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41.ついでになら

 サーシャは黙々とテーブルに料理の乗った皿を並べていく。

 ハンバーグ作りにおける火加減の微調整も、サーシャは自らの魔力コントロールによって完璧にこなしてみせた。

 サラダとライスの準備もできている。


(なんか……いつになく疲れた……)


 二人分だから、ということもあるが、サーシャの料理とはいつももっと手軽なものだ。

 そもそも練習をしてから臨んでいるため、労力だけで言えばかなり大きい。

 だからこそ、しっかりとできたという自信がある。


「アウロさん、できましたよ」

「お、やっとか」


 アウロの言葉から、待たせていたという事実を再び思い出すが、そのことにはサーシャも触れない。

 アウロが席につく。


「ほう、見た目はしっかりしてるな 」

「中身もしっかりしてますから」

「だといいがな」


 何かと挑発的な発言の目立つアウロだが、そういう意図がないことは分かっている。

 アウロに直してもらいたいところの一つに入ってくるところなのだが、今はそれよりも気になることが大きくてサーシャも突っ込みを入れない。

 アウロから少し離れたところでその動向を見守るが、


「……いや、お前も座って食べろよ」

「え、あ――そうですよねっ」


 アウロに指摘されて、サーシャも席につく。

 それでも落ち着く様子はなく、そわそわとアウロの方を見る。


「……基本的に俺は気にしないタイプではあるが、食べる時にそう見られてると落ち着かねえな」

「っ! あ、味とかどうなのかなって、気になるので……」


 サーシャは素直に答える。

 アウロはサーシャの言葉を受けて、サラダを食べ始める。


「――って、こういうときはハンバーグからですよ! 普通!」

「バランスよく食えって話を思い出してよ」

「今はいいですからっ。早く食べてくださいっ」

「お、おう」


 サーシャに促されて、ようやくアウロがハンバーグを口にする。


(練習でもうまくいってたし……)

「……」

「……」

「……」

「……ど、どうですか?」


 聞かないと中々答えてくれないので、サーシャから尋ねる。

 まさか、料理の感想を聞くだけで緊張するとは思ってもいなかった。


「美味いが」

「……が?」

「……細かい事を気にするな。思ってたより美味いって言ってんだ」


 感想としては普通だが、何やらサーシャが言わせたようになっている。

 ただ、アウロは嘘をつくタイプの人間ではない。


(少なくとも美味しくはあるよね……うん)


 サーシャはホッと胸を撫で下ろした。

 感想の内容としては薄かったがそんなものだろう。

 そして、自分で作ったハンバーグを食べようとして、


「こういうのだったら毎日食べてもいいかもな」


 アウロの発言にガシャン――と食器がぶつかり合って大きな音を鳴らした。

 サーシャは俯いたまま顔を上げない。


「どうした?」

「な、何でもないです……っ」

(アウロさんのことだから、思ったことを言っただけなのに……! 毎日食べてもいいって、そんな事言われたら……)


 どうして慌てる必要があるのだろう。

 そうは思いつつも、サーシャは動揺してしまっていた。

 アウロの発言にはそういう意図はないのだろうけど、面と向かって言われるとそう考えてしまう。


(ま、まったく、この人は……)


 サーシャは小さくため息をつきながらも、アウロに向かって答える。


「お休みの日とかなら、作ってあげてもいいですけど……」

「別に無理するような話でもねえが」

「無理してないですよ、ついでに、です。ついで!」

「そうか? お前が問題ないって言うなら頼るぞ、俺は」

「そうですね。アウロさん一人じゃバランスとか考えられないでしょうし……」

「まあ、お前の作る料理は確かに彩りがあるな。良い嫁になる……ってやつか」

「ま、またそういうこと言って……!」

「怒るなよ、褒めてるんだぜ」

「つ、ついでに作るだけなんですからねっ!」

「そこか? そりゃ分かってるが」


 あくまでついでである――その点についてはとにかく強調するサーシャ。

 自ら料理のレパートリーを増やさなければならなくなる状態に陥ってしまっていることに気付くのは、次の休みのことだった。

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