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王女な私は死にたくない  作者: 大久保周
王場内革命編
1/7

1 王女な私は死にたくない

 今回はお読みくださりありがとうございます。この小説は私が書いている他の小説を書き上げるためにリハビリとして書き始めました。内容は全く関係がございません。

 誤字脱字等ありましたらその都度教えて頂けると幸いです。

 何時かの、何処かの時代で誰かが言った。



「民の為になら賢王どころか愚王にでもなろう。しかし愚王の果てに、民への思いも消えたなら──甘んじて火刑に処されよう。それが王族足るものの努めである」



 なら今から火刑に処される少女が愚王なのは言うまでもない。どの世界線の、どの時代の、どの王国でも自分ほどの愚王は居ないだろう、と記憶を思い出した少女は思った。


 まだ年端もいかないその少女こそ、この国、シャロリュワーニュ王国の国王である。三日三晩牢に入れられていた結果、彼女の服は埃と汗と涙とですっかり光沢を失っているし、髪も最後にセットしたまま手入れひとつされていない。湯編みはおろか食事すら満足に取ることが出来ていなかった彼女は磔台へ固定され、民の顔が見えたとき漸く思い出したのだ。


 己の前世の記憶を。


 ある者はその手に石を持ち、またある者は松明をその手に持っている。呪われてしまえと誰かが言った。人成らざる者と誰かが言った。その言葉は大きなうねりとなって少女のもとへ届く。


 少女はそれを見て嗤い、そして嘲笑った。


 少女の心には民の怒りも苦しみも突き刺さらなかった。なぜなら突き刺さったのはこの世で生を受け、磔台に上がるまでの記憶が酷く滑稽に思えたからだ。


 嗚呼、どうして今になってこんなこと思い出すのだ、と少女の心は叫んだ。


 自分が何故此処にいるのか、この世界でどのように生きてきたかまで全てを理解して笑い飛ばした。

 何故笑うのか? そんなもの、意味がないからだ。


 たとえ今までの自分の行いを後悔しようと。


 たとえ自分を捕らえた相手を怒ろうと。


 たとえ現状から逃げようと努力しようと。


 神に祈ろうと、誰かに助けを求めようと変わらない。

 これから、たった今から自分が死ぬことには変わりない。


 であれば──すべて馬鹿らしくなってもおかしくはないだろう。



「さぁ、神へ祈りを。最後に懺悔することを許します」



 神官の衣服を纏った男が冷たい目を向けながら義務的に告げる。そこに集うすべての視線をその身体で受け止め、少女は考えた。もし、記憶を取り戻していない私だったらどうしただろうか、と。「どうして!? 私は王女なのよ!」と騒ぎ立てていたに違いない。


 しかし本来の行動とは相反して、記憶を取り戻した少女は「格好よく死にたい」と思った。


 故に。



「妾はシャロリュワーニュ国王アレクサンドリアの娘、ルルシャロワ=デ=ルイワナ=シャロリュワーニュ! 火刑に処すならば勝手にすればよい! 懺悔などするものか! 妾は妾の為に生き、妾の意思で罰を受ける! 民草よ、刮目するがよい! その心に刻み付けよ! これが妾の最期である!」



 どうだ。この世界なら厨二病的発言も格好よくなるだろう!! と考えて実行した。

 彼女は言いたいことは言ったと言わんばかりに、満足そうに微笑んで、ゆっくりと瞳を閉じ、投げ付けられた炎の熱さにその身を堕とした。




 そうして少女は嗤いながらその肢体を炎になめとられて死んでいった。





「うにゃ?」



 そしてぱちっと目が開いた。それはもうぱちっと。よくわからない声を上げながらすっきりと起きた。そして睫毛を可愛らしくぱさぱさと上下に動かしながら、やわらな抵抗をする何かの上を転がり。


 そして落ちた。


 おでこを床に勢いよくぶつけてから、たっぷり十秒悶絶してよいこらしょ、と起き上がりぺたんとおしりを下ろした。


 じんじんするおでこを左手で押さえながら、薄目で辺りを見回せば大きな鏡が目に入る。その元へ膝立ちで辿り着き、ぽてっ、と音を立てて座り込んだ。妙にしらひらした肌着が重力に従って落ちたところで、彼女は初めて自分の姿を見た。


 これが噂のゆるふわか! と言わんばかりのゆるふわ銀髪ビスクドール少女が涙目でおでこを押さえながら鏡の向こうに居たのだ。


 それも齡五つの姿で。


「ふぁ!?」


 意味の分からないことを叫んで、ルルシャロワ=デ=ルイワナ=シャロリュワーニュ第一王女はぶっ倒れた。

ここまでお読みくださりありがとうございました。

作者はなるべく三日に一度程更新したいと考えていますが更新速度は未定です。よろしくお願いいたします。

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