表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/21

14. 神田淡路町 竹むら



   現代風に言えば、スイーツを出す店、なんというのだろう、パーラーだろうか?

  だが、ここを見て、かつそれなりに時代小説を知った方は、例外なく『甘味どころ』というのだろう。

  そんな店だ。

  ここは往時、喫煙可能だったが最近はほかの神田の店同様に禁煙になった。

  煙草が吸えない飲食店なんて、と普段思う私でも、それは実に正しい判断だと思う。

  この店の雰囲気、店の味は、煙草を喫むにはちと、もったいなさ過ぎる。


   ここは、いわゆる甘味――ぜんざいや汁粉、揚げまんじゅうなど――の店だ。

  周囲の店、たとえば藪蕎麦、まつや、松栄亭、ぼたん、いせ源などで酒を飲み、飯を食った後、

  知った人はここの引き戸をがらりと開け、桜湯や茶でぜんざいを飲んで締める。

  ここのぜんざいは私もよく知る関西風ではなく、ゆるりと伸ばした粟の上から熱々の餡子をかける関東風だ。

  これがうまい。

  私の父世代くらいまでは、『酒飲みたるもの甘味に目をやるべからず』という不文律があったが、私はそんなものは気にしない。

  酒を飲めば甘味がほしくなるのは当たり前だ。もっとも、体に悪いという一説もあるようだが。


   ここは入れ込みとテーブルがある一階もさることながら、二階が素晴らしい。

  まさしく往時の江戸の甘味どころとはこうだったのだ、と思わせる。

  料亭の二階のような畳敷きに、座卓が置かれており、そこでおもうさまぜんざいを食べる。

  私が行ったのはあいにく悪友と二人で、色気も何もなかったが、女性と行くと最高だろう。

  ただ、めったに客を二階へは呼ばぬというから、望外の幸運だったのかもしれない。


   先日、娘を連れてここへ来た。

  家に残った妻には揚げまんじゅうを持ち帰りで買っていき、自分は粟ぜんざいを頼み、娘に何がいいかというと、

  「メロンソーダ」だった。

  ちゅうちゅうソーダを飲む幼い娘に、店員さんがくだすった心遣い、気配り、それらはなんともありがたかった。

  そして手前味噌ながら、騒ぎもせず飲んだ後、娘が『ごちそうさまでした。おいしかったです』とお辞儀したときの、調理場の店主の顔。

  まことに、ありがたかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ