アルマゲドン
アルマゲドン
1998年公開
監督:マイケル・ベイ
出演:ブルース・ウィリス、ベン・アフレック、リヴ・タイラー、等
今回紹介するのは「アルマゲドン」です。
隕石が地球に衝突して破滅するのをどうにかして防ごうとする、というストーリーでラストの感動も話題になり、公開当時は一種の社会現象にもなりました。
(ちなみに、ご察しの方も居るかと思いますが、私のユーザー名もアルマゲドンが由来です)
90年代末はノストラダムスの予言がどうのこうのらしく、聖書による世界の破滅、いわゆるアルマゲドンが起こるとか一部で騒がれていたそうで。
一方で映画界だとVFXを駆使した作品が増えてきた技術発展時期でもあります。
アルマゲドンは丁度この二つの時期が合わさった時に作られた、まさに当時の状態を表すのに相応しい作品でした。
(ちなみにアルマゲドンが公開された同時期、スピルバーグ製作の「ディープインパクト」というこれもまた隕石衝突を題材とした映画があって、ストーリーが似ていると一部からも言われていました)
主題歌の方はエアロスミスが担当していて、(しかもボーカルのスティーヴン・タイラーが主演のリヴ・タイラーの父親)そちらも大ブレイクしていました。
物語は現代ニューヨーク、突如にして隕石群が降り注ぎ、都市をことごとく破壊するシーンから始まりました。
最初から映像技術魅せまくりでしたね。ド派手な演出や爆破にかけてはハリウッド随一のマイケル・ベイ監督、流石です。
一方、とある石油掘削プラットフォームにて石油会社の社長ハリーが、部下が社長の娘グレースと付き合っている事がバレたという事だけで社長が怒り部下のAJを殺しかける、という騒動を起こしていました。
ベイ監督は壮大な設定や世界観の中に存在するちっぽけな人間の存在を描くのが非常に上手いんですよね。ただハリーがAJを殺そうとしているシーンだけでも彼らやその周囲を取り巻く関係が分かりやすく見えてくるんです。
ベイ監督はこういうSFアクションを交えたヒューマンドラマを描く事にかけてとても長けています。アクションもドラマも、どちらも目が離せずそれぞれにハプニングを多数持たせて常に観客の目を引きます。
ところでNASAはニューヨークの隕石墜落の一件から、更に地球に飛来してくる小惑星の存在を発見します。しかも衝突すれば地球は確実に滅亡。
そこで、小惑星に穴を掘り、その内部に核弾頭を埋めて爆破し小惑星を分断させて回避する、という案が採られました。
その為に掘削のプロフェッショナルであるハリーとその部下達が招集され、訓練を受けて宇宙へ旅立つ事となりました。
この辺りベイ監督の下品な性格ならではの演出が光っていました。キャラクターがたった一人だけでも十分に濃いのに、それが数人にもなると場の雰囲気がまるで変わります。
地球が滅ぶ前だというのにそれぞれが人生を謳歌し、訓練中に騒いだり喧嘩したり、果ては宇宙へ行く前日に犯罪(といってもただの喧嘩)を起こしたり、常に楽しませてくれます。
ちなみに宇宙へ行くメンバーはというと、
・統率力とカリスマ力を持ち合わせる石油会社の社長、ハリー
・ハリーと反発することが多く、自分の勘を頼りにする青年、AJ
・ハリーの右腕的存在で妻や息子と別居している、チャック
・自称天才、マサチューセッツ工科大学で22歳の時に博士号を取った女たらしの地質学者、ロックハウンド
・バイクが好きで涙もろく、中性脂肪値とコレステロール値が異常に高い黒人、ジャイティス
・カウボーイを気取って馬に乗る地質学者、オスカー
・マザコンでドーナツとハギスの好きな太った青年、マックス
残りは宇宙飛行士達だけですが、もうこれだけで豪華ですし、彼らが喋るだけで場の雰囲気が混沌と化するのは目に見えていますね(笑)
いざ出発、という細かい部分までドラマたっぷりでした。
AJとグレースがイチャイチャするシーン、実は音声のみでサウンドトラックCDに載っていたり。
出発前の大統領のスピーチも最高でしたね。一人の人間として、全世界へ希望を見いだしてくれる力を持った演説でした。「この為に我々は科学技術を発展させてきた」と、絶望の中確かに希望がありました。
二機のスペースシャトルは無事出発し、途中ロシアの宇宙ステーションで燃料補給しつつロシア人飛行士のレヴも拾います。
人間の耐久力限界で加速し、ついに小惑星に辿り着きましたが、ここからがトラブル盛り沢山でした。
スペースシャトル一機が小惑星の破片浴びて墜落するし、掘削には相性が悪い大地だったり、小惑星の氷が太陽によって溶けてメンバーが宇宙に放り出されたり、果ては軍が勝手に計画を変えようとしたり。
ネタバレが怖いのでこれ以上は控えておきますが、何だかんだ言ってラストは感動仕様で、一度は引き離れようとした人々が結び合い、特にハリーとAJとグレースのやりとりが最高でしたね。こうして人類は生き続けるのだと。
ちなみにアルマゲドンが公開された前後はヤン・デ・ボン監督による竜巻研究者達を描いた「ツイスター」という災害パニック映画がヒットした事もあり、この頃は色々な災害パニック映画が作られました。
どれも大自然の驚異に混乱に陥る人間を描いたものでしたが、アルマゲドンだけはある意味異色でした。というのも、通常パニック映画は対面する人々から脅威を壮大に映すのですが、ベイ監督は独自の撮影技術を駆使して人物を中心に映し、壮大な情景の中にドラマを生む事で途轍もない感動を与えるのです。
エンターテイメントとしては成功したアルマゲドンですが、やはりその作風のせいで批評家からの評判は悪く、二つのゴールデンラズベリー賞まで受賞しています。(アカデミー賞は特殊効果や音楽がノミネートされていたけど受賞には至らなかったそうで)
また、アルマゲドンでは政府を差し置いて秘密裏に別の作戦を実行しようとする軍のスタイルも描かれているのですが、これはまるで後のジョージ・W・ブッシュ大統領(2000年からの着任なのでアルマゲドンより後の筈)が世間から内密に軍を動かしてきた事を批判するようでもありました。
実はベイ監督の作品は、エンターテイメントの中にも作品の背景に隠されたメッセージがあったりするんです。(特にシリーズ物だとアメリカ社会の変化まで分かったり。トランスフォーマーに至ってはトランプ大統領のスタイルを痛烈に批判していた)
実はもっと語りたいのにこれ以上語るのは難しいです(笑)
というのも、やはり演出が過多な分だけストーリー展開そのものは単純なんですよ。ただラストシーンの為だけにあるような映画ですから。
という訳で演出についても少し語っておきます。
言うまでもなくベイ監督は特に撮影技術に関しては迫力満点のものばかりでして、人物を中心に螺旋状に上昇しながら撮影する手法は彼ならではのドラマを引き立てても居ます。
アルマゲドンは主に宇宙を舞台にしていますが、実はAJ役のベン・アフレックの提案でNASAの全面協力を受け、宇宙服にスペースシャトルに訓練は勿論、更には本来ならNASAだけしか見られないスペースシャトルに乗員が乗る部分の撮影まで可能にし、非常にリアリティあるものにしたんです。(CGにする予定だったスペースシャトルの制作費が浮き、代わりにパリの隕石衝突シーンが出来上がったとか)
アルマゲドンの最大の魅力は単純化と複雑化双方のバランスによってあらゆる人々を引き込んだ事でしょう。やはりマイケル・ベイならではの細かい演出がシンプルさを引き出したと思います。
最後に音楽。主題歌はおなじみエアロスミスの「I Don't Want To Miss A Thing」で、こちらも有名になっていましたね。ラストシーンの感動に拍車を掛けたり。なんとこの曲でエアロスミスはバンド結成28年目で初めてアメリカのCDチャート1位を記録したそうです。
更にサウンドトラックでは他にも3曲収録されるし、映画中のあるシーンでエアロスミスの曲が流れていたシーンの録音をそのまま収録されています。
他にもジャーニーやZZトップ、ジョン・ボンジョヴィといったバンドもあったり。
脇役に関してもちょいと小ネタを。
天才でプレイボーイのロックハウンド演じたスティーヴ・ブシェミと、地質学者とロシア人宇宙飛行士レヴを演じたピーター・ストーメアの二人、過去に「ファーゴ」で誘拐犯二人組として共演していたり。
あとハイテンションで涙もろい黒人ジャスティスを演じたマイケル・クラーク・ダンカンは「グリーンマイル」で冤罪を掛けられた心優しい死刑囚として名演技を繰り広げていたりします。
という訳でここまでご覧頂きありがとうございました。
しかしマイケル・ベイ監督はとにかくド派手で常に楽しませてくれます。最高です。