201 最後の試練
デリウスや他の神々の計らいにより、全員を神界へと避難してもらった後、俺は獣王陛下の所へ行きゴルディオを置いてしまった事を謝罪した。
「申し訳ありませんでした!」
「頭を上げてくれ。ゴルディオが自ら選んだ事だ。わしにそれを咎める筋合いはないし、申し訳ないと感じるのであればゴルディオの分まで精一杯生きろ」
ゴルディオとガリウムの死は、俺達がここに転移されて間もなく知った。金ランク冒険者を二人失ったのは、同盟軍にとっても、ゴルディオが仕えていたホクゴ獣王国にとっても大きな損失となった。
だけど獣王陛下は、ゴルディオを置いていってしまった俺を許してくれた。
「謝るべきは私よ。私がついておきながら、二人も喪ってしまった」
デリウスもまた、二人が殿を務めてくれないと俺達を転移させられなかった事を悔やみ、拳を強く握りしめていた。いくらガリアーナの力が及んでいたとはいえ、みすみす二人の金ランク冒険者を失わせてしまったのだから。
「それは違います。デリウス様のお陰で、彼等が無事にここまで避難する事が出来たのです。貴方様のお力になれたとならば、ゴルディオも本望でしょう」
獣王陛下はデリウスを攻める事無く、逆に俺達をここまで避難させて事を評価してくれた。
しかし、今回の敗走により同盟軍の指揮は著しく下がり、更に複数の神を取り込んで最強となったガリアーナの圧倒的な力を前に絶望する人もいた。確かに、神器であり絶対斬撃の能力を宿しているハバキリの斬撃を素手で受け止めた。その上、全てを焼き尽くす煉獄の炎を食らっても平然としていた。
それを見た兵士達が絶望するのは、無理からぬ事であった。
「シュウラ、状況は?」
「ああ。各国の兵士の半数以上が犠牲になった。幸いな事に、各国の王は全員無事。しかし、再び立ち上がるには時間が掛かると思う」
「やっぱり‥‥‥」
それだけ、今回の敗北は大きかった。ゴルディオとガリウム、二人の金ランク冒険者を失った損失はあまりにも大きすぎた。その上、魔王の力は俺達が想像していた以上に圧倒的であった。
しかも、その魔王の正体が堕天してしまった上級神の一人である大陸神・ガリアーナなのだから。魔族の王だと信じて疑わなかった彼等にとって、この事実はあまりにもショックが大きすぎた。
しかも、たくさんの神までもが人類に仇をなそうと自ら堕天し、下界へと攻め込んできているのだ。無理もない。これは、再び奮起するのは難しいだろうな。
そんな時、十二単を着た女神が兵士達をかき分けて俺の所まで来た。
「お久しぶりです。帯刀翔馬様」
「そういえば、あんたも無事だったな。サラディーナ」
俺の所に来たのは、トウラン武王国を守護する主神であり生き残ったただ一人の上級神、太陽神・サラディーナであった。
「本当なら再会を喜びたいところですが、まずは私と共に来てもらいたいのです。他の皆様も、どうぞこちらへ」
その表情は、夜中に俺の部屋に押しよってきた時とは違い、キリッとしていた。そんなサラディーナに連れられて、俺達はこの世界で最も大きな社の前まで連れてこられた。
「ここは?」
「ここは、世界神様がおられる社で、普段は上級神様であっても立ち入る事は禁止されている」
緊張した面持ちで、デリウスが説明してくれた。確かに、よく見ると他の神様達もすごく緊張したご様子であった。ここに来ることは無いに等しいのだな。
そんな時、社からから七人の男神と一人の女神が出てきて、真っ直ぐ俺達を見ていた。
「左から、ラウロン、ボルエラ、タイセイ、アマミ、タケミヤ、ゼラガ、オオワガ、ヨイヤオ。神々の中で、ここへの自由な出入りが許されている八人の眷属」
「彼等が」
世界神の眷属で、実質この神界で世界神の次に位の高い存在。
そんな八人の眷属の内の一人、縄文時代当たりの高貴な身分の人が着ていそうな服を着た、黒髪短髪の三十代前半くらいの外見の男神が前に出てきた。パッと見は完全に日本人であった。
左から五番目という事は、戦の神・タケミヤだな。ユズルに加護を与えた、上級神をも凌駕する力を持つ神界ナンバーツーの神。
「待っていたぞ、帯刀翔馬。こちらへ」
タケミヤに来るように言われ、俺はゆっくりと前へと進んだ。皆から五メートル程離れた所で、タケミヤが突然腰に提げてあった剣を抜いて構えた。
「ん!?」
俺はほぼ条件反射で、ハバキリを抜いた。
「ちょっとタケミヤ!叢雲の剣を使うなんて一体どういうつもりなのよ!」
「あれが、叢雲の剣」
八岐大蛇の尾の先から取り出されたと言い伝えられている、伝説の神器。であると同時に、タケミヤの専属神器。
「最後の試練として、この俺と戦い勝つ事だ」
戦の神であるタケミヤに勝つって、そんな実現不可能な事を最後の試練にするなんて、この神様は一体何を考えているんだ!
「バカ言わないで!いくら神力を宿していても、まだ人間である彼があんたに勝てる訳がないでしょ!」
「ふざけるのも大概にしろ!翔馬を殺す気か!」
試練の内容に、デリウスとヴァルケリーは激怒していた。タケミヤの力をよく知っているだけあって、この試練の無謀さをよく理解していた。
「悪いが、お前達はそこから動かないでくれ」
「「うっ!?」」
タケミヤに睨まれた瞬間、デリウスとヴァルケリーは喋る事もままならない程の強い金縛りに遭った。神気を感じられないから、ただ睨んだだけであの二人の動きを封じてしまったのだ。とんでもないプレッシャーを放っているのだな。
そしてそれは、デリウスとヴァルケリーだけでなくあの場にいた全員が、タケミヤの放つ強烈なプレッシャーの前に動けないでいた。その強烈なプレッシャーを前に、ユズルや水島でさえ身動き一つ取れないでいた。
「こんな暴挙、納得いく訳にはいきません!」
「ショーマ一人で戦わせる訳にはいかないわ!」
「それでしたらわたし達も戦います!」
「お前の勝手にはさせない!」
アリシアさんとカナデとメリーとフィアナも、それぞれ武器を持って前に出てきた。この四人には何故か効いていなかった。
が、四人は見えない壁に阻まれてそれ以上先に進む事が出来なかった。
「言った筈だ。これは試練なんだと」
「ふざけるな!」
「いくら神様でも、こんなのは許しません!」
怒った四人は、見えない壁に向かって体当たりをして強引に突破しようとしていた。フィアナのパワーでも壊せないなんて、かなり頑丈に出来ているのだな。
「では、始めよう」
「なっ!?」
金色の神気を纏ったタケミヤは、メリー以上のスピードで俺の目の前に来て、叢雲の剣で俺を攻撃してきた。何とか防ぐ事が出来たが、フィアナをも超える馬鹿力によって俺はかなり遠くまで飛ばされてしまった。
「あっ!」
着地に失敗し、俺は砂利の上に倒れてしまった。皆の動揺も激しく、見えない壁の内側でざわついているのが見えた。アリシアさん達は、相変わらず見えない壁に向かって体当たりをし続けていた。
そんな俺にタケミヤは、ゆっくりと歩いて近づいてきた。
「お前の本気はまだそんな物ではないだろ」
「クソォ」
俺は自分の中にある神力を全て解放し、青と赤と朱色の神気を全身に纏って立ち上がった。
「このぉ!」
俺は力一杯砂利の下にある地面を蹴って、タケミヤの首を目掛けて斬撃を繰り出してきた。が、この攻撃をタケミヤは左掌で防いで見せた。ガリアーナの時と同じ様に。
「神の加護に宿った神力に頼るのではなく、お前自身の神力を使ってみろ」
その直後タケミヤは、俺の脇腹に蹴りを入れて、見えない壁に背中を激しく打ち付けた。
「あっ!」
先程の蹴りは、俺が今まで受けた攻撃の中でも一番強力で、神気を纏っていなかったら粉々に吹き飛んでいたと思う。
「加護の力を使う事を悪いとは思わないが、それはお前の真の力ではない。お前自身の神気を使わなければ意味がないだろ」
「ッ‥‥‥」
タケミヤの言う通り。俺は加護の力の使い方を知ってから、その力に頼っていた部分があった。自分の神力を使わないと、本当の意味で自分の神力を使いこなしたことにはならない。
俺はデリウスとヴァルケリー、サラディーナの三人の神力を引っ込めて、自分の神力だけを纏ってもう一度タケミヤに斬りかかった。今度は脇腹を狙って。
だけどタケミヤは、それを防ごうとせずそのまま攻撃を食らった。なのに、ハバキリの刃はタケミヤの身体を通らなかった。
「ちょっと痛い程度だな」
これでちょっと痛い程度だというのか!
驚愕する俺の髪を掴み、タケミヤは俺の身体を叢雲の剣で袈裟懸けに攻撃した。
「ガハッ!」
咄嗟に身を引いたが、完全には避け切れず斬撃を食らい、身体が焼けるような激しい痛みが身体を襲い、口から血反吐を吐いた。
そんな俺にタケミヤは、間髪入れずに鳩尾に蹴りを入れて蹴飛ばした。
「まだまだ中途半端だ。そんなものでこの俺に傷を入れられると思ったか」
「うぅ‥‥‥」
ガリアーナにも言われた。俺の神力のコントロールはまだ中途半端なのだと。
「私ももう見ていられません!」
そんな俺を見て、プレッシャーを跳ね除けた美穂子までもが見えない壁に体当たりをし始めた。
やめてくれ、五人とも身体が痣だらけになり、血まで流している。何度もコンクリートの壁に体当たりをしている様なものだから、身体にかかる負荷も大きく怪我もする。
「立て。まだ試練は終わっていない」
「クッ‥‥‥」
タケミヤに言われたからではないが、俺はもう一度神気を纏って立ち上がり、ハバキリを構えた。
その後も、何度も違う形でコントロールしてみたがタケミヤにダメージを与える事が出来ず、逆に俺はずっとタケミヤから攻撃を食らっていてボロボロとなっていて、もはや立っているのがやっとの状態であった。
「はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥」
「神気のコントロールを説いているのではない。お前自身がその神気の力を十分に出し切れていない。だから中途半端なのだと言っているのだ」
「はは‥‥‥」
確かに、それは言えているな。俺はまだ、自分の神力を百パーセント引き出しているとは言い難い。
「この程度の力なのか、帯刀翔馬。その程度の力で、よくガリアーナに挑もうなどと思ったな。これでは彼等も浮かばれまい」
「‥‥‥!」
何となしに壁の向こうの皆に視線を向けた。
同盟軍の兵士達は、もう終わりだと言って諦めきり、誰も俺の方を見ていなかった。王様達も、こんなボロボロな俺を見るに堪えられなくなり視線を泳がせていた。
俺は、彼等の希望を奪ってしまった。
こんな無様な俺に落胆し、この先待っている魔族達による強襲に怯えることになる。
こんな俺を信じ、期待して突き進んでいった結果、更に悪い方向へと進む事になってしまった。
俺のせいで、皆を傷つけてしまったのか。
希望も奪ってしまった。
俺の、せいで‥‥‥。
「「「「「諦めるな!」」」」」
「っ!?」
皆が絶望する中、ずっと見えない壁に体当たりをしていた五人がそれぞれ神器を持って壁の前に立っていた。ずっと体当たりをしていたのか、顔や体にたくさん痣を作り、血まで流していた。
「私はショーマさんと出会った事で、ずっと諦めていた冒険者になれました!ショーマさんと会わなかったら、私はずっとギルド職員のままでした!」
「あたしはずっと弱かった!最弱とまで言われたあたしを、ショーマが強くしてくれた!もしショーマがいなかったら、あたしは一生弱いままだったわ!」
「ご主人様が、ショーマ様がわたしを地獄のどん底から救ってくださいました!わたしに、皆を守る力を下さったのも、満たされる日々を下さったのも全てショーマ様のお陰です!ショーマ様はわたしに希望を与えてくださいました!」
「翔馬は言ったよな、私はお前に似ていると!似ていたから、傲慢になっていた私に間違いを教えてくれた!仲間を思いやる大切さを教えてくれた!」
「あなたは誰かの為に尽力し、たくさんの人を助けてくださいました!例えどんな強敵が現れようとも、翔馬さんは逃げる事無く立ち向かっていきました!あなたはとても勇敢な方です!」
五人がそれぞれ、俺への想いを口に出した。それを聞いた俺は、胸の奥が熱くなり、不思議と力が湧いて出てきた。
「『ウィンドインパクト』」
太陽の鏡を持ったアリシアさんが、得意の「ウィンドインパクト」を見えない壁に向けて放った。
「砕けろ!」
左手で緑の勾玉を握り、右手に持った豪炎魔銃でアリシアさんが放った所と同じ所に荷電粒子砲もどきを放った。
二つの攻撃を食らった壁にはヒビが入り、そこを雷切と黒曜を持ったメリーとフィアナが攻撃した。
「「帯刀流剣術・縦一文字」」
その瞬間、見えない壁は音を立てて砕け散った。砕けると同時に、五人は一斉に俺の下へと駆けつけた。
「ショーマさん!」
「ショーマ!」
「ショーマ様!」
「翔馬!」
「翔馬さん!」
彼女達に寄り添われ、その温もりに自然と張り詰めていた気持ちが解れていった。同時に、皆への申し訳なさも何処かへと消えていった。
「『ハイブリッドメガヒール』」
左手で十字架型の神器を握り、右手を天にかざして回復魔法を唱える美穂子。金色の光が全身を包み、皆の傷が全て治っていった。
「皆、すまない。情けない姿見せたな」
「相手がタケミヤ様では仕方がありません」
「わたし達も、あの壁に手を焼いてしまいました」
アリシアさんとメリーに支えられながら、俺は立ち上がった。今までもそうであったように。
「はは、やっぱ俺には、お前等がいないとダメみたいだな」
「それでいいと思います。ショーマさんだって決して万能ではありませんから」
「と言うか、ショーマがあたし達を頼らなかった時ってかなり少ないわよね」
「わたしは光栄です。お慕いするショーマ様のお力になれることが」
「私は翔馬のパートナーだ。好きなだけ頼ればいいさ」
「ああ」
俺には、こうして支えてくれる人達がいる。彼女達がいれば、どんな困難が待ち受けようとも、どんな強敵が現れようとも負ける気がしない。
俺達は、全員で一つなのだから。
その瞬間、俺の中でこれまでに無いくらいに強大な力が湧いて出てきて、青色の神気が更に輝きを増して解放された。
それに連動して、アリシアさんは緑色の、カナデは黄色の、メリーは赤色の、フィアナは紫色の神気を纏った。四人とも、これまで以上に神気が輝いていた。
「回復は任せて得ください。私だって翔馬さんのパートナーでしてよ」
エルクリスを握りしめた美穂子に身体にも、白色のオーラが漂いそれが徐々に輝きを増してきた。それは間違いなく、神気であった。
「悪いが、一対一では無理だからこっちは六人で挑ませてもらうぞ」
「好きにしろ。ダメとは言っておらん」
「では、お言葉に甘えさせてもらいます。『トルネードカッター』」
太陽の鏡を前に突き出したアリシアさんが、得意の風魔法でタケミヤを攻撃した。タケミヤはそれを叢雲の剣で両断するが、その表情は若干苦しそうであった。
「あたしだっているのよ!」
間髪入れず緑の勾玉の力を借りたカナデが、豪炎魔銃にありったけの魔力を注ぎ、金色が混ざった荷電粒子砲もどきを放った。それもタケミヤは両断したが、先程よりも苦しそうな顔をしていた。
その間に俺とメリーとフィアナは前に出て、三方向からタケミヤの方へと向かっていき、最初にメリーが攻撃を仕掛けた。
「やあっ!」
上段から赤雷の刀・雷切を振り下ろし、それをタケミヤは叢雲の剣でアッサリと防ぎ押し返そうとした。
それをメリーは、雷切の刃を引いて叢雲の剣をいなし、身体を回転させながらタケミヤの蟀谷に蹴りを入れた。
「よろけてる場合か!」
蹴りを食らって少しふらついているタケミヤの背後から、フィアナが冥界の剣・黒曜を横に振った。叢雲の剣で防がれたが、無茶な体制であった為踏ん張りがきかずタケミヤは吹っ飛ばされてしまった。
何とか態勢を立て直して着地した瞬間、俺は愛刀のハバキリにありったけの神気を注ぎ、上段から攻撃を繰り出した。
「帯刀流剣術・縦一文字」
「ぬっ!」
タケミヤはそれを叢雲の剣で防ごうとするが、おそらく無駄だ。これまでにないくらいに神気の力が増しているのだ、叢雲の剣と言えど防ぎきれない。
「そこまで!」
「!?」
聞き覚えのある声を聴き、それに気を取られてしまった俺はハバキリが叢雲の剣に触れる直前の所で攻撃を止めた。その声は、これまでも俺達の頭の中に唐突に現れ、神器を与えてくれたり、試練を与えたりしたあの声であった。
「応えてくれた。これでようやく全ての試練を終えた」
声は徐々に変わっていき、落ち着いた雰囲気の女性の声へと変わっていった。
その声を聞いた瞬間、タケミヤは即座に叢雲の剣を納めて、社に身体を向けて片膝を付いて首を垂れた。それは他の七人の眷属も同じであった。
その直後、社から白に金の刺繍が施された着物を着て、深緑色の唐衣を羽織った長い黒髪の女性が出てきた。腰には金色の太刀が提げられていた。社から出てきたという事は、あの人が。
「皆の前に姿を現すのは初めてだね。私がこの神界を統治する最高神、世界神。名は、マリアンヌ」
「せ、世界神様!」
俺達も急いで片膝を付いて、首を垂れた。後ろにいる同盟軍と各国の王様はもとより、デリウスやヴァルケリーを初めとした神様は額が地面に突きそうなくらいに頭を下げた。というより土下座に近かった。どうやら、皆の金縛りが解けたみたいだな。
「頭を上げなさい。それと、帯刀翔馬とその仲間達はここへ」
マリアンヌ様に手招きされて、俺はマリアンヌ様の前まで来た。右隣にはメリーとフィアナが、左隣にはアリシアさんとカナデと美穂子が並んだ。
「先ずはおめでとうと言うわね。ようやく、全ての試練を達成したのだから」
「全てって、最後の試練は結局お‥‥‥私一人では達成できませんでした」
「あら、タケミヤはあなた一人の試練だなんて一言も言っていないわよ」
「‥‥‥」
確かに言っていなかった。ていうか、扇子で口元を隠しているが絶対に笑っているだろ。位が高くても、やっぱりこの神様も他の神様と同じだった。
という事は、試練を受けていたのは俺だけじゃなかったのか。アリシアさん達も試されていたのだな。諦めることなくあの壁を壊して、俺と所へと駆けつけられるかという。
一息ついた後、マリアンヌ様は扇子を閉じて真っ直ぐ俺達を見据えていた。
「いろいろと疑問に思うところはあると思うけど、先ずはあなた達五つの御霊について話そうと思うわ」
「五つの、御霊?」
「ええ。帯刀翔馬を筆頭に、アリシア、カナデ、メリー、フィアナ、以上五人には私の御霊を宿した、次なる神の戦士となるべく生まれた者達だからです」
その言葉を聞いて、八人の眷属を除くこの場にいる全員がどよめきだした。
前から聞いていた五つの御霊。マリアンヌは、それについて語り出した。