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47.森の中での戦い

 森の入り口付近に到着すると、すでに何人かの騎士が展開していた。

 騎士達は皆、第二騎士団の特色である黒い制服を身に纏っているが、重装から軽装のものまで様々だ。


「! お疲れ様です。ヘリオス騎士団長、ファルマー副団長!」


 アウロとレイスの二人の姿を見つけると、騎士達はすぐさま敬礼する。

 そんな騎士達にアウロは手で合図をすると、


「挨拶はいい。状況は?」

「はっ、すでに第一、第二、第三隊は展開済み。第四、第五隊はここで待機しております」

「レイスの指示通りか」

「先の報告の通りです。ここに来るまでに兆候がありましたので」


 そんな二人の背後に並ぶのは、サーシャとエル。

 サーシャは先ほど執務室で二人が話していたのを目撃したが、どうやらレイスの報告はこの件だったようだ。

 第二騎士団の面々は、アウロの方に視線を向けているがちらりと時折サーシャの方に視線を送る。


(……私、場違いだって思われてる……?)


 サーシャ自身、緊迫した雰囲気の中に自分がいることは少し――いや、かなりの違和感があると思っている。

 実際のところ、ほんの一月遡れば、サーシャはまだ学生の身分だ。

 隣に立つエルはレイスの補佐官として知られているのかもしれないが、サーシャの方は全員が初見だ。

 目立つのも無理はないと言える。


(見られる分にはいいけれど……)

「第一隊は俺とレイス、それからサーシャとエルが合流する。ああ、聞いてはいると思うが、こいつが俺の補佐官だ」

「っ! サ、サーシャ・クルトンです」


 不意に紹介されて、上擦った声でサーシャが答える。

 騎士達の視線が一気にサーシャに集中すると、サーシャも思わず息を呑む。

 大勢の前で紹介されると緊張する――サーシャとしてはそれが当たり前だった。

 騎士達はサーシャに対して礼をして、すぐにアウロの方へ視線を戻す。

 紹介はすぐに終わったが、サーシャにとっては中々精神的な負担の強いものだった。


(アウロさんは私のメンタルを過剰評価しすぎだって……!)


 主にアウロに対してだけ発動しやすい鋼のメンタルを勘違いされてしまっている。

 これから魔物と戦うということもあって、サーシャの緊張はピークに近い状態にもある。

 そんなサーシャの気持ちを知ってか知らずか――アウロは一通り話を終えるとサーシャの方に振り返る。


「なんだ、緊張してんのか?」

「そ、それは……そうですよ。魔物と戦うわけですし」

「前にも言ったが、何かあったらすぐに下がればいい。お前に危険が迫る前に俺が魔物を倒すからよ」


 そんな風に言ってのけるだけの実力が、アウロにはあるのだろう。

 だが、その言葉が逆にサーシャの緊張を解す形となった。

 サーシャは一度深呼吸をして、アウロの言葉に答える。


「……それは私も同じ、ですよ。前にも言った通り、私もアウロさんを守りますから」

「お前らしいな。緊張が解れたなら、行くぜ」

「!」

(まったく、この人は……)


 粗暴なようで、サーシャのことはしっかりと見ている――アウロの後ろについて、サーシャも森の中へと入っていく。

 レイスとエル――それから十数名の騎士と共に、森の中を進む。


「僕とヘリオン騎士団長が中心に動きます。いつも通りで構いませんね? 騎士団長」

「ああ」


 レイスの問いかけに、アウロはそう一言だけ答える。

 あまりに簡単なやり取りだったが、アウロの言葉を聞くとレイスが動き出す。


「他の者は遊撃を。エル、行きますよ」

「……はい」


 レイスがエルを連れて先行する。

 どうやら、これがいつもの陣形のようなものらしい。

 アウロもレイスの後を追うように動く。

 特にサーシャの方を確認する様子はない――以前森の中でも見せているからだろう。

 いざというとき、サーシャはアウロに追いつくだけの能力がある。


(それに、もう――)


 森の中に入った時点で、その気配は感じていた。

 まだ離れてはいるが、遠くから聞こえてくる大量の足音。

 魔物達は押し寄せようとしているのだ。


「レイスは左に動いたか。サーシャ、俺とお前は右側だ」

「分かるんですか?」

「そこの木の印でな」


 アウロが示した方角を確認する。

 木に剣で傷をつけたような跡が残っていた。

 どうやら、それがレイスの行動を示すものらしい。


「俺達はこの辺りで迎え撃つ。ところで、実際どういう魔法が使えるんだ?」

「え、今確認することですか!?」


 戦う寸前になっての問いかけに、サーシャは驚きの声を上げる。

 サーシャに期待していると言っておきながら、結局そういうところはアウロらしかった。


「連携は必要だろ? どういう魔法が使えるか見ておきたくてな」

「だから、そういうのは先に確認してくださいって!」

「心配すんな。そういうのに合わせるのは得意だ」

「……っ!」

(得意だって……!)


 ――サーシャが知っているのは、魔法に合わせるのが得意なアウロではなく、アウロの動きに合わせて魔法を使うフォルのことだ。

 すでに魔物達が迫っていることは、サーシャにも感じ取れる。

 迷っている暇もなく、サーシャは魔力で空中に《魔法印》を描き出した。


「もうっ! 今度は最初に全部説明してくださいよ!」


 今回の件についてのすべての愚痴がここに集約されている――空中に現れた魔法印の数は十を超え、それらは魔力の刃となって現れる。


「ああ、考えとくぜ」


 いつも通りの返答がアウロからあり、アウロもまた背負った大剣を構える。

 サーシャの魔法の発動を皮切りに――森の中での戦いが始まった。

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