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マトリックス

マトリックス

1999年公開

監督:ウォシャウスキー兄弟(現ウォシャウスキー姉妹)

脚本:ウィシャウスキー兄弟

製作:ジョエル・シルバー

主演:キアヌ・リーヴス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー=アン・モス、等

 さて、記念すべき第一回目で紹介するのは「マトリックス」です。


 観た事なくてもタイトルだけ聞いた事ある人も居るかもしれませんし、エビ反って弾丸を避けるイメージを持っている人も居るかと思います。

 観た事ある人の中でも内容を理解している人は少ないと思われるほど間違いなく難解な内容でもあると思います。しかし、その独特の設定や世界観は後にあらゆる作品に影響を与えました。(筆者である私も影響を受けた一人です)


 この作品は香港映画おなじみのカンフーアクションは勿論、当時の流行であったVFXや神話的ストーリーまで、何から何まで今観ても新鮮と思えるものばかりでした。もうファンとして魅力を語りたい限りです。


 まず物語は現実社会ではコンピュータープログラマーとして、裏社会ではハッカーとして暮らしている主人公のネオが「起きているのに夢を見ているような感覚」のまま何かをインターネットで探しています。その時、彼は奇妙なメッセージを受け取ります。

 メッセージに従って彼は自分の正体や行動を知るハッカー、トリニティと出会い、「危険が近づいている」と警告されます。

 エージェントと呼ばれる者から追われ、現実と夢の区別が出来ないネオ。そこに現れたのは世間から危険なテロリストとされている人物で、彼がまさに探していた人物でもある、モーフィアスでした。


 もし今生きているこの現実が夢だったら? もしそれが本当なら現実は何なのか? それこそがまずマトリックスの最初の観客に対する呼び掛けだと思います。現実でも近い将来インターネット上に仮想世界が生まれ、現実と仮想の区別が付かなくなるかもしれません。

 ネオにとっては今居る現実に違和感があったのです。だからこそ彼はその違和感の原因を知りたくてモーフィアスからせがまれた選択の内、何も変わらない日常に戻る方ではなく夢から覚める方を選んだのです。


 人類は疑いからあらゆる物を生み出したと言っても過言ではありません。「何故そうなるのだろうか?」という疑問がやはり発展の源に違いないと私は思っています。疑問こそが科学の始まりなのです。ネオが夢と現実の区別が付かない事を不審がったように。

 身の回りの事を思い込んでただ受け入れるのではなく、良く観察して疑い真実を見つける、これもまたマトリックスが伝えようとしている事なのではないかと思っています。


 ネオが「夢から覚めた」時、世界は人間とマシンの戦争によって崩壊し、マシンはエネルギー供給の為に人類の生体電気を利用し、代わりに人間達に仮想の現実を与えているという世界でした。そしてマシンから逃れたごく少数の人間達が必死に反抗していたのです。


 人間がコンピューターと対立し、戦争したり管理されたりするという作品は良くありますが、マトリックスのように真実を知らないまま管理されているという事こそ、真実を知らずただ世間に従うだけの人類への警告にも思えます。

 人間の味わう喜びや快楽が全て精巧な作り物であったら人間は受け入れられるのか、一つの議題でもあるでしょう。少なくとも私の考えは、完璧なものが不完全な人間に受け入れられるのか、まさに人間と科学の関係性を表しているようでもあると思います。(これに関しては続編の「マトリックス・リローデッド」でも語りたい所です)


 現実を知ったネオは最初は受け入れられなかったものの、徐々に信じ、やがてマシン達と戦うために訓練し始めます。更にはモーフィアスとの戦闘訓練でネオは大事な事まで学びます。


「考えるな。感じろ」

 有名な武術家、ブルース・リーの名言です。モーフィアスも同じ事をネオに対して言いました。

「確かに君にとっては私は強いかもしれないが、それは現実の肉体に関係あるか? 君が吸っているのは酸素か?」

 このモーフィアスの台詞こそ、ネオが疑う事をやめ信じる事を始めたきっかけにもなります。

 マトリックスという仮想現実ではルールがあります。しかし、それを知って破れると「信じて」いれば破る事だって可能なのです。

 現実だって、「思い込む」先入観こそが進化の妨げです。既存のものを打ち破っていくからこそ新しいものが生まれるのです。


 ちなみにネオとモーフィアスとの対決シーンは私も好きなカンフーアクションで、動き一つ一つに香港映画の雰囲気を感じました。実際の所マトリックスはカンフー映画のオマージュが多く、しかもアクション監督が「酔拳」等で有名なユエン・ウーピンなんですよね。


 ネオは預言者と呼ばれる人物に会いに行く為、再びマトリックス内へ入ります。預言者の元に辿り着き、ネオはまたしても「選択」を与えられます。


「スプーンを曲げようとするんじゃない。真実を見透かす事だ。そうすれば結局は自分の問題と分かる」

 預言者に会う前に出会った少年からの助言です。

 スプーンという概念が曲げる事を邪魔しています。曲げるにはスプーンという概念そのものから離れる事、つまり先入観の打ち破りです。スプーンなんて無いのです。


 現実世界に帰る途中、仲間の裏切りによってモーフィアスはエージェント達に捕まり、他の仲間達も死んでしまいます。ネオは預言者の選択を思い出し、モーフィアスの救出に向かいました。


 最初、ネオは自分が救世主ではないと思っていましたが、次第に彼はすべき事を理解し、「信じ」始めました。だからこそ軍のセキュリティを正面から破り、その後モーフィアスを救う事が出来ました。

 預言者はこれから起こる事を言うんじゃなく、きっかけとなる「道」を与えるだけです。そしてネオもその道を理解し、モーフィアスを救うという決断をしました。

「道を知っているのと歩くのは違う」

 モーフィアスの台詞です。この世は実際にやる事にこそ価値があるのです。


 この辺りの銃撃戦は攻殻機動隊やジョン・ウー監督作品みたいに破壊描写が凄まじく、ワイヤーアクションの浮遊感もたまりませんでした。まさに「信じる」からこその業という訳ですな。


 こうして物語は徐々にクライマックスに近づいていく訳ですが、これ以上は控えさせて頂きます(笑)


 代わりに、とでも言うべきか、マトリックスの音楽について語ろうかと思います。

 サウンドトラックCDはマリリン・マンソンやデフトーンズといったロックや、ロブゾンビといったメタル、果てはプロティジーという(日本ではマイナーかも)テクノまで、とにかくマトリックス世界を表現するのに相応しいものばかりです。


 特にサントラの一曲目にある、反キリスト思想で有名なマリリン・マンソンの「Rock Is Dead」はまさにロックンロールです。エンドロールでも流れていました。

 キリスト教に反抗するマンソンが、まさにマトリックスに反抗する人間達の姿と重ねられる、そんな雰囲気です。

(マリリン・マンソンといえばあらゆる名言も残していて、その独特な宗教的かつ哲学的な思想は興味深いものもあります。良ければハードなゴスロックも聴いて痺れてみてネ)


 あとはレイジ・アゲインスト・ザ・マシンというロックバンドの「Wake Up」、こちらもまたエンドロールの最初で流れていて、サントラでは一番最後に収録されています。

 レイジアゲインストはロックとヒップホップを融合した独特なスタイルで、黒人差別等弱者から搾取する強者に対する社会批判で有名でもあります。

 真実を隠し民衆を支配する政治家達への批判ですが、まさにマトリックスで真実を隠され仮想世界に生きる人間達の姿に似た所があります。

 実はこの曲こそマトリックスの監督であるウォシャウスキー兄妹がインスパイアを受け、脚本の大部分を決めたといわれています。


 以上、マトリックスの個人的評価(もはやただの賞賛)でしたが、全体的に言えばマトリックスはアクションや設定世界観はさながら、何より観る者に対する「メッセージ性」が素晴らしい映画でした。

 勿論ただアクションや難解な内容を「考える」のも良いでしょうが、その裏にあるメッセージを「感じる」のはいかがでしょうか。


 という訳でここまでご覧頂きありがとうございました。

 映画ってのは良いもんですな。

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