ウォーキング・ホームズ
小柄な体躯(たいく)と、それに見合わぬ食欲を合わせ持つ男、遠回理道草(とまわり・みちくさ)はそれ以外に特に目立ったところのない優男であるが、実は、生まれもっての鋭い観察眼と推理力を持つ、人の心を見抜く特殊な能力を持っていた。
しかし、その才能を発揮する機会もさほどないまま時が過ぎる。
……しかもいとこであり、親もいなくなってしまった筋金入りの不良だった少女、山野辺(やまのべ)タンポポを守るために、《ある事件》から彼女を解放した際、彼の幼馴染であり、今は亡き人となっている想い人である女性、《囲炉裏薪(いろり・まき)》の存在によって、彼は、自分の趣味である『散歩』と、それを一緒に歩くことによって、己の能力である観察力や推理力、直観力といった力をつかい、依頼人の心の奥にひそむ闇や、わだかまりなどを『やさしく』解決することによって報酬をえる仕事、――『散歩屋』――という変わったものを始めることとなる。
彼に依頼してくるひとたちは、みな、表面からは見えない、ちょっとした些細な過去の傷や、または、大きなおおきな埋められない痛みの空白によって、縛られている。
そこに、相手を弾劾(だんがい)するでもなく、追求をするでもなく。――ただ、一人の人間として、その人ときちんと寄り添おう、聴かせてもらおう、という心地よくも温かい姿勢によって、今日も誰かが、彼のその『力』によって、こころを軽くしているのであった。
ささいな〝棘〟を散歩の途中に気がつけば抜いている男、遠回理道草の、ほんの少しだけ変わった『散歩屋』事件ファイル集。
今日も誰かと、彼は道を歩いている。
はじまり、はじまり。
しかし、その才能を発揮する機会もさほどないまま時が過ぎる。
……しかもいとこであり、親もいなくなってしまった筋金入りの不良だった少女、山野辺(やまのべ)タンポポを守るために、《ある事件》から彼女を解放した際、彼の幼馴染であり、今は亡き人となっている想い人である女性、《囲炉裏薪(いろり・まき)》の存在によって、彼は、自分の趣味である『散歩』と、それを一緒に歩くことによって、己の能力である観察力や推理力、直観力といった力をつかい、依頼人の心の奥にひそむ闇や、わだかまりなどを『やさしく』解決することによって報酬をえる仕事、――『散歩屋』――という変わったものを始めることとなる。
彼に依頼してくるひとたちは、みな、表面からは見えない、ちょっとした些細な過去の傷や、または、大きなおおきな埋められない痛みの空白によって、縛られている。
そこに、相手を弾劾(だんがい)するでもなく、追求をするでもなく。――ただ、一人の人間として、その人ときちんと寄り添おう、聴かせてもらおう、という心地よくも温かい姿勢によって、今日も誰かが、彼のその『力』によって、こころを軽くしているのであった。
ささいな〝棘〟を散歩の途中に気がつけば抜いている男、遠回理道草の、ほんの少しだけ変わった『散歩屋』事件ファイル集。
今日も誰かと、彼は道を歩いている。
はじまり、はじまり。
小さな哲学者
2016/04/23 18:58
(改)
第二歩 代行者の憂鬱
2016/04/24 09:31
(改)
第三歩 コイントスの世界
2016/04/25 13:40
第四歩 『先生』
2016/04/25 20:09
(改)
第五歩 五文字の誓約
2016/08/12 10:13