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絶対不運の実力主義者《アビリティエスト》  作者: Haruma
第一章 超絶不運の始まり編
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第七話 一旦落ち着いた不運

 


 ここで、悠磨が言ったのは、


「すみませんが、今はちょっと言えません」


(怪しまれるだろうが、これでいい。面倒な追及を避け、とりあえず早くここから移動して、安全な場所まで行きたい)



 女の子の反応を見ると、やはりと言うか、首をかしげている。


(とりあえずこの世界の情報も欲しいが……)


 まず一番に気になったことを、悠磨は質問した。



「そっちこそ、どっから来たんですか」

「えっと、ホントは何人かで試験の練習できたのだけど、マセイに出くわして、必死で逃げたら途中ではぐれてしまいまして……」


 知らない単語が出てきたが、それ以上に気になったワードがあるので、先にそれを尋ねる。



「試験? 試験ってなんの?」

「えっ、高校のですけど」


(はあァァァ!? 高校!? こんな荒廃した世界に!? 世界観どうなってんだよ!?)


 心のなかでツッコんだ。

 そして、いったん落ち着いて、


「その高校どこにあるの?」

「それが、道に迷ってしまって……それに、外に出たのは初めてなので……」


(外? とゆうことは、街を防壁で囲んでるとか、そういう感じか?)


「とりあえず、その高校とやらに戻るために――」



 その時、誰かの叫び声が聞こえた。五、六人くらい、さらにモンスターの咆哮も。


「あっちからだ。おそらく君の仲間だろう。走れるか?」

「歩くくらいなら大丈夫ですけど、走るのはちょっと……」

「じゃあおぶるから、早く!」


 悠磨はしゃがんで、背を向けた。



「いや、そ……それは……」

「いいから早く!」

「わ、わかりました……」


 悠磨は女の子を背負って、腹にリュックをかけ、片手に武器を持って走る。



「あの……武器に、私に、お……重くないのですか?」

「いや、全然軽いよ」


 軽いと言われて、おんぶされて、しかも密着状態。みずなの顔が赤くなって、恥ずかしがっている。

 だが、顔が見えないせいか、悠磨はそれに全く気付かず、走りながら突然質問をした。



「そういえば名前は?」

「ふえっ!?」 

「あの……名前は?」

「あ……えっと、久遠くどうみずなです。みずなって呼んでください。それで君は?」

「俺は、天倉悠磨。呼び方は……何でもいいや。よろしく」




  ※  ※  ※  



 少し走ったところで、大きな岩が増えてきた。あまり見晴らしがいいとは言えない。

 なので、モンスターに目の前で遭遇するのを避けるべく、耳を澄まし、慎重に早歩き。

 すると突然、



「あの、ユーくんは――」

「へ?」


 いきなり名前どころか、あだ名を勝手につけられていた。確かに何でもいいとは言ったものの、出会って間もなくあだ名で呼ばれるのは予想外だ。



「あ、えっと……昔の知り合いに……、その…………」


 ごにょごにょしながら言っていたので、悠磨はよく聞き取れなかった。



「ご、ごめんなさい。嫌ですよね。えっと……なんて呼べば……」

「いや、いいよそれで。というか、敬語使わなくていいよ」

「え……?」

「だって、さっきぶつかった時のしゃべり方のほうがなんか自然だった。素って感じでさ。敬語、無理に使わなくていいよ。それに、多分同い年だし」


(なんか違和感あったんだよな。敬語の使い方、若干違うし。そういや、俺もいつの間にか、敬語からため口になってたな)



 違和感を敏感に感じとり、鈍感主人公どころか、普通の人すら気づかないところに悠磨は気づく。運が悪いからこそ身についた実力。


 だが女の子は、はわわあぁ――と動揺しながら、



「さ、さっきの……忘れて!」

「え?」


 どうゆうこと? と尋ねる前に、みずなが言った意味を悟り、



「あ、あーそっちかー」

「お……思い出さないで!」

「……はい」


 耳元で怒鳴られ、悠磨は黙った。別の意味で鈍感だった。

 



  ※  ※  ※




 しばらくすると、岩が減ってきて、枯れ木が多く見受けられるようになってきた。

 そして、今度はみずなから話しかけられる。



「ユーくんはさあ、なんでそんなに強いの?」

「…………運が悪いから」

「え……? どういうこと?」

「俺は運が悪いから、生き延びるために、努力して、実力をつけた。ただそれだけ」

「あ……そう……」


 みずなはそれっきり、話しかけてこなくなった。




 




 やがて、葉っぱのついた木が視界に入った。

 うまく木や岩を避けながら、速めのスピードで走っている。

 ここで悠磨は、また新たな疑問が浮かぶ。


(そういえば、呼吸はちゃんとできてるな。空気は薄くねえし、それどころか酸素もちゃんとあるみてえだ)


 木と空を一瞬見た後、


(俺は運が悪いから、空気か、もしくは酸素がない星にワープされてデッドエンド、って可能性もあったんだがな。そういや、なんでこんなに酸素があるんだ? 気体として酸素が、しかも二十パーセントくらいある星なんて地球以外に聞いたことねえぞ。やっぱここは異世界か? にしても、日光もねえし、どうやって光合成すんだ? おまけにモンスターはたくさんいるだろうから、枯渇していてもおかしくねえはずだが…………)


 そう考えているうちに、森に入る。


「いた。アレか」


 やっと見えた、声の発生源。

 状況は、さっきとは違うモンスターが一体。戦闘態勢の人が二人。後ろに負傷者と思われる人が四人。


 悠磨は百メートルほど手前で、みずなとリュックをおろした。



「歩けるか?」

「うん、一応……」

「じゃあゆっくりでいいからけが人たちと合流してくれ。俺はあいつをぶっ倒してくる。だからコレ借りるぜ」

「でも……プロのハンターいるし、それに、疲れてないの?」

「問題ない。あと、このカバン持っててくれ」

「え……うん、分かった」


(プロのハンター……か) 


 悠磨は一度深呼吸をした後、気づかれないように、モンスターへと側面から接近し始めた。




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