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30 危険な夜

 翌朝。

 朝食を終えた俺達は、馬車に乗ってひたすら馬車道を進んでいた。今御者台座っているのはアリシアさんだ。


「それにしても、向う脛を打っただけであんなに痛がるなんて。お陰で出番が無かったわ」

「向う脛には皮と皮膚しか覆っていないんだ。それゆえ、直接骨を叩かれることになるから痛さが尋常じゃないんだ」

「確かに、わたしもその効果には驚きました」


 ま、メリーの場合拾った木の棒で応戦したのだから、ここまで効果があるなんて思ってもいなかったのだろう。

 だが、向う脛は打つ加減を間違えると骨折させる事になるから本当に注意が必要だ。まぁ、俺が言えた事じゃねぇけど‥‥‥。

 これは警告だが、絶対に真似をしてはいけない、絶対にダメ!


「ショーマさん、あと少ししたらカイエラの町に着きます。どうしますか?」


どうやら、この先にはカイエラという町があるみたいだな。


「カイエラってどんな町なんだ?」

「えぇ!?え、えっと‥‥‥その‥‥‥」


 珍しく口ごもるアリシアさん。そんなに治安の悪い町なのだろうか?


「カイエラの町は、分かり易く言えば昼間は何処にでもある普通の町ですね。ただちょっと‥‥‥夜になるとギラギラした感じになりますかな」


 夜になるとギラギラするって、何だよその不安になるようなワードは?


「あたしも立ち寄った事があるけど、あの町は夜になるとやたら活気づくところがあって、酒屋はもちろん、ギャンブルが行われる店や娼館が町の大多数を占めてる危ない町なのよ。しかも、毎日がお祭りのごとく騒がしいから、宿を取ってもあんまり寝られなかったわ。騒ぐのは決まって夜だから尚たちが悪かった」


 何故わざわざ夜に騒ぐの!治安が悪くない代わりに、年がら年中お祭り騒ぎをする馬鹿が集まる町なのかよ!


「私も職員時代に同僚から聞いたのですけど、迂闊に夜出回るといろんな店から、特に娼館からの強引な勧誘にあって、殆ど無理やり引き込まれてとても迷惑だったと聞きました」


 アリシアさんもげんなりとした表情で語ってくれた。

 ちょっと待て!益々不安になるじゃねぇか!そんな所に宿取るなんて、いろんな意味で怖くてできないじゃないの!冗談じゃない!


「よし。スルーしよう。そんな町で宿取ってもまともな休息が取れるとも思えないし、第一危険すぎる」

「異議ありません」

「あたしも賛成」


 安全第一。そんな危ない町には入らないのが一番だ。アリシアさんとカナデも賛成しているし、このままスルーといたしますか。


「ご主人様のお気持ちは分かりますが、今カイエラの町をスルーされるとその次のタタラの町までかなりの距離がありますし、休憩がてら食料の補充をいたしませんと」


 現実を突きつけないでくれメリーさん。分かっています、分かっていますとも。今カイエラの町をスルーすると、この先の水と食料が厳しくなる事も!

 だがな、そんな夜にギャーギャーお祭り騒ぎをするような町に行っても寝られねぇし、かと言って夜の町に繰り出すと今度は怪しい店から強引な勧誘があり、しかも店によっては無理やり引っ張り込むのだろ。そんな所に泊まるなんて御免だ!

 かくなる上は!


「よし、サクッと買い出しを終えて、とっとと町を出よう。そうしよう。そうするべきだ」

「私もそうするべきだと思います。昼間はまだ安全なので」

「あたしも。あの町に泊まるのだけはもう嫌」

「わたしはご主人様の決定に従うだけです」


 反対意見も出なかったし、とりあえず日中にサクッと用事済ませて、早いうちにカイエラの町を出発する事で意見がまとまった。

 だが、町へ入る為の検問所で俺達は絶望した。


「すみません。もう一回言ってもらえないでしょうか?」

「ですから、この町に入ったら最低一泊は必ずしなければならないという新しい条約が出来たので、あなた方も付いたら早々に宿を取らないといけないのです。決まりですから」


 待て待て待て!聞いてないぞ、そんな事!

 アリシアさんとカナデの方を向いたら、二人とも疲れ切った表情でゆっくりと首を横に振った。どうやら初耳の様だ。

 更に厄介な事に、一度検問所に訪れると絶対に町に入らなくてはいけないルールまであるし、破ると罰金までも発生するらしい。いろいろと問題があるだろ、この町!

 罰金を払うこと自体はいいが、その場合次のタタラの町に着く前に水と食料が尽きてしまう。しかも、条約で必ず一泊しないといけないだなんて、悪夢を見ているみたいだ。

 仕方なく俺達は、この問題だらけのカイエラの町で一泊する羽目になってしまった。トボトボと街中を馬車で進んでいると、もはやお約束とも言えるあの方からのお声が届いた。


《ちょっと君達!まさかとは思うけど、カイエラの町に入ってしまったりしてないでしょうね?》


 何か思い出したかのように、デリウスからの突然の念波が届いた。声の感じから、何だか焦っている様だ。


(あぁ。食料の補充もしたかったし、仕方なく。ふざけた決まり事にはげんなりしたが‥‥‥)


《うわぁ。遅かった‥‥‥》


(遅かったって事は、あんたつい最近条約が変わっていた事を知ってたの!?)


 カナデが思わず、女神様に対してあんた呼ばわりしたがこの際どうでも良い。デリウスも気にしていないみたいだし。


《もう知ってるとは思うけど、カイエラの町は夜になるとやたら騒がしくなる上に、迂闊に外を出回ると拉致に近い勧誘に遭い、無理やり店の中へ引きこまれる危険な町なのよね》


 その説明なら、ここに来る道中カナデやアリシアさんから聞いた。


《そのせいか、町に訪れても日が暮れる前に早々に町を出る商人が後を絶えず、宿を経営している人達からどうにかして欲しいと苦情が出たのよ。それを聞いた町長がとった打開策が、一度検問所を訪れたら必ず町に入らなくちゃいけない事と、町に入ったら最低一泊以上しなくてはいけないというとんでもない条約を作ったのよ。一ヶ月前の事のよ》


 うわぁ、何て最悪な町長なんだ。そんな事をするくらいなら、夜のお祭り騒ぎを取り締まるとか、強引な勧誘をする店に厳しい罰を与える等するべきだと思うのだけど!


《一度は夜の騒ぎや、強引な勧誘について何とかしようと考えたのだけど、それだとカイエラの町は十年と持たずに廃れてしまうと考え、こんなバカげた条約を作ったのよ》


(町にあるお店の約九割が夜の商売を行っていますから、取り締まったりしたら一気に失業者が増えてしまう事を心配したのでしょう)


 アリシアさん、そんな同情した声で言わないで上げて。まぁ確かに、夜の商売で成り立っているような町だから、町長としても苦肉の策だったのだろう。最悪と言ってごめんなさい。

 だが、訪れる側からすればこれ以上に無いくらいに迷惑な話だ。町を訪れる商人も、稼がなくてはいけない為半ば諦めている人もいれば、意気揚々と夜の町に繰り出す連中もいるだろう。


《まぁ、入ってしまった以上仕方がない。夜はなるべく外に出歩かないようにしなさい。お財布はともかく、貞操は何としても守りなさい》


 その言葉の後、デリウスは念波を切った。おそらく、アクセサリー作りをしているサリーとローリエのアドバイスに戻ったのだろう。ていうか、お財布よりも貞操を心配するのかよ。

 さてさて、俺達も今日泊まる宿を慎重に探していた。以前訪れた事があるカナデ曰く、慎重に宿を選ばないと目の前に娼館が堂々と建っていたり、酒場やギャンブル市場と一緒になっていたりする所があるらしい。

 ちなみに、カナデが以前止まっていた宿は娼館と併用して経営している所だったらしく、性欲にまみれた男女がひしめき合っていたという。本人曰く、その事実を宿側が隠していた為そうとは知らずに泊ってしまったのだという。何とも酷い話だ。よく無事だったな。


「それ自体はまだ良いわよ。内側から鍵をかけていれば、男共から誘われる心配が無かったし。それ以上に迷惑だったのが、隣の部屋から声が駄々洩れだった事ね」


 それは確かに迷惑だな。ただでさえ外は騒がしいのに、その上部屋の中に居ても隣の宿泊客から聞きたくもない声を一晩中聞く羽目になるのだから、カナデも相当苦労しただろうな。

 ちなみにその宿は、カナデが町を出たその次の日に赤字が続いているという理由で潰れたそうな。何でも、カナデの様な客が居ると利用してくれるお客さんがどんどん居なくなってしまうそうだ。少なくとも、この町では。


「出来る事なら、普通の宿に泊まりたいが‥‥‥」

「食事付きとなると、食堂からどんちゃん騒ぎをしている人達の声が聞こえてきますでしょうし‥‥‥」

「だからと言って食事抜きは論外。夜に外を出歩く程危険なものは無いから」


 もうどうしたら良いというのだ!まともな宿はあっても、結局はトラブルを避けられないというのかよ。しかも、全ての宿が飲食の持ち込みが禁止されているらしい。


「結局どうしろというのだ‥‥‥」

「最悪の手段としては、夕食を抜いて朝まで意地でも寝る方法もありますが‥‥‥」

「あんた達は知らないだろうけど、夜になった時のあのうるささ。ちっとも寝かせてくれないのよ」


 もはや八方塞がり。完全に逃げ道が無くなってしまい、意気消沈してしまう俺とアリシアさんとカナデ。

 そんな中、ずっと黙っていたメリーが小さく手を上げて提案した。


「宿泊可能の娼館に泊まってはどうですかね」


 内容を聞いた俺達は、この世の終わりの様な顔をした。


「ちょっとバカ猫。あたしの話を聞いてなかったの?今のこの町の娼館は、必ず男女が一緒の部屋で過ごさないといけないのよ。そんな所に泊まれだなんて正気?」


 カナデの場合は、たまたまそう言うシステムが無い宿がギリギリまで潰れずに済んだから助かったのであって、普通はそんな所なんて無い。メリーは一体何を考えているのだろうか?


「いえ、それを逆手に取るのです。見ず知らずの男女とではなく、わたし達が全員同じ部屋に泊まれば襲われる心配が無いのでは?」

「ちょっとタイム!それはそれで問題ないか!」


 確かに、それなら夜中に見ず知らずの男に突然部屋に入って来られる心配は無いが、娼館を経営している人からすれば俺が一度に3人もの女を誑かしている様に見えるじゃねぇか!


「も、もちろん、ご主人様のご意思が優先ですから、無理にわたし達と、その、そう言う事をする必要は、無いかと‥‥‥」


 顔を真っ赤にして、身体をもじもじさせながら言うな。俺とて男だから、絶対に襲わないという保証は出来ないぞ!極力我慢はするが、隣から声が駄々洩れの状態で理性を保っていられる自信は無いぞ!


「で、でも、相手がショーマさんでしたら、その、一緒に寝るのはやぶさかでは、あっ!その、そう言う事が、したい訳ではない‥‥‥と言ったら、嘘になりますけど‥‥‥私も、ショーマさんが相手でしたら‥‥‥」

「そ、そうね‥‥‥ショーマあたし達の盾になってくれればいい訳だし。そりゃあ、あたしだって興味が無い訳ではないけど‥‥‥でも、ショーマがちゃんと責任を取ってくれるのなら‥‥‥」


 ちょっと、アリシアさんとカナデさん。そう言うのは口に出さないでもらうとありがたいのですが。


「ま、まぁとりあえず冷静になろう。そんな所に泊まっても絶対にろくなことにならないと思う。ここは多少騒がしくても食事付きの宿の方が‥‥‥」

「では、あそこにいたしましょう」

「ちょっと待て!」


 アリシアさんが指定したそこは、素人目から見ても明らかに分かるくらい娼館と併用している宿であった。


「そうね。ショーマが居れば少なくとも他の男共に襲われる心配はないし」

「では、決まりです」

「おい!」


 ダメだ。女性陣の決意が固すぎる。俺の意思を無視して、アリシアさんが例の宿の前に馬車を停めた。

 クソ!こうなったら意地でも一人で寝てやる。フカフカのベッドを捨てるのは惜しいが、自分の為にも、彼女達の為にもそうするべきだと思った。


       ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「‥‥‥なんて思ったのに、どうしてこうなるの‥‥‥」


 昼間のうちに買い出しを終えて、女子三人の厚意で先に風呂を済ませた俺は、日が暮れる前に疲れたからと適当な言い訳をして床の上で早目の就寝しようとした。爆睡してしまえば、例え外がうるさかろうが関係なく寝られると思った。

 が


「床で寝られると、掃除が大変なのでご遠慮させてもらいます」

「すみません‥‥‥」


 寝転がった直後、食事を持ってきてくれた宿の女将さんが部屋に入ってきて、床で寝ようとしていた俺を叩き起こして注意したのだ。タイミング悪すぎだろ!どうして掃除が大変なのかについては、俺の口からは語らない。語りたくない。


「それでは、三人同時というのは大変ですが、頑張ってください」


 そう言って女将さんは、食事を置いた後満面の笑みを浮かべながら部屋を出ていった。

 何を勘違いしているのか。いや、そういう所だから仕方が無いが、俺達は別にそういう事をする為にここに来たのではないぞ。違うからな!


「これ、食べても大丈夫なのだろうか?」


 運ばれてきた料理は、一見すると普通の料理に見える。が、ここは夜の町カイエラ。そのカイエラの町で経営している、娼館と併用の宿だ。何もない訳がない。


「女子三人は一緒に風呂に入っているな」


 その間に、デリウスに念波を繋げて確認を取らねばならない。


《何?人が折角いい気持ちで寝ようとしてたのに》


 いやあんた、人じゃなくて女神でしょ。


(それよりも、この料理は普通の料理で間違いないか確認して欲しいのだけど。鑑定眼では、料理の中に含まれている物は確認できないから)


《あらら。君ったら、娼館にはいっちゃったの?お盛んね》


 顔は見えないが、ニヤリとしているのが分かる。


(ちゃんとした旅館だよ。娼館と併用ではあるが‥‥‥)


《またまた。男の子だねぇ君も》


 ウザい!だが、今は怒っている場合ではない。この日を何事もなく過ごす為にも、必要な事だから!


(それで、どうなんだ?)


《そんなに心配しなくても、媚薬成分は含まれていないわよ》


(そうか。ワリィな、寝ようとしている所を)


《その代り、使われている食材は精の付く物ばかり。例えばこの野菜炒めに使われているレバーは、滋養強壮に良く効くわね。スープの素には、性欲を刺激する成分が含まれている。他にも‥‥‥》


(もういい。眠たいところ悪かったな。それじゃおやすみ)


 そんな物食えるか!あの女将、余計な事を!


 ああぁん!もう!


(変な声出すな!)


《いや、今のは私じゃないわよ》


「へ?」


 心を落ちるかせ、耳を澄ませた。すると、両隣の部屋から艶めかしい女性の喘ぎ声が聞こえてきた。それも、かなりの大声で。


「‥‥‥うるさい」


《‥‥‥ドンマイ》


 その言葉を最後に、デリウスは念波を切った。


「チキショウ。何でどいつもこいつもそんなに元気なんだ」


 一刻も早くこの町を出たいが、ここの宿のチェックアウトは朝の十時だからそれまでは何としても我慢しなければ。それに、日中は何処にでもある普通の町なのだから、朝になれば‥‥‥。


「ショーマさん。あの、あがり、ました‥‥‥」

「あ、あたし達も、そっちに行くわね‥‥‥」

「お待たせさせてしまい、申し訳ありません‥‥‥」


 どうやら、三人が風呂から上がってきたようだ。


「いや、俺はそんなに待って、なっ!?」


 浴室から出てきた三人は、生地の薄い透け透けのネグリジェであった。色はそれぞれ、アリシアさんが緑、カナデが黄色、メリーが赤色を着ていた。三人ともショーツは履いていたが、上はフリルが無かったら大変な物が見えていたぞ。


「何でそんな物着てんだ!」

「そう言われても、女性用はこれしかなく‥‥‥」


 自信の身体を抱きながら、モジモジとするアリシアさん。その仕草は逆にそそるからやめてほしい。


「あ、あたしだって恥ずかしいけど、ショーマだったら別にいいかなって‥‥‥」


 最後は言葉を濁して言っているが、カナデが一番マズいのだぞ。年不相応に大きすぎる胸が、ネグリジェによって透けて見え、肝心の部分はフリルのお陰で隠れているが、あまりにも大きすぎる膨らみが惜しげもなく晒されているぞ。


「わ、わたしの身体は少し貧相ですが、その‥‥‥」


 恥ずかしそうにしながらも、両腕で隠そうとせずに透けて見える裸体を晒すメリー。胸のあたりにあるフリルのお陰で、こちらも肝心な部分は見えずに済んだが‥‥‥。


「とにかく何か着て!そんな格好をされてはこっちが落ち着かねぇぞ!」


 そう言って俺は、自分のアイテムボックスから良さげな服が無いか探していた。というか、何で男物しか入ってないんだ!当たり前だけど!


「落ち着かないって事は、ショーマさんから見て私達は魅力的に映っているのですね」

「え?」


 アリシアさんからの思いもよらない言葉に、俺は思はず間抜けな声が出てしまい、パッと三人に視線を向けた。三人とも妙に赤らんだ頬から熱っぽさを感じ、時に艶めかしさも感じられる。明らかに様子がおかしい。


「もしもしお三方。一体どうされたので?」

「ショーマさんがいけないのです。私達の気持ちも知らないで」

「あたし達と一緒に暮らしておきながら、全く手を出さないなんて」

「わたしには女としての魅力に欠けるのでしょうか?」

「いやいやいやいや!三人ともすごく綺麗だぞ。アリシアさんには可憐さと美しさがあって、それでいて

俺と誓いを立てる事に何の迷いも見せなかった決断力と、意思の強さを俺は尊敬してるぞ」


 アリシアさんは、俺がこの世界に来て初めて心から信頼できる相手と確信が持てた最初の人物。正直言って、俺には勿体なさすぎるくらいの人だよ。正確には、ハーフエルフだけど。


 「カナデは何と言っても真っ直ぐな所が良い。アリシアさんが出した課題も、やいのやいの言いながらもきちんとこなしているし、諦めの悪さも美点の一つだと思っている」


 頑固で我儘で、子供っぽさが抜けきれない所があるが、自身が決めた事を何としても全うしようとする所は良いと思う。


「メリーだって、アリシアさんとカナデと同じくらい女としてすごく魅力的だし、スタイルだってすごくいいと思うよ。それに、俺の右腕として、すごく頼りにしているさ」


 レベル以上の強さと、戦いに対する天性の才能の様な物を持っており、奴隷という枠を超えて、前線においては俺が最も信頼できるパートナーだ。


「嬉しいです。私達の事を、きちんと見てくださったのですね」

「あたしでも、ショーマの役に立ってるのね」

「ご主人様にそこまで想われて、わたしは幸せ者です」


 何にせよ、三人がこれで安心してくれたのならそれで良いのだが。


「ではショーマさん。私の全てを、受け取ってください」

「は?」

「あたしの初めて、ショーマにあげる」

「へっ?」

「ご主人様、わたしを食べてください」

「ええぇ!?」


 一体何がどうなって、こういう事態になったのだ!何が起こったのか、全く訳が分からないまま俺は三人にベッドへ押し倒された。

 その時、彼女達が来ているネグリジェから何やら甘ったるい香りが漂い、全ての思考を狂わせて言った。


「まさか!?この匂いのせいで!」


 あの女将!何処まで余計な事をしてくれる!俺とて、こんな形で彼女達を抱くなんて出来ない。こういうのは、やっぱりお互いに愛し合った者同士でやった方が良いに決まっている!


「三人とも、ごめん」


 そう言って俺は素早く彼女達の背後に回り、首筋に手刀を叩き込んで気絶させた。


「やっぱりこういう形では良くないからな」


 三人に布団を被せ、俺は外のお祭り騒ぎと、隣の宿泊客の艶めかしい声のせいでその日は結局一睡もできなかった。

 朝になると三人は正気に戻り、恥ずかしさからか俺の顔を誰も見ようとせず、町を出てからの道中は会話も無いまま進んでいたそうだ。俺はというと、町を出てすぐに電池が切れたかの如く眠ってしまった。仕方がないだろ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 情報収集を怠った者の末路(笑)
2020/02/01 00:05 退会済み
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