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169 再びスワガロ大陸へ

連れて行くメイドは、あみだくじで決めました。私も翔馬の事をどうこう言う事が出来ませんね。

「さて、そろそろ準備は出来ているか?」


 桜と紅葉の手綱を握り、俺はアリシアさん達に再度準備できているかどうかを確認した。

 秋葉を新たに購入した翌日、俺達は再びスワガロ大陸へと向かうことになった。同行するメンバーは、お馴染みアリシアさんとカナデ、メリーとフィアナに加えて、神宮寺とユズルとミヤビが加わった計八人で行く事になった。


「つまりご主人様は、また何十日も帰って来られないとおっしゃるのですか?」

「酷いですわ!鬼畜です!」


 出発前に例の如くうちのメイド達が、「置いていくなんて酷いです」なんて言って動向を求めてきた。君達、本当に懲りないね。


「あの、ミユキさんとラヴィーさん、鬼畜ってそういう事なの?」


 秋葉は一体何を想像していたのか、メイド達が言う鬼畜の意味を知ってどう反応すればいいのか分からなくなっていた。

 というか、前々から思っていたが、俺は別に鬼畜をしている訳ではないぞ。単にお前等が一緒に連れてって欲しいから、そんな風に言って気を引こうとしているだけだろうが。

 キリカの家に行った時は、ヴィイチとラヴィーとかなり危ない所まできてしまったが、何とか関係を持たずに済んだ。ていうか、それは二人が仕込んだ媚薬のせいだから。


「第一、何でユズル様とミヤビ様なのですか?ミホコ様はまだ分かるとして」


 ほっぺをそんなに膨らませてもダメ。というかヴィイチは、前回一緒に行っただろ。前回行けなかった他の子に譲ってあげなさい。


「ショーマさんがスワガロ大陸にも渡っていることは、既にカリンヴィーラの耳に入っていると思います。もしかしたら、黒騎士を新たに送り込んで来ることも考えられます。だからこそ、ユズル様の力が必要なのです」


 だからアリシアさんは、ユズルにも一緒に来てほしいと国王陛下に進言し、ミヤビも同行させるという条件で了承を貰った。ユズルを同行させる時は、必ずと言っていい程ミヤビもセットで付いてくるな。もはや、ユズルの奥さんだな。


「悪いが、定員オーバーだ」

『ぶぅー!』


 豚になっても無駄だ。駄目なものは駄目だ。一応馬車は買い替えたが、それでもダメだ。


「鬼畜なんて聞いたから何をしたのかと思ったら、単に寂しいから連れてって欲しいだけじゃない。というか、何処の駄々っ子なんだよ。てか、確かこの世界では十五歳で成人するんだったよな」


 駄々をこねるメイド達を見て、秋葉が額に手を当てながら呆れていた。ちびっ子ならまだしも、十五歳以上の大人が駄々をこねるのはどうかと思うぞ。

 ユズルとミヤビなんて、何と言ったら良いのやらという顔で呆れていた。


「良いじゃないですか~!せっかく馬車が大きくなったのですから~!連れて行っても良いじゃない~!」

「せめて私達の中から一人!」

「何でもするから連れてけ!」

「放置プレイだけは勘弁です!」

「たまにはわたくしの事も可愛がってよ!」

「置いていかれる私たちの身にもなってください!」

「そうだそうだ!」

「夜伽でも何でも致しますから!」

「邪魔しないから一緒に行きたい!」


 お前等少しは落ち着け!一斉にいうから、誰が何を喋っているのか分からないじゃない!放置プレイなんて失礼な事を言っているのは、間違いなくミユキだろうけど。

 戦闘力皆無のエリエとエメラダだけは、明後日の方向を向いて黙っていた。怖い目に遭うのが嫌なのだろう。他の九人も、あれくらい聞き訳が良いと助かるのだけど。


「あの皆さん、そんなにぐいぐいといくのは奴隷としてどうなんですか?」

「いいの。ご主人様は私達に発言と行動の自由を与えているのですから、この程度で奴隷紋の呪詛が発動する事がありません」

「それ以前にご主人様、呪詛の使い方を忘れていますけど」

「それはそれで大問題な気が‥‥‥」


 ミユキの言う様に、奴隷であっても発言と行動の自由は保障してあげているけど、呪詛は使わないが度が過ぎれば流石に怒るからな。あとラヴィー、今ここでそれをバラす!?


「じゃ、じゃあ、もし夜中にご主人様が迫ってきたらどうする?あり得ない事かもしれないけど」


 あり得ないと思っているのなら聞くな。大体、秋葉の中の俺ってどんな感じなんだ。


「むしろレイプされたいくらいです」

「ご主人様になら抱かれたいです」

「わたくしもご主人様と熱い夜を過ごしたいです」

「せめて子種だけでも」

「ご主人様ならいいかも」


 年長者五人は、むしろ望んでいると堂々と公言しちゃっている。その五人というのは、ミユキとヴィイチとラヴィー、エリとローリエの事である。

 そんな五人の発言に、秋葉はこれ以上どういえばいいのか分からないと言った顔をしていた。


「この人達を、奴隷と呼ぶのは間違っている気がする」


 秋葉よ、それは言いっこなしで。


「だったら、僕達が推薦するのはどう?」

「そうね、ショーマ一人じゃ決められないみたいだし」

「私達で決めるのもありですわ。何なら私は、二人推薦いたしますわ」

『じゃあそれで!』

「おい!」


 それだと更に四人増えることになるじゃん!冗談じゃないぞ!


「このままでは埒が明かないし、それで良いじゃん」

「僕もそれでいいと思うよ。早く行った方が良いし」

「ううぅ‥‥‥」


 ミヤビとユズルに言いくるめられる形で、いつの間にかユズルとミヤビと神宮寺の三人が同行するメンバーを勝手に決める事になった。しかも、神宮寺に至っては二人も推薦するみたいだし。


「あたしはヴィイチさんが良いわ。可憐で清楚な感じの女の子に何気に憧れていたから」

「ありがとうございます、ミヤビ様」


 待て、ヴィイチは前回一緒に行っただろ!ミヤビも、せめて前回一緒に行けなかった人から選んであげなさい! 言っていないから、知っている訳がないけど。


「僕はエリさんを指名します。何かあった時に、暗殺術が使える人がいると何かと便利だから」

「感謝します」


 嬉しいのは分かったから、ユズルに片膝を付いて胸に手を当てるな。お前のご主人様は俺だろ。


「では私は、一人目はラヴィーさんですかな。武器を使わない格闘術を使える方がいらっしゃると、盗賊共を殺さずに拘束するのが可能ですから」

「お任せくださいませ」

「それともう一人は、ローリエさんを指名いたしますわ。私達が見落としてしまいそうな貴重な鉱石も、あなたがいれば手に入れられると思いますので」

「やった」


 神宮寺に指名されて、ラヴィーとローリエはともにガッツポーズをした。

 どういう訳か、見事に年長組ばかりが選ばれちゃったな。あと、ヴィイチとローリエは前回も連れて行ってあげたのだから、俺としてはチェンジを申し立てたい。

 が、俺が決められないから三人が決める事になったから、チェンジなんて言える訳がなかった。


「これはご主人様改め、お父様と呼んだ方が良いのかもしれませんな」

「秋葉君、それだけは絶対に許さないから」


 こんなデカイ娘を、しかもこんなにたくさん持った覚えなどありません。


「じゃ、決まったみたいだしさっさと準備して出発するわよ」

「何でミヤビが仕切っているの?」


 結局、ヴィイチとラヴィーとエリとローリエの四人も加わり、これまでにない大所帯でスワガロ大陸に渡ることとなった。新しく大きめの馬車を新調して、本当に良かった。良かったのか?

 まぁだけど、一応もう一台馬車を用意した方が良いだろう。四人にはそっちの方に乗ってもらおう。新しい馬車を買ったと言っても、十二人も乗られると流石に狭い。

 そんな訳で、もう一台の馬車も急遽用意して、桃と椿に繋げた。

 そんな俺の疑問をよそに、四人のメイド達の準備がすぐに終わり、俺達は馬車を引いてエトウス虎王国に設置したゲートを抜けた。


「なにこれ?」

「酷いな」


 ユズルとミヤビは、ゲートを抜けてすぐ周りの惨状に絶句していた。まぁ、ヴァルケリーが壊滅させた村跡にゲートを設置したから、初めて見る人は驚くよな。


「それでご主人様、次はどちらに向かわれるのですか?」

「そうだな、カナンマ王国に行こうと思う。その次に、クミナミ鳥王国に行ってからもう一度屋敷に戻る」


 現地についてすぐ、ラヴィー達におおよその予定を話した。

 ここからスワガロ大陸の中心に位置する大国、カナンマ王国に向けて出発するという子供でも分かりやすい内容であった。

 とは言え、道中には幾つか町も存在していて、その時にまた新たな黒騎士に遭遇しないか気が気でならなかった。何せ、俺と神宮寺で遭遇率は二倍に跳ね上がっているのだから。

 出発準備が整っている中、アリシアさんとメリーとヴィイチの三人が何か気になる事でもあったのか、町跡の中を散策して回っていた。


「もう少し待とうか。あの三人が何か見つけるかもしれないし、出発はその後でもいいか」


 気になる物が見つかったのなら、それは黒騎士に関する重要な手掛かりにもなり得るからいいし、別に急いでいる訳でもないから俺達は馬車の近くで三人が戻ってくるのを待っていた。

 皆もそれで納得してくれた。


「でも、これは確かに酷いですね」

「はい。ご主人様達のお話では、黒騎士の正体はカリンヴィーラによって悪魔に変えられた元女神みたいですし」

「女神様にこんな事をさせるなんて、何処まで卑劣なのでしょうか」


 この村跡の惨状を目の当たりにして、ラヴィーとエリもカリンヴィーラに対する怒りが込み上がっていた。


「それにしては、周りの環境が平和すぎるわね」

「確かに、一見すると魔族や黒騎士の脅威があるとは思えないな。ここだけが異様に見えてしまうくらいに」


 対して、ユズルとミヤビは村跡の外の環境をぼんやりと眺めていて、とても危機的状況にある様には見えないといった感じで言っていた。確かに、それは俺も思っていた。


「ご主人様、ちょっとよろしいでしょうか」


 そんな中、村跡を散策して回っていたヴィイチが何か気になる物を見つけてきたみたいだ。


「どうした?」


 ヴィイチの所に駆け寄ると、そこは村の中心に位置する場所で、ヴィイチが指差す先には粉々に砕かれた大小さまざまな石の破片と、注連縄(しめなわ)が転がっていた。


「なんだ、これ?」

「散策している時に見つけたのです。建物や畑が焼かれて酷い状態になっている中、これだけが何だか真新しかったので少し気になりました」

「確かにな」


 周りがたった一日で何百年も経ったみたいに廃れているのに、この石の欠片と注連縄だけが妙に新しく、最近壊された物である事が容易に想像つくくらいであった。


「壊れ具合から察するに、何か固い物で力一杯正面を突いたという感じだな。おそらく、槍だろうな」


 剣や棍棒の可能性もなくはないが、棍棒ではこんな風に破壊できないし、剣でわざわざ正面を突いて破壊しようという人はまずいない。どちらも、突くよりも上から叩き付けるか切るかした方が手っ取り早いからだ。


「ここに一体何があったって言うんだ?」

「おそらく、石碑だと思います」

「石碑?」

「はい。奴隷になる前に本で読んだ事がありました。スワガロ大陸を守護する主神様は、上級神様ほどの力を持っていなかった為、この地を守る神々の力を高めてくれる石碑を大陸中に何百ヶ所も作ったというのです」

「へぇ」


 じゃあ、この石碑には特別な力が宿っていて、この大陸を守護している六つの国の六人の主神達に力を与えていたのだな。

 そんなありがたい石碑を破壊するという事は、この大陸を守護している主神への力の供給を断たせようと企んでいる奴がいて、ソイツがこの石碑を破壊した可能性が高い。

 この町を破壊したヴァルケリーは剣を使うそうだから、ヴァルケリーが可能性はかなり低いと思う。そもそも、一度壊滅させた町に再び訪れてこれを破壊しに来るなんて無駄な事をするとは考えらえない。それだったら、この町を破壊すると同時に石碑も一緒に破壊した方がずっと効率が良い。

 俺達がこの地を一旦離れた後、誰かがここにきて石碑を破壊したと考えられる。一体誰が、何の目的でこの石碑を破壊したというのだろうか?この大陸の六人の主神の力を削がせて、一体何の得があるというのだろうか?

 槍を使うという点だけを取れば、槍の女神のソルエルティが一番可能性としては高いが、憶測だけで語るのは危険すぎる。


「とりあえず、この事をアリシアさんに報告した方が良いだろう。アリシアさんなら、この石碑の事を詳しく知ってそうだし、彼女なら手がかりを掴めるかもしれない」

「分かりました」


 散策を終えたヴィイチと一緒に、俺は皆が待っている馬車まで戻っていった。

 アリシアさんとメリーも、丁度散策を終えたみたいで馬車が止めてある所に戻っていた。


「皆揃ったし、そろそろ出発するか。馬車は二台あるし、六人ずつ乗るか」

「どのように分けますか?」

「そうだな、俺達は桜と紅葉が引く馬車に乗って、メイド四人には桃と椿が引く馬車に乗ってもらうか」

「「「「えぇ~」」」」


 えぇ~、じゃありません。そもそも君達は、駄々をこねるから仕方なく連れて行ってあげているのだから、そのくらい我慢しなさい。


《なんだかんだ言いつつも、ちゃんと連れて行ってあげるのだから優しいじゃん》


 そんなんじゃない。


「じゃあ、ミホコにはショーマ達が乗る馬車の方に乗ってもらうか。勇者がいると、向うから災難が訪れてきそうだからせめて違い馬車に乗って欲しいわ」

「そこまで言うか」


 ミヤビにまで疫病神扱いされるなんて、何だか腹が立ってきたが言い返す事も出来ないのも事実。それでもやっぱり腹が立った。


「まぁまぁ、何かあったら僕も協力するから、抑えてください」


 ユズルに宥められて俺達は、少し納得いかなかったがとりあえず桜と紅葉が引く馬車へと乗った。

結果、桜と紅葉が引く馬車には、俺、アリシアさん、カナデ、フィアナ、メリー、神宮寺の計六人が乗る事になった。

 桃と椿が引く馬車には、ユズル、ミヤビ、ヴィイチ、ラヴィー、ローリエ、エリの計六人が乗る事になった。


「この大陸に来てから私と帯刀君が、何だか疫病神扱いされて少し癇に障りますわね」

「それは俺も思った」


 馬車に揺られながら俺と神宮寺は、ミヤビが言っていた言葉に納得がいかずにそんな事を言っていた。


「そもそも何ですか。私達は災難を呼ぶのではなく、運がよくなるという風に窺っている筈です」

「俺もデリウスから聞いた。確かに魔物の群れに良く遭遇するが、出発して早々遭遇するなんて事がある訳がないだろ」

「まったくですわ。そんな災難なんて」

「ご主人様、森から魔物の大群がこちらに向かってきています。スタンピードです」

「「‥‥‥‥‥‥」」


 どうしていつもこうなるのだろうか。やはり俺と神宮寺って、疫病神なのだろうか?

 結局俺達、前を走っていたグループでスタンピードは食い止めたが、桃と椿が引く馬車からミヤビが哀れみの目で見られていたのを感じた。そんな目で見ないで欲しい。

 たくさん素材を手に入れる事が出来たと、うちのパーティーメンバーは災難に遭遇しても全く気にしていなかったが、俺と神宮寺は何だか申し訳ない気持ちで一杯になりながら先に進む事になった。



仕事が忙しい時期に入りましたので、投稿が統一できなくなりましたが、今後ともよろしくお願いします。


「妖しの魔鏡」と「鬼嶋の鬼」も是非読んでみて下さい。

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