14. 神田淡路町 竹むら
現代風に言えば、スイーツを出す店、なんというのだろう、パーラーだろうか?
だが、ここを見て、かつそれなりに時代小説を知った方は、例外なく『甘味どころ』というのだろう。
そんな店だ。
ここは往時、喫煙可能だったが最近はほかの神田の店同様に禁煙になった。
煙草が吸えない飲食店なんて、と普段思う私でも、それは実に正しい判断だと思う。
この店の雰囲気、店の味は、煙草を喫むにはちと、もったいなさ過ぎる。
ここは、いわゆる甘味――ぜんざいや汁粉、揚げまんじゅうなど――の店だ。
周囲の店、たとえば藪蕎麦、まつや、松栄亭、ぼたん、いせ源などで酒を飲み、飯を食った後、
知った人はここの引き戸をがらりと開け、桜湯や茶でぜんざいを飲んで締める。
ここのぜんざいは私もよく知る関西風ではなく、ゆるりと伸ばした粟の上から熱々の餡子をかける関東風だ。
これがうまい。
私の父世代くらいまでは、『酒飲みたるもの甘味に目をやるべからず』という不文律があったが、私はそんなものは気にしない。
酒を飲めば甘味がほしくなるのは当たり前だ。もっとも、体に悪いという一説もあるようだが。
ここは入れ込みとテーブルがある一階もさることながら、二階が素晴らしい。
まさしく往時の江戸の甘味どころとはこうだったのだ、と思わせる。
料亭の二階のような畳敷きに、座卓が置かれており、そこでおもうさまぜんざいを食べる。
私が行ったのはあいにく悪友と二人で、色気も何もなかったが、女性と行くと最高だろう。
ただ、めったに客を二階へは呼ばぬというから、望外の幸運だったのかもしれない。
先日、娘を連れてここへ来た。
家に残った妻には揚げまんじゅうを持ち帰りで買っていき、自分は粟ぜんざいを頼み、娘に何がいいかというと、
「メロンソーダ」だった。
ちゅうちゅうソーダを飲む幼い娘に、店員さんがくだすった心遣い、気配り、それらはなんともありがたかった。
そして手前味噌ながら、騒ぎもせず飲んだ後、娘が『ごちそうさまでした。おいしかったです』とお辞儀したときの、調理場の店主の顔。
まことに、ありがたかった。




