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16 デート

また少し長めに書いてしまいました。

 オリハルコンゴーレム討伐から一週間後。

 俺はその時の反省を活かし、その翌日からトレーニングを再開した。

 この世界に来てから身体能力が上昇した為、前の世界よりもハードなトレーニングを行っていたが、身体は当然のごとく順応していた。そのトレーニングに、現在は座禅などの精神統一が加わり、MPの向上もメニューに加えた。


「ふぅ‥‥‥よし、そんじゃ準備するか」


 トレーニングを終えた翔馬は、風呂に入り、オリエのギルドへ向かう為に準備をしていた。

 いつも通りハバキリを腰に差し、今回は腰に更に脇差を一本、更に右側の腰にナイフを一本提げた。

 今回装備した脇差とナイフは、デリウス指導の下俺が一から作り上げた初めての武器であった。ちゃんとした刀と剣は、もう少し上達してからと言う事なので、まずはナイフや脇差、更には包丁までも自分で作ったのだ。ちなみに、使用した鋼材はアイアンロブスターの甲羅である。

 火竜の剣は、もう少し魔力のコントロールがうまく出来る様になるまで、ヤンシェから貰ったアイテムボックスの中に入れてある。


「それにしても、重量無限でAランクって、それならSランクのアイテムボックスにはどんな機能が付いてんだ?」


《食料等の鮮度を止める事が出来るみたいだよ。例えば、熱々のカレーをお鍋ごとそのアイテムボックスに入れたとするでしょ。一ヵ月、はたまた一年後にそのカレー鍋を出すとあら不思議、カレーは腐る事も無く熱々のままなのよ。つまり、入れた物の時間を止める事が出来るのよ》


「でもそれって、かなり高いんじゃない?」


《そうね。金貨五十枚出さないと絶対に買えない超高級品のアイテムだからね》


「マジかよ‥‥‥」


 金貨一枚で百万円だから、五千万円もすると言うのかよ。


《まっ、今の君なら買えなくもないけどね》


「だからって、無駄遣いする訳にもいかねぇだろ」


 一週間前のオリハルコンゴーレム討伐の際に得た報酬は、金貨五百六十枚、倒したオリハルコンゴーレムの右腕一本、更に赤色になった自身のギルドカードであった。

 ヤンシェの計らいにより、無事に赤ランクの冒険者となったが、その五日後に巨獣化した電磁ムカデの討伐で瞬く間に銀ランクへと昇格したのだ。アリシアさん曰く、快挙だそうだ。


《せっかく最短で銀ランクに昇格したのだから、もっと良いし装備を身に着けないと示しがつかないわよ》


「ハバキリと火竜の剣があれば十分だろ。それ以上の贅沢は流石に良くないだろ」


《別に贅沢しろとは言っていないわ。ただ、ランクが上がれば危険な依頼が入り込んでくる事が多いわ。戦う敵に合わせて、武器を調達するのは一流の冒険者にとっては常識。何より、そう言う武器はあるに越した事は無いわ》


「なるほど」


 ちなみに、今回身に着けている装備は、

 神刀・ハバキリ  ランク:S

 脇差       ランク:B

 サバイバルナイフ ランク:C

 女神の靴     ランク:A

 アイテムボックス ランク:A

 と言った感じだ。


《それでも、武器はたくさんあった方が良いし、何かしらの付与が付いた服や装備だってまだたくさんある。自分の視界に入るものばかりが、世界の全てじゃないわよ》


 確かに、今後の事を考えると武器は多い方が良いし、装備だっていずれ必要になる。幸いにも、大きな依頼をこなしたばかりの為、お金はたんまりある。自分で作るばかりではなく、良さそうな武器や装備があったら購入するのも良いかもしれないな。


「まぁ、その辺も考えながらオリエへと向かうか」


 銀ランクになると、掲示板に掲示されている依頼よりも、直接依頼を受ける事の方が多い。そもそも、掲示板には銀ランク以上の依頼はあまり貼られていない。

 それでも、何かしらの依頼は受けておこうと思う。そういった装備をきちんと揃えられるように。あと、いずれ家を買う時にもいろいろと必要だと思う。

 そんな事を考えていると


「何だ?」


 オリエの町へ向かう道中、何やらゴロツキ風の男八人が道を塞いでおり、俺を見つけると口端を吊り上げながらゆっくりこちらに近づいてきた。


「よぉにいちゃん。何やら金ぴかの剣を持っているみてぇだが、ちょいと俺達に貸してくれねぇか?ついでに金もいくらか出してくんねぇか?」


 その言葉だけで、こいつ等が何なのかすぐに分かった。

 こいつ等盗賊だ。

 そんな男達を無視して歩みを速めたが、男達はそれを許さなかった。


「無視すんなよ。そのお高そうな剣と有り金全部よこしてくれるだけでいいんだよ」


 もはや隠すことなく、ハバキリと有り金を要求してきた。それと同時に、先程要求してきた男がハバキリに触れようと手を伸ばしてきた。ここまでされると、流石の俺も我慢の限界であった。


「いい加減にしろ」


 伸ばしてきた男の腕を掴み、握力だけでその男の手首の骨を砕いた。


「あああああああああああああああああぁ!」


 骨を砕かれ、苦痛に歪んだ顔で悲鳴を上げる男。男の腕はかなり太かったが、トレーニングによって剛力スキルのランクがAに上がった俺の力の方が上だった。


「「「「「「「テメェ!」」」」」」」


 俺を取り囲んでいた他の男達が、その光景に逆上し剣を抜いて襲い掛かってきた。

 斬撃系の武器しか持っていない俺は、やむなく掴んでいる男をハンマー代わりにして振り回し、周りにいた男達の頭を狙った。

 たったの一回転で、残りの七人の男達は呆気なく気絶し、腕を掴まれた男は最初とは一変して恐怖に歪んでいた。


「た、頼む!いい、命だけは!」


 先程の威勢はすっかり無くなり、命乞いまでしてきた。無論、殺すつもりは初めからなかったが、このままここへ置いて行く訳にもいかなかった。

 とは言え、装備に乏しい俺は彼等を拘束する道具は何も持っていなかった。

 仕方なく、気絶した男共から長めのロープを引っ張り出し、それで八人全員を縛り上げた。ちょうどその頃には、気絶していた七人全員が目を覚まし、ロープで縛られている現状に驚いていた。


「目を覚ましてくれたならありがたい。全員をこのままオリエの憲兵に引き渡す。変な真似したら、その場でテメェ等の首を切り落とすからな」


 無論、殺すつもりは無かったが、そのくらいの脅しをしても良いだろうと言った。


《あぁ、殺しても問題ないわよ。だってこいつ等、かなり高額の懸賞金が掛けられた盗賊だから、憲兵をここに連れてきて証人になってもらえれば》


 だから殺すつもりは無いって。ただ脅しているだけだって。女神様ともあろうお方が、そんな物騒な事を言わない。

 そんなデリウスの言葉を流し、俺は八人の盗賊をロープで先導し、オリエの町の門番をしている人に事情を話し、憲兵を呼んでもらった。あとはそちらで処理し、後日ギルドから謝礼金が手渡されるそうだ。


          ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「なんてことがあってな・・・・・・」

「あはは、それは災難でしたね」


 今朝の出来事を、アリシアに話していた。

 今俺達が居るのは、アリシアさんお勧めのオシャレなカフェのオープンテラスであった。

 何故ここに居るのかと言うと、今回俺にお願いしようと思っていた直接依頼が、最近この辺りでソロの冒険者を襲撃し、武器や装備、金目の物を強奪する盗賊集団の捕縛、若しくは討伐であった。

 それが偶然にも、町に向かう途中で捕縛した八人の男達がその盗賊集団だったらしく、それをギルドに話し、憲兵に確認を取った後で報酬と報奨金を貰いそれで終わりとなった。

 アリシア曰く、八人とも赤ランクの冒険者でも倒す事が出来ない程の実力者だったのだが、俺が瞬殺したと話したらかなり驚かれた。

 そんな訳で、着いて早々受ける依頼が無くなってしまい、この後どうしようと考えていた所にアリシアさんがちょうど午後からオフだと言う事なので、一緒に食事やショッピングでもしないかと誘われたのである。いわゆるデートと言うやつである。


「今回の事でスキルやMPを上げる事ばかりではなく、装備や道具も充実させないといけないなと思いましたよ」

「ショーマさん、銀ランクと言っても十日前までは白ランクどころか、この世界に来たばかりの初心者だったものね」


 オリハルコンゴーレム討伐後、アリシアさんと一緒に食事に行った時、自分とデリウスの事を打ち明けた為、彼女も俺の事情は把握していた。


「そうですね。装備や道具を揃えるのも良いですけど、その場合一番適した方法は、魔法、若しくは、魔法銃を使うのが良いでしょう」

「魔法銃?」


 聞き慣れない言葉に、俺はコーヒーを受け皿に置いた後首を傾げた。


「魔力を弾丸代わりに打ち込む武器で、強力な魔物でも一撃で倒してしまう程の殺傷力があるますが、人間や人型種族が食らっても気絶させるだけで済ませる魔法道具の一つです。普通の銃と違って、魔物にも有効なのですが、その分たくさんの魔力を消費するので魔法を専門にしている人達の専用武器になりつつありますけど」

「へぇ、この世界にも銃があるのですか」


 尤も、魔法使い専用の武器になりつつあるみたいだけど。


「魔法職の人達に限らず、MP値の高い人も扱う事もあります。また、対魔物用にではなく山賊や盗賊の捕縛用に持っている人もいます」

「だとしても、俺に銃の扱いはイマイチで」

「でしたら、本格的に魔法を覚えてみてはどうでしょう。ショーマさん、Fランクとは言え火魔法が使えるのでしょ」

「えぇまぁ、一応初心者用のファイアショットとライトくらいは」


 とりあえず簡単な魔法を使ってはみたが、それだけではランクは上がらず、他のスキルが徐々に上がる中、火魔法のランクだけが未だにFのままなのだ。実践してはいるのだが、どうにもうまくいかない。


「でしたら、私が指導いたしましょうか。これでも私、風魔法と聖魔法が得意なので。属性は違いますけど、本質はどの属性も同じなので大丈夫です」

「それは助かります」


 以前鑑定眼で見ていたから知っていたが、アリシアさんの魔法スキルのランクは俺よりも上。そんな彼女からアドバイスを受けられるのは、とてもありがたかった。

 そんな彼女に連れられて、俺達は町の外の近くにある小さな森の中へと入った。何でもこの森は、アリシアが魔法の特訓の為に度々訪れている場所だという。


「まず、ショーマさんがどんな魔法を使ってみたいのかを、頭の中でイメージしてみてください」

「イメージ、ですか?」

「はい。おそらくショーマさんは、以前購入された教本通りに実行されたのでしょう。確かに、魔力をコントロールするにはいいかもしれませんが、基本的に魔法と言うのはその人のイメージによって構築されているものなのです。その為、基本魔法や聖魔法、それに呪魔法以外は同じ魔法を使える人はあまりいないのです。被ることはありますけど」

「なるほど」


 つまり、術者の想像力が重要だと言うのか。


「じゃあ、聖魔法と呪魔法は同じ術を使える人がたくさんいるのですか?」

「はい。聖魔法と言うのは、回復がメインの魔法なので、協会の聖女や、私みたいなエルフや妖精族が最も得意としている魔法なのです。半面、攻撃魔法があまり存在しません」

「へぇ」


 そう言えば、勇者召喚に関わった女神の中にも聖の女神が居たっけな。


《名前はイリューシャ。聖女って感じの超絶美女で、しかもおっぱいもすごく大きいの》


 そこまで聞いてない。


「次に呪魔法ですが、呪いと言う言葉で忌避されがちですが、決して遠くの人に呪いを掛けるとかそう言った魔法ではありません。相手を眠らせたり、相手の精神を操作したり、幻覚を見せると言った不意打ちや隠密作業専門の魔法です。ただ、これらの魔法はいずれも自分の最大MP値が相手より高くないと全く効果がないので、こちらも戦闘には適さない魔法ですね」


 要は、非戦闘魔法だから決まった呪文ばかりという訳か。


「それ以外の属性は、攻撃が得意な属性と、防御が得意な属性があります。まず、火と雷と水は基本的に攻撃専門の属性ですね。逆に、風と氷と土が防御専門の属性となっています。もちろん、攻撃魔法を構築する事も出来ますし、最初に言った三つのうち雷と水なら防御系の魔法も構築できます」

「つまり、俺の場合はもっと攻撃的な魔法を想像すればいいのか?」


 火属性の魔法と言うのは、攻撃力においては右に出る属性は無いのだが、反面防御がかなり低く防御魔法を構築する事が全く出来ない属性。

 それと同じように、土属性の魔法も防御力においては右に出る属性が無い反面、攻撃力が低く攻撃にあまり適さないそうだ。


「そうですね。今日は一先ず火魔法のバリエーションを増やす事を覚えた方が良いでしょう」

「その言い草だと、他の属性も覚えられるみたいだな」

「できます。ただ、それにはまず今覚えている属性魔法を最低でも五つ構築しないといけません」


 つまり、今から五つ以上自分オリジナルの火魔法を構築しないといけないと言うのか。何だか大変だ。

そんな感じで、いつの間にかデートから魔法の指導に変わってしまった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 最高ランクの武器、防具持ちならともかく武器以外なにもしてないって生き急いでいるもしくは自殺志願者かと思うべ
2020/01/31 22:34 退会済み
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