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134 トウラン武道祭 開幕

しばらくはトウラン武道祭についての執筆が続きます。

「さて、使う武器はこんなもんで良いか」


 トウラン武道祭当日の朝。

 俺は腰に蒼龍と青鉄と美鉄の三振りを腰に差し、猛虎の籠手と聖者の十字架とダガーを装備して、最後にチビッ子メイド達がくれた青色いローブを纏ってから部屋を出た。


《気合入っているわね。君の出番はまだ七日も先なのに》


「気持ちの問題だ」


 その間は他の選手の観戦がメインだが、金ランク冒険者としてあまり安っぽい装備を身に着ける訳にはいかない。


「神力やハバキリを使う程の戦いでもないが、生半可な気持ちで挑むつもりもない」


 特に俺が参加する金ランク部門は、使用する武器は自由、魔法の使用も自由と言った何でもありのガチンコ勝負だからな。本気の彼等を相手に中途半端な気持ちでいては、レベルでは大幅に勝っていても油断したら負けてしまう。


《そうね。いろいろ制限が付いた状態だと、フィアナやメリーに負けてしまうものね》


「ああ」


 力ではフィアナには、スピードではメリーには絶対に勝てないし、勝ったことが無い。あの二人でこの有様だから、他の金ランク冒険者でも同じだろう。

 俺の試合はまだ先かもしれないが、それでも金ランク冒険者として恥じない格好をしないとな。まぁ、手の内を明かさないようにローブは纏うがな。


「「「「「「「「「おはようございます、ご主人様」」」」」」」」」

「「「「「「おはようございます、旦那様」」」」」」

「おう」


 広間に行くと、既にみんなが席に着いていて丁度俺待ちであった。大会に参加するメンツは、俺と同じ様にフル装備の上にローブを纏っていた。ローブの色もそれぞれ違っていて、アリシアさんは緑色の、カナデは黄色の、メリーは赤色の、フィアナは紫色のローブを纏っていた。

 挨拶をしてくれたメイドと執事は、俺に挨拶を済ませるといつもの調子ですぐに席に着いた。

 ちなみに今日の休暇を獲得したのは、アリアとミリエラとエリエの三人であった。なのに三人とも、私服ではなくメイド服を着ていた。一体なぜ?

 まぁそれは今置いておくとして、早く食べないと開会式が始まる。俺達はすぐに朝食を食べて、メイドと執事に見送られながら会場となる闘技場へと歩いて行った。

 何故歩いて行ったのかというと、理由は至って単純であった。人が多いんだよ!通路全体を埋め尽くすくらいに!

 まだ早朝六時だというのに、何なんだよこの人の多さは!


「スゲェ‥‥‥人酔いしそう」

「勇者様ともあろうお方が何を言っているのですか」

「他国からたくさんの人達が観戦に来ますから、いつもこんな感じなのだそうです。八百屋のおばちゃんが言っていました」


 アリシアさんとエリエの話を聞いて、俺は益々げんなりとしてしまう。貴族は何日か前に闘技場の近くの高級宿を取って、すぐに入れるようにしていた。

 王族達はゲートを使えば一瞬だし、そもそも王様達の通行の邪魔をしたら物理的に首が飛びかねないしな。‥‥‥嘘です、厳罰程度で済みます。

 とまぁ、そんな人ごみの中を俺達は何とかかい潜り、メイン会場となる闘技場へとたどり着いた。

 会場となる闘技場は、一言で言うのならコロッセオを近代的にさせたような外観で、金ランク昇格の為の大会が行われた闘技場よりも大きかった。

 長蛇の列を一時間くらい並び、俺達は指定された席に座った。ん?王様達に挨拶をしなくていいかって。俺もそこは気になったから聞いたけど、どうやらその必要はないみたい。

 ある王様と、一部の常識のない貴族が選手に賄賂を渡して、わざと負けるように要求した事件が起こったので、以来選手と王族と貴族は互いに大会中に会うことが禁止されたのだ。そしてそれは今回、金ランク冒険者とて例外ではない。

 なので、気兼ねなく俺達は大会を楽しむ事が出来るのだ。


「ショーマさん、そろそろ始まります」

「おう」


 火魔法を使った花火が打ち上がると、レイハルト公爵の進行のもと開会式が進み、最後に闘技場の真ん中に各国の王様が出てきて皆に開会の挨拶をした。

 配置は、真ん中にトウラン国王陛下が立ち、右にはホクゴ獣王陛下とザイレン教皇猊下に加えて、今回からノースティル国王陛下が立っていた。

 左側にはナンゴウ女王陛下とクフォト国王陛下に加えて、新たにサウスティス女王陛下が立っていた。サウスティス女王陛下は、水着ではなくちゃんとしたドレスを着て出席していた。当たり前か。

 クフォト国王は何と言うか、あの有名な独裁者に似た顔立ちだな。というか生き写しじゃねぇと思ってしまった。流石にこういう公の場では身勝手な発言は控え、ちゃんとした祝辞の挨拶を送っていた。

 まぁそれはいいとして、各国の代表の挨拶を終えて十日間に及ぶ大会は始まった。

 初日の今回は、槌部門と剣と槍と拳闘と斧部門の一回戦が開催される。

 全ての競技が相手を倒すものだと思っていたら、実はそうでもなかった。

 槌部門のルールは、一言で言うのなら目の前にある巨大な岩をどれだけ多く砕けるかを競う競技だ。こういった競技は二日かけて行われ、例年であれば一日開けて違う部門の競技が開催せれるそうだ。

 今回は金ランク部門があるから、一日開ける事無く翌日に次の競技が始まるみたいだけど。

 五日目以降になると、空いた闘技場で一般参加型のトーナメントも行われ、この部門には黒以上の冒険者は自由に参加できる。メインの部門に比べたら、得られる賞金の金額はぐっと少なくなるが、それでも貴重な収入源なので多くの冒険者が参加をする。

 ただし、相手を倒す競技は護りの結界が一人につき一日一回しか作用しないので、各競技別々の闘技場で試合が行われ決勝戦のみこの闘技場で行われるそうだ。

 その為、開会式を終えた直後にメリーは席を離れて剣術部門の一回戦が行われる会場へと向かった。


「応援に行かなくて良いの?」

「剣術部門は尤も参加人数が多いから、そんなすぐにメリーの出番は来ないだろう」

「それに、メリーさんなら一回戦くらい楽勝です」

「それよりも、いろんな所を見て回った方が良いんじゃない。折角のお祭りだし」


 カナデは少々腑に落ちない感じであったが、俺達は誰もメリーが負けるかもとは思っていなかった。

 それに、槌部門の試合がどんなものかちょっと興味もあったし。アリアたちにはそれぞれ自由に行動しても良いと言ってあるし、気になる試合があったらそっちに行っても良いと言っておいた。


「おっ、選手達が入ってきた」


 大きな槌を持った無骨そうな男達が闘技場に入って来た瞬間、会場の熱気が最高潮に達した。

 岩を出す土魔法使いが出てきて、選手たちに向かって直径二メートル以上の大きな岩を飛ばしていった。その岩を、大槌を持った選手たちが砕いていった。どれだけ多く岩を砕けるのかを競う競技だが、会場は大いに盛り上がっていた。

 まっ、こういう試合も新鮮だから良いのだけど。




「はぁ、見ててむさ苦しい試合だった」

「分かる。あたしもあぁ言うのは趣味じゃない」


 俺とカナデがややテンションを下げている中、アリシアさんとフィアナは屋台から串焼きを買って頬張っていた。三人の奴隷は、それぞれ気になる部門の試合を見に行った。

 槌部門なのだが、大きな岩の塊を大槌で次々に砕く様は確かに盛り上がるが、俺はあぁ言う男達の試合を見るのはちょっと苦手であった。

 だって、出場している選手の大半が筋骨隆々のゴリマッチョばかりだもん。マッチョが苦手な俺には厳しかったぞ。


「なぁアリシアさん、他に何か気になる試合はあるか?」

「そうですね。グルガさんが参加する拳闘部門と、シンリアさんが参加する槍術部門も捨てがたいですね」

「あの二人も参加してたんだ」


 グルガとシンリアと言えば、ユズルを崇拝している鬱陶しい二人も参加するのか。

 更に聞くとユズルのパーティーからは、剣術部門にミヤビが、魔法部門にアメリアが、射撃部門にスーザンが出場するらしい。ユウタとタキオは今回不参加らしい。

 そう言えば、エリエとアリアは槍術部門の方に行ってくるって言っていたな。後でシンリアの結果でも聞いておくか。

 一方ミリエラは、屋台に並べられているここでしか食べられない食べ物を食べ歩いて行くそうだ。武道祭なのだから試合を見に行ってきなさい。


「だったらあたし、拳闘部門の方を見て来るね。お兄ちゃんのパーティーメンバーが出るみたいだし、お兄ちゃんとも合流したいし」

「私はもう少し屋台の食べ物を堪能したい」

「カナデは構わないけど、フィアナまでなに言ってんだ」


 まぁ、屋台を回るのもお祭りの醍醐味だから止めたりはしないけど、少しは試合も見てあげようよ。

まぁ、何をするのかは自由だしとりあえず二人を見送った後、俺は残ったアリシアさんに何処に行くのかを聞く事にした。


「そうですね。折角の機会ですので、ショーマさんと一緒に回ろうと思います」

「おぉ、そうか‥‥‥」


 そっと手を握るアリシアさんに、俺は思わずドキッとしてしまった。

 考えてみれば、行商以外でアリシアさんと二人きりになる機会ってあまりないよな。この世界に来て初めて俺の仲間になってくれたのは彼女だから、もう少し相手してあげないといけないよな。


「ってもなぁ、他に興味がある競技と言ったら‥‥‥」

「剣術部門ですか」

「‥‥‥はい」


 メリーなら大丈夫だと思うし、心配もしていない。だが、やはりどうしても剣術部門の方が気になってしまう。剣術部門は、トウラン武道祭の目玉とも言っても過言でもないくらいに人気の高い競技で、出場選手が最も多い競技だ。どんな選手が参加しているのか、実はちょっと興味があったりする。


「ショーマさんはもう少し、自分に正直になった方が良いですよ」

「善処します」


 そうして俺は、アリシアさんと腕を組んで剣術部門が行われている闘技場へと歩いて行った。

 会場に着くと、立って観戦している人がいるくらいに会場にはたくさんの人でごった返していた。


「スゲェ‥‥‥」

「このお祭りの目玉競技ですから、今日は一回戦のみとはいえ注目選手の試合は見ておきたいのだと思います」

「注目選手ねぇ‥‥‥」


 メリーとミヤビ以外に観客のお目当ては、ナンゴウ女王陛下が無理を言って参加してもらう事になったエフィアと、クフォト王国に駐在している勇者の一人の日比島なのだそうだ。というか、日比島のやつも参加していたのかよ。


「魔法部門でもサキョウさんが、射撃部門ではマルモトさんも参加されるみたいです」

「大丈夫なのか?」


 あの三人は加護とスキルに頼り切った戦いをするから、一回戦と二回戦はどうにかできるかもしれないが正直言って決勝進出は無理だと思う。


《まぁ、確かに決勝進出は無理かもしれないけど、あの三人もあれから多少強くなったみたいだから見てあげようよ》


 まぁ、デリウスが言うのなら見てやらなくもないが。

 そんな事を考えていると、会場の熱気が更に上昇しているのが分かった。よく見ると、俺から貰ったレイピアを腰に提げたミヤビが入場していた。大会が終わったら晴れて金ランクに昇格するのだから、観客が注目するのも分からなくもない。

 ステータスを確認してみたところ、エルト大陸に渡ろうとした時よりも10以上レベルが上昇していた。ユズルとパートナーの誓いを結んで以来、普通よりもレベルの上昇が早くなっているな。これは相当強くなっているな。

 その証拠に、審判が試合開始の合図を出した瞬間に相手の胸をレイピアで一突きにして倒してしまった。

 一瞬で決着がついたにも拘らず、観客たちは大いに盛り上がった。


「前回でもユズル様が、一瞬で相手を倒したみたいです。決勝戦でも相手を瞬殺してしまったと聞きました」

「まぁ、ミヤビはそのユズルのパーティーのサブリーダーだから、注目高くなるか」


 その後は、名前も知らない選手がそれぞれ善戦していた。後で知ったが、メリーとエフィアは俺達が来る前に早々に一回戦を勝ち進んで行ったそうだ。

 そして最後に、前回と違う剣を持った日比島が入場した。


「あの時よりもだいぶ顔付がマシになってきているな」

「はい。以前は傲慢な感じがしましたが、今は刺々しい雰囲気を出しているように感じます」


 確かに、あの時よりもだいぶ成長しているのが見て伺えた。


======================


 名前:日比島武治     年齢:十八

 種族:人間        性別:男

 レベル:58

 MP値:10800

 スキル:剣術A   神速A   風魔法A   柔術B

     蹴り技C   口説き術D

 その他:剣の女神の加護


======================


 確かにレベルは当たっているし、スキルも上がっている。だが、称号は未だに無し。一回戦くらいは何とかなると思うけど、大丈夫なのか?

 事実、一回戦は難なく勝ち進も事が出来たみたいだ。思い切りアラエラーの加護に頼り切っているがな。


《君も見習った方が良いわ。アラエラーから貰った加護の力を上手に引き出しているわ》


 今まで使おうとしなかった俺も悪いけど、頼りきりというのも良くないと思う。まぁ、今回はその加護の力を使っても勝てるかどうか微妙な所だけど、それでも使わない訳にもいかない。

 デリウスの指示で要領がつかめて、何時でも使えるようになった。

 本来ならもっと早くから使える様にならないとダメだけど、俺の場合は加護ではなく地球で培った技術で戦ってきたからな。


《悪いとは言わないけど、この先の事を考えると使える様にならないと厳しいわよ》


 分かっている。

 魔王討伐の為にも、デリウスの加護も自身の神力も上手に使える様にならないと厳しいだろうな。

 だけど、その為には解決しないといけない問題がまだある。


「ショーマさん。気持ちは分かりますけど、今は楽しみましょう。折角のトウラン武道祭なのですから」

「あぁ、ワリィ」


 ついつい考え込んでしまうな。

 そうだな。今は四年に一度のトウラン武道祭が行われているのだ、楽しまないとダメだな。

 その後俺とアリシアさんは、剣術部門の一回戦を最後まで観戦した。



「妖しの魔鏡」と「鬼嶋の鬼」も是非読んでみて下さい。

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