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夏が終わって、じいちゃん家に行かなくなった

作者: ちょり

祖父母は私の家の近くに住んでいて、地元に戻ってからは、週に一度は顔を見に行っていた。仕事終わりに寄る時もあったし、休みの日は、だいたい一緒に外食をした。ご飯代は、初任給で天ぷらを奢った時以外は、当たり前のように出してもらっていた。じいちゃんとばあちゃんからは、年金をたくさんもらっているので、孫と遊ぶ時くらい使わせてくれと言われていたし、私も、お昼ごちそうになれるなら、と ちょっとした孝行のつもりで足を運んでいた。何より、年々小さくなるじいちゃんとばあちゃんを見て、あとどのくらい、などと考えるようになっていたから。

そんな感じで過ごしてきたんだけど、先日、じいちゃんが少し病気をした。とてもつらそうで、お医者さんにも、安静にと言われたようだった。そんなことがあって、あんまり外へ食べに行くのは止めようと思っていたら、久しぶりに、じいちゃんから電話がかかってきた。いつもは、首とかが痛くてあんまり喋ることできないんだけど、その日は調子がよかったみたいで、昔みたいに他の人にも聞こえるように大きな声で喋った。明日、食事に行こうと言うので了承した。次の日になって、時間決めてなかったなと思い、お昼になっても連絡が来なかったので連絡してみたら、電話に出ない。少し不安になってばあちゃんの携帯に電話したら、今○○(ほかの孫で、赤ちゃん)達が来ていて、みんなで外食してると言われた。私は喉の奥が苦しくなって、やっと、私と約束してたよねと言ったら、じゃあ、お前も来るか?と言われた。そういう問題じゃないのに。私が連絡しなかったら、なかったことにされてたのかな。今思ったけれど、婚活パーティーで出会った人に同じことされてる。私は、行かないとだけ答えて電話を切った。

なんとなくお父さんにその話をしたら、じいちゃんとばあちゃんに言ったみたいで、ばあちゃんが、怒り出してしまった。今まで散々奢ってやってたのに、一回くらい何だ、とのこと。私は、その話をお父さんから聞いて、思わず泣いてしまった。正直、お昼をアテにしてた部分も大きいんだけど、何より、私が会いに行くことで少しでも元気になってほしいと思っていたから。けれども、ばあちゃんにとっては、自分たちがお金を出してやってるということだけで、私から与えてることは何もないのだと思った。お父さんには、お前、そんなことも気付かなかったの、ばかだなあと言われてしまった。今まで自分がよかれと思ってやってきたことが、相手に伝わらないことって多い。それは当たり前のことで、見返りを求めてはいけないんだけど、私はアホだから、また期待してしまっていた。

ばあちゃんはこんな感じだけど、じいちゃんはたぶん、純粋にご飯に行ってくれてたと思うので、余計悲しかった。どっちも、いじわるじいさんといじわるばあさんなら良かったのに。だから、じいちゃんに電話して、もう一緒にご飯行けないと理由を説明したら、そんなこと言うなよと悲しそうに言うので、すごく泣いてしまった。もう、前と変わらずにご飯へ行くことは出来ないと思った。

そんなことがあったのが、お盆前。私は大人なので、お盆にお線香上げに行かないなんてことはしない。親戚たちと、じいちゃんとばあちゃんの家で、お寿司を食べた。そのことについてはお互い言及せずに、何もなかったように過ごした。

けれども私は、あれから連絡を一度もしていない。二人からも、連絡は来ない。死ぬまで、こうなのかな。二人が死んだら、私、どんな気持ちになるんだろう。ひどいこと言われても、無理矢理にでもご飯を食べに行けばよかったと、後悔するんだろうか。

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