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燃えよドラゴン

「燃えよドラゴン」

1973年公開

監督:ロバート・クローズ

製作:レイモンド・チョウ(ノンクレジットだが、ブルース・リーも製作に携わった)

出演:ブルース・リー、ジョン・サクソン、ジム・ケリー、他

 今回紹介する映画は「燃えよドラゴン」です。

 カンフー映画の王道と言えばこれを挙げる人も多いかと思います。確実に全世界にマーシャルアーツのブームを起こした映画でもあるでしょう。

 主演であり、アクション指導も務めていたブルース・リーは後にあらゆる映画や武術にも影響を与えました。私もそのアクションに魅了された一人として語りたいものです。


 物語の最初はとある香港の寺院、僧達が見守る中、ブルース・リーとサモ・ハン・キンポーが対峙しています。構えた二人は開始の合図で激しい攻防を繰り広げます。

 もう最初からアクションシーンが最高に洗練されていました。リーの素早い動きは勿論、対するサモ・ハンも太った体躯に見合わぬ軽快な動きが凄かったですね。

 それにリーは次々とサモ・ハンの動きを見切って確実に攻撃を当てていきますから、それだけでリーの強さが窺えます。


 この映画に関しては特にアクションシーンとブルース・リー自身を推していきます。やはり動きこそが最高ですから。

 ブルース・リーって特にフェイント技術が得意らしく、フェイクの動きを相手にわざと見せておいて相手が動いた所へ当てる、という戦法を良く使っています。

 例えば別の映画ですが、フィンガージャブに見せ掛け、ローキック。更にローキックに見せ掛けてハイキック、というテクニックもあったり。


 ブルース・リーの生み出した武術「ジークンドー」というのは実に実戦的で、後に軍隊格闘術にも取り入れられています。(実際、リーの友人でありジークンドーを会得した武術家、ダン・イノサントはアメリカの軍や警察でCQCの指導もしている)

 師匠である詠春拳の使い手、イップ・マンから基礎を学び、他にもあらゆる流派や格闘技や武術を掛け合わせた結果、ジークンドーは生まれました。(詠春拳一派としては駄目だったらしいですが……まあ師の教えを破るからこそジークンドーを発展させられたのでしょうね。いわゆる剣道とかの守破離といった考え方に近いですね)


 さて、ストーリーではリーが国際情報局の依頼で犯罪組織の疑いが高い武術家、ハンの拠点とする島への内偵へ行く事になりました。丁度ハンはその島で武術大会を開いているという事もあり、リーは数々の武術家達と出会います。


 リーが出発する前のシーンで、彼の弟子に指導をするシーンがありますが、ここは作中随一の名シーンだと私は思います。

「考えるな、感じろ」

 聞いた事ある方も多いかと思います。まるでブルース・リーやジークンドーのほぼ全てを物語るような台詞です。

 武術等の経験がある方には分かる人もいらっしゃるかと思いますが、戦いというのは本当に考えてしまうと勝てないんです。簡単に言えば「考える」という事こそが一つのタイムラグになるからです。

 ブルース・リーは戦いの時、必ず相手の目を見ます。相手を「感じる」事が出来るからです。相手よりも早く相手の動きに気付き、打たれる前に速く攻撃を打ち込む、これこそブルース・リーが最も武器とする「スピード」なのです。

 リー自身、「攻撃は感情ではない、五感を研ぎ澄ませ」とも指導していました。

「指先に集中するな。その先の栄光が得られない」


 こうして武術大会のシーン始まる訳ですが、試合シーンがどれも気合いが入っていて良かったですね。途中で隠密捜査シーンも入っていたり、やはりブルース・リーのシーンも格別でした。

「板は打ち返して来ない」

 試合前、相手のボブ・ウォール演じるハンの手下オハラが板を割って強さを誇示するシーンで、リーが言い返した台詞です。

 ブルース・リーは何より実戦を重んじていました。型の制限された動きから解放され、あらゆる状況であらゆる動きが出来る柔軟さ、すなわち「無」を重視していた訳です。


 また、このシーンではブルース・リーが得意な「トラッピング」という技術が使われていました。

 原理としては敵の攻撃や動きを抑え込んで隙を生じさせ、罠に掛けるかの如く攻撃を当てる、という戦法ですね。

 劇中では、敵のガード手を片手で押し下げ、もう片手でストレートを当てる、といった技を見せてくれました。


 ジークンドーの理念は三段階あります。

 まずは「己」、これはまだ学ぶ段階の前のありのままの自分自身だけの存在という事です。

 次に「技」、つまり技を学ぶ事ですが、技は同時に「己」を制限するものでもあります。

 最後は「無」、要するに実戦を通して「技」を取り除き、無駄が一切無くなった境地という訳です。

 この「無」こそが一番奥にある境地であり、この「無」を極めたからこそ「有」を倒す事が出来る訳です。


 内偵のシーンでは侵入がばれてやむなく戦闘するシーンが出ますが、このシーンもまた格闘が凄い。(この辺り実はスタントマン時代のジャッキー・チェンがやられ役としても結構出ていました)

 一手一手の攻防は勿論、武器術もあってとにかく強かったです。やはりヌンチャク(厳密にはタバクトヨクというフィリピンの武術、カリで使用される武器。沖縄古武術にも伝えられたといわれている)も見物でしたね。


 ブルース・リーは「剛」と「柔」を兼ね備えた「水」のような強さを持ち、彼自身こう述べていました。

「心を空に、形を捨て、水のように。水は流れる事も砕く事も出来る。水よ、友となれ」

 水はその場に応じて形を変え、決まった形を持ちません。しかしエネルギーを与えれば岩だって砕きます。形を持たない事、すなわち「無」こそが最強だと説いているのです。


 さて、実はもうストーリーについて喋ることがありません(笑)

 そもそもこの映画に関してはブルース・リーという人物を語る事を前提に書いていますから。


 ブルース・リーは32歳という若さでこの世を去りましたが、世界中に与えた影響は凄まじいものです。武術は勿論、スポーツや哲学、あらゆる映画、それにこのエッセイを書いている筆者にまで。

 何より、彼の凄い所は、映画において全く「芝居」をしていない事なんです。

 ブルース・リーは戦いの手段としてだけでなく、「己」を表現する手段としてもジークンドーを編み出しました。ジークンドーというスクリーンに映った姿は本来のブルース・リーの姿でもあるのです。


 以上、燃えよドラゴンの個人的評価でしたが、いかがだったでしょうか? ブルース・リーの素晴らしさが最高に伝わる作品です。

 私自身、人生において参考にしたい考え方ばかりで、まさに「感じて」生きていきたいものです。


 という訳で今回をご覧頂きありがとうございます。


 ホーアチャー!

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