第十三話 ツッコミが止まらない不運
(いやいやいやいやおかしいでしょ!? いろいろと! ツッコミどころありすぎ!!)
世界観崩壊レベルの、想像を大幅に上回る変化に、悠磨はかなり混乱している。
(まずなんで空は青い! 太陽が輝いている! ていうか太陽なの!? 外でそんなモン見てねぇぞ! それに外と景色変わりすぎ! あんなモンスターいるのに! さっきのシリアスな雰囲気どこ行ったんだよ!!)
またまた心の中でツッコんでいる。
(しかも文字は独自言語かな、と思ってたのに何なんだ! ほぼ日本語と同じじゃねぇか! しかもなんで昭和っぽいんだよ!? 中世ヨーロッパだったら現代知識で無双、近未来SFだったらマンガ脳モードでソッコーで使いこなす、とか思ってたのに、なんでこんなに微妙なとこなんだよ! 微妙にローテクなだけじゃねぇか! ほぼタイムスリップしてきたようなモンじゃねぇか!!)
ツッコミが止まらない。何度も言うが、心の中でだ。
「とりあえず、みんな病院に行こうか」
そう理事長が言い、みんなは真っすぐ歩いていく。
悠磨は皆についていきながら、街を見る。
(電柱も街灯もあるから電気はあるっぽいな。でもなんでこんなに日本と似ている? 偶然……にしては出来過ぎてる。誰かが持ってきたんか? どうやって…………いや、待てよ。俺がワープか召喚かでこっちに来たが、その逆があるとすれば……)
そんなことを考えているうちに、病院に到着していた。
白い塗装で、五、六階建ての建物。日本人なら一目見て病院だとわかる見た目。
中に入ると、何人かがイスに座っている。受付もある。
(どう見たって、日本そっくりじゃねぇか)
すると理事長が、
「すみませーん、予約していた八人、連れてきました」
(予約? しかも八人……。俺以外には、ハンター二人、みずな、あと名前は知らないが四人の七人だ。つまりコイツは……よし、あとで問い詰める材料が増えた)
そう考えていた時、理事長がニヤニヤしながら悠磨を見つめる。
「……何ですか?」
「いやぁ~なんか悩んでるみたいでさ」
「当然ですよ。ここに来るのは初めてなので」
「そっかぁ、ここに来るのは初めてかぁ」
「なにか間違ったことでも言いましたか?」
「いーや別に~」
含みのある言い方をしていたが、あえて気にせず話を続ける。
「そういえば、自分はここの住人ではないし、そのうえお金も無いのですが……」
「だいじょうぶだよ~、今回は僕がいろいろやっとくからさ」
「そうですか。ありがとうございます」
「いえいえ~。あ、そうだ。後で君とゆっくり話がしたいから、僕はここで待っているね」
(そっちから誘ってくるとは! 願ってもない話だな)
「分かりました」
悠磨は冷静に答えた。
悠磨以外の七人は理事長との会話中に呼ばれていた。やがて悠磨も呼ばれ、診察室に連れてこられた。
中に入ると、目の前には女医がイスに座っている。
指示されるままに、悠磨はベットに座った。
「それでは、治療を開始します」
「あのー、自分たいしたケガはしてないですけど」
「それでは、上半身全部脱いでください」
(俺の話無視かよ!)
だが、いちいちツッコむのは面倒だったので、素直に言われた通りにした。
悠磨は、着ていた黒のパーカーと、その下の黒のシャツを脱いだ。正確に言うと、今はモンスターの返り血でかなり赤く染まっている。
するとナースがカゴを持って現れ、
「では、その服をこのカゴに入れてください」
まさか、捨てるんじゃないよな……と思い、
「あの……その服、捨てないでください」
「いえ、洗濯するだけです」
「あ、そうですか」
どうやら思い違いだったと一安心したが、ふと何かに気づく。
(ん? 洗濯機でもあるのか?)
そう思った瞬間――
「水の神よ、麗しの…………」
さっきのナースが、カーテンの向こうで、突然なにか言い始めた。
「え……? えっと、何してるんすか?」
「洗濯ですよ」
「えっと……さっきから聞こえる声は……?」
「魔法の詠唱ですよ」
(魔法あんのかよ!? ていうか、魔法で洗濯!? どうやって? つーか洗濯機無ぇの!?)
心の中でツッコんでいると、ゴゴゴゴ――と音が聞こえてくる。洗濯の音だろう。
今度は目の前の女医に、
「それでは、治療を開始します。ベットに横たわってください」
「あ、はい」
言われた通りに横になる。すると、女医は悠磨の身体に手を当て、詠唱を始める。
(魔法で治療か……。よく知らねぇことだから、突然の不運に警戒しないと。さすがに治療中に不運が起きたら、シャレになんねぇ。でも身動きとれねぇし……いや、なにが起きるか予測はしねぇと。起こりうるパターンは……)
だが、そんなことを考えてるうちに十秒が過ぎ、
「これにて終了です。お疲れ様でした」
「洗濯も終わりました」
「え……あ、はい。ありがとうございました」
(終わるの早っ!)
心の中でまたツッコミながら、洗濯し終わった服を着る。
(おお、さっきより身体が軽い。なるほど、医療分野はかなり高レベルだろうな。服もあっという間にキレイになってる。……後で魔法についても調べねぇとな)
診察室を出ると、待合室に理事長がいた。
ほかの七人はまだ治療中なのか、まだいなかった。
「じゃあユーマくん。ちょっとついてきてくれない?」
「ほかの人達はどうするんですか?」
「それはだいじょうぶ。僕の知り合いに任せているから」
「そうですか。分かりました」
(これはチャンスだ。まずはこの世界の情報、それと生活費と住む場所をもらっとかねえと話にならねぇ。交渉材料は全然無ぇが、俺の交渉術でどこまでいけるか……。そんでコイツが俺の事をどこまで知ってるのか問い詰めてやる)
悠磨は頭の中で、何をすべきか決めていた。理事長はそれに気づいたのか、またニヤニヤしている。そのことに、悠磨は気づけなかった。




