1 勇者召喚と刀の女神
初めて投稿しました。未熟者ですが、よろしくお願いします。
「‥‥‥すまんが、もう一回言ってくれないか」
「ではもう一度。帯刀翔馬、君は勇者として異世界ハルブヴィーゲに召喚されることになりました。ハルブヴィーゲでは、恐ろしい魔王が恐怖へと陥れようとしています。あなたの役目は、勇者として魔王を倒し、ハルブヴィーゲに平和をもたらしてほしいのです」
「‥‥‥‥‥‥」
正直言って、全く意味が分からなかった。
俺、帯刀翔馬(17)は、何処にでもいる平々凡々な高校2年生。人と違う所があるとしたら、家が剣術道場を営んでおり剣の腕が大人顔負けという事だろう。
そんな俺は今、何もない真っ暗な空間の中におり、目の前には整った顔立ちをした膝裏まである銀髪ウェーブの美女が立っていた。腰には、かなり業物な刀が提げられていたが。歳は俺より五つ歳上の、雰囲気だけは凛とした大人の女性という感じであった。
そんな彼女が言うには、俺は勇者として異世界に召喚されることになったそうだ。その世界にいる魔王を倒して欲しいと言うのだが‥‥‥。
「あんた頭おかしいんじゃね」
「失敬な!それが刀の女神たるデリウス様に対する態度なの!」
「ハイハイ。そういう設定ですね」
「設定じゃない!」
目の前の女性、自称刀の女神に対して氷の様に冷めた視線を向けた。
勇者として異世界に召喚される。そんな漫画やラノベの様な展開に対して、はいそうですかと常識ある一般人がない。
「あぁなるほど。これは夢なんだ。夢じゃなきゃ、こんな展開なんてあり得ねぇよな」
「残念ながら夢じゃない。そもそも君は、漫画は読むけどラノベやファンタジー物の本はあまり読まないだろ」
「それもそうだな」
ではこれは一体どういう事だ?
ファンタジーや異世界ものをあまり読まない俺が、こんなベタな展開の夢を見る筈がないし、そもそもここに来る前は学校で日直の仕事を終えて帰ろうとした直後であった。途中で居眠りでもしてしまったのだろうか?
「何言ってるの、君は学校で居眠りした事なんてないだろ」
「別に真面目に授業受けてるつもりなんてないが、まぁ確かに居眠りなんてした事なんてなかったな‥‥‥」
そう言えばそうだった。
思い返せばあの時、書き終えた日誌を職員室に持って行こうとした時、突然足下に魔方陣の様なものが現れ、それに気を取られている間にこんな所に飛ばされてきたのだった。
しかも、俺だけじゃなくたまたま近くを通りかかっていた男女四人にも同じことが起こっていた。顔を確認する前にここに来てしまったから、他に誰が送られたのか分からなかった。
「その顔、ようやく信じてくれたかな」
「何故そうなる」
信じたのではなく、それ以外に思いつかなかっただけだからとりあえず成り行きに任せようと思っただけだ。決して信じた訳ではない。
「そうじゃなくて、俺の他に四人いただろ。そいつらはどうなったんだろうと思っただけだ」
「あぁ、他の四人ならそれぞれ別の女神から説明を受けて、納得の上で召喚されるのを今か今かと待っているわよ。つまり、あんた待ちって事」
「ふぅん。他の女神ってことは、あんた以外にも胡散臭い女神が四人もいるのか」
「胡散臭いって‥‥‥まぁいいわ。えぇそうよ。確か、剣と魔法と銃と聖の女神だったわね。他の四人もそれぞれの加護を貰ってから、召喚魔法を行っているお城の儀式の間に召喚される予定」
剣と魔法と銃と聖‥‥‥思い切りファンタジーな世界じゃねぇか。てか、剣と刀って別物に扱われるのかよ。
それにしても、城に召喚されるのか‥‥‥。
「うわぁ、チョー嫌そうな顔。そんなに嫌なの?」
「うるせ」
小さく呟く様に吐き捨てた。
数秒上を見て考えた後、刀の女神らしき女性(デリウス様だつけ)の口が開いた。
「はぁ‥‥‥仕方ない。怒られるのを覚悟して、私の力で君だけ城ではなく何処か別の場所へと転移させるよ」
女神からの驚きの一言に、俺は思わず目を見開いてしまった。
「そんな事が出きるのか?というか、本当にそんな事をしていいのか?」
「女神様だから」
この上もなくアテにならない根拠であった。
「ま、私も嫌がる君を無理矢理城に仕えろだなんて言わないし、何より私が嫌だから」
ほぉほぉ。意外に話がわかるな。
「補足するけど、違う所に召喚させてもちゃんと私の加護は与えるし、特別サービスとして私が持っている最高の刀を一振り君にあげようではないか」
それはそれは、とてもありがたいことで。
ここまで聞くと、この女神も只盲目的に役目を全うしようとは考えていないのだと思えるし、その点に関してはちょっとだけ好感を抱けた。
だが
「なんで俺なんかの為にそこまでしてくれる?魔王を倒してくれというのはわかるが、他に何が狙いなんだ?」
無償でここまでしてくれる奴なんている訳がない。それが、俺が元の世界で学んだ事だ。ここまで待遇良くするのは、それに見合う無茶ぶりな要求があるものだ。
「それは」
「それは?」
「私が君の事を気に入っているからなんだよ」
「‥‥‥は?」
意味が分からず、一瞬フリーズした。
「あそこまでの剣の腕、刀の女神として気に入らない訳がないよ。それこそ、剣の女神と取り合いになったくらいに」
「はぁ‥‥‥」
本当にそんな理由で俺に加護と刀を与えようと言うのか。この女神、マジで頭がおかしいぞ。
「女神が加護と力と神具を与える理由なんてそんなもんよ」
そんなものなんです。もしかして、俺が選ばれた理由もそれだったりして。
「ま、そういうこと。一応承諾を得たということで、異世界ハルブヴィーゲへ送るわ。君だけ違う場所だけど」
「おいおい!まだ俺は行くとは‥‥‥っ!?」
女神に意見しようとした時、急に足下にここに来る時に見た魔方陣が浮かび上がり、そこから出てくる光に俺は包まれていった。
「まぁいいじゃん。それより、向こうに着いたら古代樹の森という森の真ん中にある特別大きな木を目指しなさい。向こうに着いたら私もサポートしてあげるから」
「話がなんか勝手に進んじゃってますけど!」
人の話を聞かずに召喚だなんて、やっぱりこの女神頭がどうかしているぞ。
そうこうしている間に、俺の視界は次第に真っ白になり、意識も遠退いていった。
修正しました。序盤から躓いてしまいました。申し訳ありません。