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《Last World Online》  作者: 黒藤紫音
1章:出会い
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可愛い子

 街に戻った俺とツキノは、中央広場の掲示板を管理する、クエストショップで受け付けをしていたNPCに、クエストクリアを告げた。


「おめでとうございます。では、これは報酬のアイテムです」


 そう言って手渡された素材アイテムを、ツキノはアイテムストレージに収納した。


「またのお越しを」


 そう声をかけるNPCに軽く会釈をし、俺たちはクエストショップから離れた。


「ああ、これでようやく武器を新調できます……」

「それは良かったな」

「はい! ……あ、シレンさん」

「うん?」


 ツキノは、数歩前に出て、俺を見上げながら言った。


「アイテムを分配しないとですし、カフェに立ち寄りませんか?」

「そうだな。じゃああそこでいいか?」


 俺が指差したのは、俺とツキノが、最初に中央広場で会った時、事情を聞くために入ったカフェである。


「はい、ではそこで」


 ツキノがそう頷くのを見て、俺はカフェへと足を進めた。

 数歩遅れてツキノがついてくる。



 カフェに入り、適当にNPCに注文を済ませた俺たちは、テーブルについていた。


「じゃあ、分配するぞ」

「その前に、少しいいですか?」


 俺がアイテムストレージを開こうとすると、ツキノがストップをかけた。


「何だ?」

「その前に、話してくれませんか?」


 話す?

 話すって……ああ、クエストモンスターのいる部屋に入る前のあの話か。


「なんで俺が、銃士(ガンナー)の割には一発の威力が高いのかって?」

「はい。……普通はできませんよね、《フル・バースト》とはいえ、二割程度残っていたクエストモンスターのHPを0にするなんて」


 《フル・バースト》。

 これは《ツイン・バレット》の発展系で、マガジンに入っている全ての弾丸の威力を、たった一発に込めて撃ち出すスキルだ。一度の発動でフルに入っている弾丸全てが無くなるが、代わりにかなりの高威力が期待できる。

 しかし、銃はTEC重視のため、威力が低い。全弾の威力を一発に込めるといっても、そこまでの高威力は期待できないのである。少なくとも、クエストモンスターのHPを二割も一撃で削れるほどの威力はない。


「どうしてですか?」

「んー、そうだな。別に隠すことでもないから言うけど」


 俺は何も気兼ねすることなく、あっさりと言った。


「俺、レベル160台なんだ。クエストモンスターって言っても、あのレベルなら、さして問題ない」


 「ビッグ・マッド・ドール」は、レベル130。

 中堅者からすると少々手間取るが、俺は上級者にランクされるぐらいのレベルだ。

 そんな俺には、さして強いモンスターでもない。


「……それだけですか?」

「それに、俺昔は剣を使ってたから。それの名残で、ATKが銃士(ガンナー)の割には高いんだ」

「……え?」


 俺があっけらかんと言うと、ツキノは呆気にとられたような顔をしていたが、すぐに気を取り直し、口を開いた。


「武器を変えたんですか?」

「ああ」


 LWOのプレイヤーは、基本的に、ずっと一種類の武器を使い続ける。

 別に他の武器に変えることを禁じられているわけでもないのだが、スキルやステータスのこともあって、変えるのは面倒だと考えるプレイヤーが多いのだ。

 そんなプレイヤーたちの中では、俺は少々異端だろう。


「……そうですか、初めて出会いました……」


 ツキノは、俺を珍しい物を見るかのような目で見ていた。

 その視線は、不快とは言わないが、少々居心地が悪い。


「あのさ、ツキノ」

「……あ、ごめんなさい!」


 俺が居心地悪そうにしているのに気がついたのか、ツキノは謝罪した。

 謝った後、少し落ち込んでいるようで、俯いていた。

 ……なんとういうか、本当に素直な子だ。


「気にしなくていいよ。怒ってるわけじゃないし」

「でも……」

「んー、悪いと思ってるのならさ、俺のお願い聞いてくれる?」

「あ、はい。私にできることなら!」


 顔を上げて、そう強く頷く。

 本当、可愛い子だな。


「笑って」

「え?」

「君みたいに可愛い子が、落ち込んでいるのを見るのって、見てて辛いよ。だから笑って?」

「っ!?」


 俺がそう言うと、ツキノは顔を真っ赤にしていた。

 あれ、何か変なこと言ったかな?

 思ったこと口にしただけなんだけど。


「どうしたの?」

「い、いえ。なんでもありません……」


 なんでもないようには見えないけど…まあ、本人がそう言っているのならいいか。

 顔を赤くさせているツキノをしばらく眺めていると、NPCの店員が、コーヒーとミルクティーを届けてくれた。

 俺は目の前に置かれたカップを手に取り、コーヒーを飲む。うん、美味い。

 ちらりと視線を向けると、ツキノもミルクティーを飲んでいた。

 相変わらず、顔は赤いままだ。見ていて飽きない。


「あの、あんまり見ないでください…!」


 眺めていると、恥ずかしくなったのか、ツキノは顔を隠してしまった。

 残念。



今のところ、定期的に更新できてますが、それは書き溜めていた貯金があったからで、そろそろそれも尽きるので、更新は遅くなってしまうと思います。


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