ジョン・ウィック(シリーズ)
ジョン・ウィック シリーズ
公開年
・1作目:2014年
・2作目:2017年
・3作目:2019年
監督:チャド・スタエルスキー
キャスト:キアヌ・リーヴス、イアン・マクシェーン、ミカエル・ニクヴィスト(1)、リッカルド・スカマルチョ(2)、ハル・ベリー(3)、マーク・ダカスコス(3)、等
今回紹介するのは「ジョン・ウィック」です。キアヌリーヴス主演、監督はマトリックスでキアヌのスタントマンを務めたチャド・スタエルスキー。(マトリックス好きな私にとってはこの組み合わせだけで熱くなれます(笑))ハリウッド製作のアクション映画にしては珍しく、エンタメ路線は勿論、批評家からも評価が高いんですよね。その秘密に迫っていけたらなとも思います。
まずはざっくりとあらすじを紹介していきたいと思います。
最初に一作目、かつて、裏社会で殺し屋として名を馳せたジョン・ウィックは引退し、ヘレンという愛する女性と結婚します。しかしヘレンは病死してしまいました。
ですがヘレンはそれを見越して仔犬をジョンに贈り、ジョンの新たな生きがいとなります。
だがその矢先、何者かに愛車を盗まれ、更には犬まで殺されてしまいます。
こうしてジョンは復讐のため、再び裏社会に戻る事になりました。
二作目はあるイタリアンマフィアから抹殺の依頼を受けます。その依頼をジョンは引き受けますが、依頼主からの裏切りにあって命を狙われしまい……果ては自身に700万ドルの懸賞金が掛けられ、返り討ちにしていきます。
三作目は、裏社会における聖域でタブーを犯してしまったジョンは1400万ドルの懸賞金を掛けられて世界中の殺し屋から狙われてしまいます。
という具合にストーリー展開はさほど複雑さは無く、アクションの為のシチュエーションですね。
今回はちょっと違った趣向でこの映画を紹介したいと思います。
それはズバリ、アクションシーンについてです。一般の人々から批評家まで、誰もが絶賛するアクションの考察について語っていきたいと思います。
まずは今までのハリウッドにおけるアクションがどういったものだったのかを説明していきましょう。
古くは60年代の西部劇やギャング映画から。役者をどう見せるのかが重視されており、キャラクターをメインに大きく映すような手法が取られていました。二丁拳銃や横持ちや腰だめ撃ちなんかもこの影響ですね。とにかく格好良さ重視だった訳です。
時は流れて90年代、大きな転機が生まれます。それは「ブレイド」や「マトリックス」に代表される、東洋のアクション映画の手法を取り入れたアクションです。スピード重視の動きや体の位置、周囲の状況も見えるような、動きに焦点を当てたようなものですね。やがてその為のカメラワークやカット割りの技術も増えていきました。
また、その後のハリウッドでは誰でもアクションを撮れるような撮影法までも編み出されました。それは「ボーン・アイデンティティー」におけるカット割りを多用した視点移動による迫力を増すような映像技術に始まったのですが、カット割りによってスタントマンを併用し、誰でも凄いアクションをしているように見せる事が出来るようにもなります。
しかしこの手法にも弱点があり、カット割りを多用し過ぎるとかえって何が起きているのかが分かりにくいんです。動きはもちろん、表情や周囲の状況も見えにくい訳ですから、下手をすると役者の印象まで削がれてしまう恐れもある訳です。
そこで生まれたのが、「ヒート」や「コラテラル」等、マイケル・マン監督を筆頭に、役者自身にスタントをさせるという映画です。昔からのカンフーアクションではお馴染みですし、ハリウッドでも実はこれらは90年代から存在していたのですが、今回紹介する「ジョン・ウィック」がそれを再び注目させました。
要は役者自身に動きを主体としたアクションをさせる事なんですが、スタントマンを使わない事によって様々な方向からのカメラワークが出来ますし、不用意なカット割りを行う必要もありません。
更には滑らかで長いカットを撮る事も出来るので、役者の体勢や表情を同時に映す事でキャラクターを印象づける事が出来ます。時代劇の迫力ある心の籠もったアクションのオマージュとでも言うか、特にナイフや刀まで使う三作目のキアヌ・リーヴスはまさにサムライといった印象でした。
しかも、長いカットそのもので動きの精密さを魅せる事も出来ます。銃の流れるような照準の定め方にリロードにコッキング……キアヌ・リーヴスが銃撃の訓練を受けている事もあってそれらの細かい仕草も映えるんですよね。三作目に関してはハル・ベリーも同様に銃撃に犬との訓練まで行っていますのでそこも見所です。他にもやられ役のスタントまで挙動が細かくて、こちらも見応えがあります。
と、ここまでいかがでしたでしょうか? 戦闘シーンは拳銃は勿論、アサルトライフルにショットガンにナイフに、鉛筆に本に、柔術にカンフーに、とにかく盛り沢山で誰もが楽しめるかと思います。三作目に至ってはカンフーの達人、マーク・ダカスコスとの対決もあり、非常に盛り上がります。しかもその部下が日本刀に連係攻撃、果てはインドネシアの武術であるシラットまで……
それから、戦闘シーンのリアルさに関しては、私は対多数戦は特に素晴らしい出来かと思っています。CQB(閉所近距離戦闘)においては敵の発見はもちろん、どの位置に居たら敵の攻撃を受けないかといった安全地帯を探す事も重要になってきますが、キアヌの目線の配り方や移動の仕方がこれを上手く再現していたんですよね。
対多数戦においても、どの位置なら他の敵の攻撃が当たらないかという配置に、敵を無力化しつつ別の敵を連続的に攻撃していく流れるような動きも素晴らしいです。
と、今回の紹介はここまでいかがだったでしょうか?
あとジョン・ウィックは一作目のクラブの乱闘シーンで「Le Castle Vania」のBGMが流れる中での音楽に合わせて動くようなアクションがまた面白いんですよね。音楽と組み合わせるアクションってのもまた醍醐味かとも思います。
他にもマトリックスやブルース・リーのオマージュもあったり、光と影、色彩、細かな描写も見事です。また、主人公のジョンを中心として忠誠や信頼といった裏社会における因縁も見えてくるのも見所です。
アクション小説を書きたいという人も、この映画を是非参考にしてはいかがだったでしょうか?
というわけでありがとうございました。
"Guns, lots of guns."