめる事にした。
だからこれは、俺の心からの本心。あれだけの変質を遂げたにもかかわらず、全く恐怖を感じることが無く、負ける気もしない。
「貴様はなかなかの自信家の様だな。だったらその鼻柱、へし折ってやる」
数十秒ほどお互いに睨み合い、近くの気に止まっていた鳥が飛び立ったのを合図にクマガが動き出した。
「やあぁ!」
両腕の剣が同時に俺に襲い掛かり、それを俺はハバキリと蒼龍で防ぎクマガの腹に蹴りを入れて二~三歩相手を下がらせた。
(コイツ!とんでもない筋肉を持ってるな!)
蹴った感触は、まるでコンクリートを蹴っている様な感覚であった。
だが、それで驚いて動きが止まる俺ではない。蹴られて若干よろめいている所を見逃す筈が無く、俺はすかさずハバキリでクマガの脇腹を斬ろうとした。しかしそれは、右手の剣で防がれてしまった。
(ハバキリの絶対斬撃が効かないのか!?)
《魔王の力が宿った武器だよ。いくら絶対斬撃の能力を持っていてもそう簡単には斬れないわよ》
(そうか。簡単には斬れないのだな。簡単には)
仕方なく俺はハバキリを引いて、蒼龍で頭を狙ったがそれは左手の剣で防がれてしまった。けどそれは想定内。クマガが俺の攻撃を防ぐと同時に、クマガの脇目掛けて再びハバキリで攻撃した。言うまでもなく、それも右手の大剣で防がれてしまった。
直後に頭を狙っていた蒼龍を素早く引き、今度は喉元を突こうとした。これも防がれてしまったが、また直後にハバキリで次の攻撃を繰り出し、そう言った攻撃を何度も繰り返していた。傍から見たらアニメで見られるカキカキカキッと、目にも止まらぬ速さで剣を振っているみたいな感じであった。
「こざかしい!」
俺の攻撃をずっと防いでいたクマガが、力任せに両手の剣を横に大きく振り、俺を下がらせた。おそらく、避けられるのを承知の上での攻撃なのだろう。
「はああぁっ!」
一回転半回った後、クマガは両手の大剣を大きく振り上げて襲い掛かってきた。
「っ!?」
危険を察知した俺はすぐに横に移動し、クマガの攻撃は地面を大きく抉り大地を軽く揺らした。大振りとは思えないくらいに素早い剣さばきであった。
もちろんそれでクマガの動きが止まる訳がなく、地面を抉りながら両手の剣を横に振ってきた。
「っぐっ!?」
幸い防ぐ事が出来たが、物凄い力の前に俺は三メートル以上吹っ飛ばされてしまった。ハバキリと蒼龍じゃなかったら、絶対に粉々に粉砕していたに違いない。
クマガは、吹っ飛ばされた俺を追いかけて左右の剣で交互に攻撃を繰り出してきた。
俺はその攻撃を剣で防ぎ、時に横へ動いて躱してハバキリと蒼龍で相手の剣を攻撃した。しばらく打ち合っていると、クマガの方から距離を取り、互いにいつでも責められる間合いに立っていた。
「ふうぅ。久しぶりに手強い奴と闘ったぞ」
どうやらここまでの戦いを絶賛して、最後に俺と話がしたいと思ったのだろう。この男、純粋に戦いを楽しんでいるな。
「お前を少々侮っていた様だな。小僧名は?」
「翔馬。オリエの町の外れに住む、ただの冒険者だ」
半分本当だが、半分嘘を言っている。迂闊に自分の素性を離して、クフォト王国の耳に入っては面倒だからな。
「ただの冒険者ごときが、刀の女神デリウス様の加護を頂くとは、世の中何が起こるか分からないな」
「アンタみたいな髭熊に、アルベールの加護が与えられた事の方が不思議だな」
「アルベール様を呼び捨てにするとは」
「俺が崇拝しているのは、あくまでデリウス様だけだ。こう言ってはなんだが、デリウス様以外の神様には興味が無いのでな」
「それもそうだな。だがそれは自重した方が良いぞ、ショーマとやら。俺は良いが、それだと他の神の崇拝者の逆鱗に触れる事になるぞ」
「以後気と付ける」
俺に加護を与えてくれた女神が、マイペースで天然ボケな性格をしているから様付けして呼ぶのがバカバカしく感じるからな。しかも、様付けすると気持ち悪がられるし。
《タメ口で話されている上に、ここまで罵られるのが、最近何だか逆に気持ち良く感じるのよね》
こんなんだし。敬う気持ちは捨ててないが。
「最後に貴様と話が出来て良かった。貴様の名を俺の胸と、墓石に刻んでやる」
「悪いが、それは叶わないな」
「減らず口もそれまでだ」
しばしの会話を終えて、クマガが再び動き出した。今度は、周りにある木も諸共切っていった。それによって、周りの木が倒れていった。
「クソ!」
足元に切り倒された樹木が動きの妨げになり、十分に動く事が出来ず相手の攻撃を避けるのが困難になってきた。それが狙いで木を伐って行ったのかもしれない。
対するクマガは、足元に木が転がっていてもお構いなしに動き回っていた。と言うより、倒れた木を蹴り飛ばしながら進んで行った。
このままではこちらが不利になる。仕方なく俺は、木の枝に飛び移り、枝伝いでジャンプして移動していった。そんな俺を、クマガは周りの木を切り倒しながら俺を追いかけてきた。
(付いて来い。この戦を手っ取り早く終わらせてやる)
《見せしめにするのね》
人聞きが悪いが、その発想は正解だ。
森を抜けると、クアガ族の戦士とアリシアさん達がまだ戦っていた。そこに俺とクマガが乱入してきた事で、戦っていた戦士達の動きがピタリと止まり、俺とクマガの戦いを見守っていた。あんな異形な姿へと変貌しているにも拘らず、クアガ族の戦士達は誰一人としてクマガを恐れたりはしなかった。あれも、魔王の加護のお陰か?
アリシアさんとメリーは彼等の輪から外れ、カナデが居る所まで後退していた。フィアナは森の茂みから出て、近くで俺の戦いを見守っていた。マリアは‥‥‥敵陣の中にいるがまぁ大丈夫だろう。人化していても立派な女神だし。
「やあっ!おりゃ!どりゃ!」
クマガの攻撃を避けていくうちに、俺達の周りをクアガ族の戦士達が取り囲んでいた。クマガの戦いの邪魔はしたくない様だ。
囲まれてはいるが、形勢は俺の方が優位だ。それを今から証明しよう。
攻撃してきたクマガの懐に飛び込み、蒼龍を逆手に持ち替え、クマガの顎下を柄頭で突き上げた。
「あっ!」
柄頭のアッパーカットを食らったクマガは、数歩よろめきながら下がった。その間に素早く蒼龍を順手に持ち直し、クマガが攻めてくるのと同時に自分の両腕をクロスさせて、向こうが剣で攻撃をしてきた瞬間にハバキリと蒼龍を×を描く様に振り上げた。
その瞬間
カキィーン!
甲高い音を立てながら、クマガが両手に持っていた剣は根本付近から折れた。
そう。これこそが俺の狙い。いかに魔王の力が宿った剣と言えど、同じ所を正確に何度も攻撃されればヒビも入る。不壊の能力が宿っていなかったからこそ、それが出来たのである。
その後も俺は攻撃を止める事無く、すかさずクマガの分厚い胸板をハバキリと蒼龍でこれまた×を描く様に深く切った。
「新技・十文字斬り。なんつって」
いずれも肺まで傷付けた為、もはや立っているのもやっとのクマガ。それからすぐ、異変が起こった。
「ああああっ・・・・ああああああああああああああああああっ!」
ハバキリで斬られた傷から闇色の瘴気が溢れ出て、それが空気中に触れると同時に霧散していき、消滅していった。
《魔王の力溢れ出て、浄化された後に消滅していっているわ。正式な神器ではないが、神の力が宿った神刀。斬った瞬間に浄化され、無害な靄となって消えて言っているわ。魔族にとっては、たった一太刀食らっただけでも、命取りになってしまう程のね》
なるほど。あれは魔が消滅しているからなのだな。人から魔族になったのだから、体内に魔石が無いのは当たり前だし、そもそも魔族に魔石は存在しない。
全ての瘴気が浄化され、魔王の力と加護を失ったクマガは背中からドンッと音を立てながら倒れ、光の粒子となってパッと消滅していった。
「クマガは倒した。これで、お前達を従える者はいなくなった」
その言葉を聞いた瞬間、周りを取り囲んでいたクアガ族の戦士達の手から武器が離れ、絶対的勝利をもたらしてくれる指揮官を失った事で全員が戦意を喪失させていった。
予想通り、こいつ等はクマガの力に絶対の信頼を寄せ、何かあってもクマガがいてくれればどうにでもなるとでも思っていたのだろう。それがいなくなっただけで、この戦士達は一気に戦う意味を見失い、これ以上の戦闘行為が行えなくなってしまう。それがこのクアガ族の弱点でもある。
(流石、デリウスが気に入っただけの事はあるっす。それより、ハバキリの確認をするっす)
突然マリアから念波が届いて来たと思ったら、いきなりハバキリのステータスを見るように言われた。言われるまま俺は、さりげなくハバキリのステータスを確認した。
=========================================
名前:ハバキリ
ランク:S
種類:神刀
持ち主:帯刀翔馬
能力:不壊・持ち主固定・絶対斬撃・魔力吸収・盗難防止
斬撃力・魔魂消滅・瘴気浄化
=========================================
新しい能力が2つも追加されていた。
魔魂消滅は、斬った魔族から力を全て奪い、消滅させていく対魔族用の能力。当然、斬られた魔族は一撃で死ぬ。ちなみにこの能力は、アンデット系の魔物やダンジョンモンスターにも有効だ。
瘴気浄化は、魔族から噴出する力と瘴気を浄化し、無害な魔素へと変換させる能力だ。変換された魔素は、魔力吸収によりハバキリに取り込まれ、力となる。
どちらも、対魔族様に与えられた能力で、魔族戦においては切り札となりえるものであった。
《ハバキリがどんどん、君仕様の刀へと変化していっているのかもしれないわね。最終的にどんな刀になるのか気になるけど、流石にこれ以上能力が増える事は無いと思うわ》
デリウスがそう言うのなら、そうなのかもしれないな。
と言う事は、ハバキリが徐々に俺の為の俺だけの刀に変化していっているのかもしれない。何故そうなっているのかについては、デリウスもマリアも知らなかったみたいだが、今はあまり気にしないでおこう。
それよりも今は
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「勝ったぞぉ!」
「これで村は守られた!」
戦いに勝利したファウーロ族は、大きく声を上げながら勝利を喜んだ。
「すごいですショーマさん!」
「やるじゃん!」
「流石ご主人様!」
アリシアさんとカナデとメリーが俺の元へと駆け寄り、俺の勝利を絶賛した。三人とも怪我が無くて何よりだ。
「しょ、う、ま‥‥‥しょうま‥‥‥翔馬!」
フィリアも三人から遅れて俺の所へと駆け寄った。俺の名前の呼び方も、「ショーマ」ではなく「翔馬」と呼ぼうとしている様だ。俺の事を全て話しているから、前の世界の呼び方に合わせようとしているのだろう。
「翔馬。お前には感謝する。私達の村を救ってくれた。ファウーロ族を代表して、礼を言う」
片膝を付き、建てた膝の上に片手を添えて頭を下げた。そのポーズは、まるで主君の命に従う騎士の様な格好であった。
「今宵は、我が村で宴を催す。勝利の立役者にして、ファウーロ族の英雄である翔馬には最高のもてなしを行おう」
英雄なんて言われると、何だかむず痒いのだけど‥‥‥。
《あら、勇者にふさわしい称号じゃないの。その他の欄に、「ファウーロ族の英雄」という称号が付いたから、後で確認しなさい》
おやおや、その他の欄にはそういった称号が記入されるのだな。
《余程の大成果を上げない限りは、称号が付く事は無いわ。例えば、オリハルコンゴーレムを討伐したくらいでは付かないけど、町や集落、国の危機を救ったら付くわ》
そういうものか。今回は、ファウーロ族の存続が掛かった戦いだった為、そういう称号が付いたのだろう。
森の先にある洞窟へ行きなさい。そこでお前とお前の仲間に与えたい物がある。待っている。
「っ!?」
突然、頭の中にデリウスやマリアのものとは違う女性の声が響き、俺に指示を出してきた。森というのは、クマガと戦ったあの森の事なのだろう。まだあの先に洞窟があって、そこに行けというのか。
「なに、今の?」
「え?え?え?」
「今の声は!?」
「わ、私にも!?」
どうやら俺だけじゃなく、アリシアさんやカナデやメリー、更にはパートナーの誓いを結んでいないフィアナにも、さっきの声が聞こえていたみたいだ。俺の仲間と言っていたが、彼女達にも聞こえていたとは思わなかった。
突然驚く俺達に困惑するものの、ファウーロの戦士達は敗れたクアガの戦士の拘束を続けた。俺達は村の近くに止めてある馬車に向かって歩きながら、あの声の事をデリウスに尋ねた。
(デリウス!)
《分かってる!誰かが私達の念波に干渉してきているわ。でもこの気配!》
(何か思い当たる事があるのか?)
《誰のものかまでは分からないけど、私を超える強力な神気を感じたわ。下級神ではないわ》
(マジかよ!?)
と言う事は、デリウス以外の他の神様が俺達に干渉してきたというのか。
(上級神と言うと、サラディーナ様とアストランテ様、ガリアーナ様やエルバーレ様、それにハーディーン様が関わっておられるのですか?)
(ちょっと待ってアリシアさん!その五人の神様は何なんだ?)
名前だけ聞いても何の神様なのかは知らないし、そもそも名前だけでは全くピンと来ない。
(ショーマにはまだ話してなかったわね。アリシアさんが言った五人はそれぞれ、太陽、海、大地、自然、冥府を司る神様で、いずれもかなり位の高い神様なのよ)
(太陽を司るサラディーナ様は女神で、ここトウラン武王国の主神として崇拝されています。アストランテ様は海を司る男神で、ナンゴウ海王国の主神)
《ガリアーナ様は大地の女神で、クフォト王国の主神で一番嫌味な女狐。エルバーレ様は自然の女神で、ザイレン聖王国の主神を務めている理屈っぽいウザ女。ハーディーン様は冥府の神で、ホクゴ獣王国の主神をしている野心とは無縁の陰気なおっさん。最初の二人の方が、少し気弱だけどまだ話が分かるわ》
メリー説明を、デリウスが勝手に引き継いで説明をしてくれた。三人にはもれなく悪口が付け加えられている。おいおい。おたく等の上司だろ?上司をそんな風に言ったらマズいだろ。
《いいのいいの。バレなければいくらでも陰口を言っても良い》
バレるバレないの問題じゃなくて、そもそも陰口自体を言ってはダメだろ。
《でも、断言しても良いけどあの声は五人のものではないわ。二人は男神だから除外だけど》
デリウス曰く、あの声は五人、男神二人を除く三人の上級神のものではないらしい。
《となると、消去法で世界神様と言う事になるけど、あのお方に限ってそれはないわ》
(世界神?)
(全ての世界を創造したと言われる、最高位の神様です)
《神界における最高神様であり、絶対の存在》
つまり、国で言う所の王様の様な存在なのか。
(ないって、どうしてなのよ?)
《世界神様は基本的に誰の前にも姿を現さず、戦争や世界の破滅が起こっても一切干渉せず、成り行きを見守るだけのお方なの。自分が手を出す事で、世界のバランスが崩れないようにする為なのよ。だから、新たな世界を創造する時以外は殆ど何もしないの》
なるほど。何もしない神様が、俺達に干渉して導くなんて事はしない訳か。言い方が悪くなってしまったが、デリウスが言うには本来神と言うのはそういう存在なのだそうだ。
ちなみにその世界神様は、デリウスはもちろん他の下級神の前に一度も姿を現したことが無く、その神様が男神なのか女神なのかも分からず、デリウスも詳しくは知らないそうだ。
(来いと言われたけど、どうする?)
《とりあえず行ってみましょう。何かあったら、すぐにアリーナを呼びなさい。人化していても、彼女なら何とかしてくれる》
(分かった)
フィアナには後で説明するとして、アリシアさん達もそれで了承してくれた。マリアも、いざと言う時に駆け付けてくれるそうだ。何が出るかは行ってみてからじゃないと分からない、と言う事か。




