第八話 不運の原因、それは話を聞かなかったこと
「つ……強すぎるッスよ!」
「なんで、コイツがいるんだよ! 聞いてないぞ!」
今まさに戦闘中の新人ハンター二人――大崎だいご、滝川みのる。
一時間前、『ゲートの周辺で試験の練習をするため、その付き添い』という依頼が来た。
二人は外に出たのは何度もあったが、依頼として、仕事としては初めてだった。
ゲートの周辺で、いざとなったら助けに入るだけ。
特に危険のない、簡単な仕事だと思って、ちゃんと話を聞いていなかった。
十分ほどで周辺のは狩りつくしてしまったので、全員で早めの休憩をとった。
その後、「もう少し奥まで行こう」と言ったのが、災いの元凶だった。
しばらく進んで、少し開けた場所に入った。
その中央に着いた瞬間――
グルギュァァ、と聞きなれない咆哮が聞こえた。
声の聞こえた方角を見ると、そこには大きな岩があり、そこから大ジャンプをして、岩をも飛び越え――
ツメを向けて、ハンターたちに襲いかかってきた。
「くっ……!」
リーダーが大剣でガードし、
「せやっ!」
もう一人が槍で押し返した。
すると、今度はグルガァ――と吠えた後、突進してきた。
もう一度同じように対処するつもりだった。
だが、予想以上に威力が強く、ガードしきれなかった。
ハンター二人が吹っ飛ばされる。
二人は防具を装備していたおかげで、大きなダメージを受けずに済んだ。
しかし、その後も勢いは緩まず、後ろの五人へ向かう。
「避けろぉ!」
リーダーが大声で叫んだが、若干遅く、回避できたのは一人だった。
反応に遅れてしまった他の四人は、叫び声を上げながら、避けようとした。
だが躱しきれず、突進攻撃に身体の一部が当たってしまい、吹っ飛ばされる。
うち二人は木に頭を打ち、気絶してしまった。
再び、グルギュァァ――と、さっきより大きな咆哮をあげて、振り向いた。
リーダーは、その避けることがけた女の子に向かって、
「君! ゲートまで行って救援要請してきてくれ」
「は……はい!」
来た道には敵がいた。なので女の子は迂回してゲートへと走り出す。
「どうするんッスか! リーダー!」
「このまま引き下がるわけにはいかん! どうにかして時間をかせぐぞ」
だが敵の攻撃は一回一回が重く、さらに速いせいで、二人は全く反撃できず、防戦一方になる。
戦闘開始から十五分ほどたった。だが、援軍は来ない。
「くっ……! 援軍はまだッスか!?」
「もう少しで来るはずだ。踏ん張れ!」
防具があるといっても、ダメージは当然通る。
さらに疲労も蓄積されて、身体は重くなり、動きが鈍くなる。
敵は、また距離を置いた後、力をためている。おそらく、突進の予備動作。
「あれは……突進がくるッス! リーダー、避ける準備を……!」
だが、けが人が後方にいるため、避けてしまえば後ろの誰かが殺されるかもしれない。
「プロの意地だ。なんとしてでも……!」
「じゃあ……おれもッス!」
そう言って、二人はガード態勢に入る。
だが、逃げたくても逃げられない、まだ死にたくない、誰か助けてくれ、と思っていた。
グルル、と喉を鳴らし、突進しようとしたその刹那――――
横から黒い服を着た、黒髪の少年が飛び出してきた。さらに、右手の刀で、敵の腹を斬りつける。
血がブシャッと噴き出て、モンスターはうめき声をあげる。
援軍かと思ったが、二人の知っている人ではなかった。
「だ、誰ッスかあの人?」
「誰だ、アイツは……?」