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24.一つ屋根の下?

 森から戻ったアウロとサーシャは、第二騎士団のメンバーからの情報の共有も受けた。

 結果として、新しい発見はない。

 《一角狼》の動向は、北東付近に絞られることになる。

 だが、調査はまだ一日目だ。

 二日目も、昨日と同じメンバーで調査することになるのだが――


(どうしてこうなったんだろう……)


 サーシャは一人、宿の部屋で悩んでいた。

 ベッドの脇にはサーシャの大きめの荷物が置いてある。

 そして、もう一つのベッドには、アウロの荷物が置いてあった。

 そう――アウロとサーシャは同室になったのだ。

 事の発端は宿での話を終えたあとだ。

 しばらく滞在することは決まっていたのだが、第二騎士団のメンバーはここに滞在するのに一部屋しか取っていなかった。

 もう一部屋も空いているため特に問題はないのだが、


「経理課がうるさいからな。二人で一部屋使おうって考えはいいことだぜ」

「あ、ありがとうございます……」


 青年騎士は気まずそうな笑顔を浮かべながらそう答える。

 サーシャはすぐに気付いた。

 あの二人はそういう関係なのだ、と。


「お、お二人が来られたので、部屋はもう一つ取って……部屋割りの方は――」

「だ、大丈夫ですよ! 私とアウロさんが同じ部屋でっ」

「えっ、し、しかし……」

「お前がいいって言うならいいが……だが、お前も中々殊勝だな。経理課に一度行ったのがいい経験になったな」

「そ、そうですね」


 本当は経理課がどう、などとは気にしていない。

 サーシャが気にしてしまったのは、あくまで男女の関係にある二人だった。


 アウロが二人の関係に気付いたとして、「公私混同をするな」と怒るようなビジョンは見えないが、アウロと同室になる青年が少し気の毒だった。

 さすがにアウロと一対一で同じ部屋はプレッシャーだろう。

 サーシャが気を使った結果――アウロとサーシャが同室になってしまうという事態が発生してしまったわけだ。


(べ、別に同室なだけで何かあるわけでもないし……)


 ちょこんとベッドに腰掛けるような形で、サーシャはアウロが戻るのを待っていた。

 村の方を見てくると言って、しばらく経過していた。


(というか、アウロさんは何とも思わないのかな……。確かにアウロさんから見たら子供、なのかもしれないけど、男女が同じ部屋なんだよ? その前に最初の二人のときに気付け!っていう話だし……)


 サーシャが思いを巡らせる中、ガチャリと部屋のドアが開く。

 ビクッとサーシャの身体が少し跳ねた。


「……何やってんだ、お前」

「……何もしてないですが」

「だからよ、ベッドに腰掛けて何もしてねえってどういうことだって話だ」

「い、いいじゃないですかっ、私は部屋ではいつもこうなんですっ!」

「そうか? ならいいが……」


 そんな常に緊張状態であるはずもない。

 普段のサーシャなら、ベッドに横になってぬいぐるみの一つ、二つ――三つほど抱き締めて愛でているところだが、そういうわけにもいかない。

 若干の臨戦態勢に入りつつも、そんなサーシャのことを気にする様子もなくアウロもベッドに腰掛けて荷物を確認し始める。


「大体持ってきてるはずなんだが……」

「宿についてから荷物確認、ですか? 普通は出る前に忘れ物がないか確認すべきです」

「子供の遠足か」

「じょ、常識の話ですよ! 着いてから忘れてました、の方がダメに決まっているじゃないですか!」

「現地調達でいいだろ、そんなもんは。まあ、お前の言うことも正しい。正しいが――お前は少し荷物が大きくねえか?」


 アウロから指摘を受けたのはサーシャの荷物。

 少し大きめのケースには、サーシャの私物が入っている。


「……女の子ならこれくらいが普通です」

「男女関係あるのか、それ」

「アルシエさんが荷物まとめておいたら引っ越しの手続きとかはやっておいてくれるっていう話だったので……」


 サーシャが聞けていなかった引っ越し先についても、改めてアルシエに確認したのだが、お金のかからない寮みたいなもので、それも複数場所があるという。

 荷物は一先ず一ヶ所にまとめる必要はあるが、お金がかからずに何ヵ所か住める場所が提供されるというのはいい話だった。


(何で隠すのか分からないけど……)


 サーシャもそのとき《サボーテール》のぬいぐるみに夢中で話を聞いていなかったために、そこまで強くは追及できなかった。

 ただ、悪い話でないことは確かだ。


「それで荷物をある程度まとめて、大事なものは持ってきたってか?」

「そういうわけです」

「盗まれねえようには気を付けろよ。第二は色々と出向く機会も多いからな。荷物を選別する癖もつけとけ」

「わ、分かってますよ。今回だけですから」


 実際――二週間も滞在する可能性があるなら荷物も多くてしかるべきだとサーシャは考えている。


(それよりも……)


 同じ部屋だというのに、気にしているのはサーシャだけのようだった。

 これではまるで、サーシャだけがアウロのことを意識しているようで――


(な、何故か敗北感が……ううん、気にしなければいいんだ。私もくつろぐように――って、くつろがないって言い切ったばっかりだった……)


 色々と墓穴を掘ったサーシャが険しい表情を浮かべる。


(うん、でもこれから一緒に行動していく上でこういう機会は増えるかもしれないんだし……むしろ普段から一緒にいた方がアウロさんの威圧感がもっと和らぐかも……! よし――)

「じゃあ、俺は外にいるからよ」

「……へ? また出るんですか?」

「出るというか、野営だな。夜の状況も確認しておきたいんでな。お前は部屋でゆっくり休めよ」

「え、あ、ちょっと――」


 バタン、と荷物を持ってアウロは出ていってしまう。

 そこに残されたのは、たった今同じ部屋であることを受け入れたばかりのサーシャだけだった。

 パタリ、とそのままサーシャが横になる。


「……私だけ色々と考えて、バカみたいじゃない」


 少し怒ったように、サーシャはそう呟くのだった。

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