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《Last World Online》  作者: 黒藤紫音
7章:後日談
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もう、この手は離せない

一部終了です。


「……おい」

「これは……」

「え、ちょっと?」

「…………ふむ」

「え?」


 表示された画面を見て、俺たちは三者三様ならぬ五者五様の反応を見せた。

 ウインドウに表示されたのは――――ギルド設立の申請用入力画面だ。


「待て待て待て待て、おいこらワタル」

「あん?」

「どういうことだ?」

「言っただろ、いっそギルド組むかってさ」


 ……そういや、ニーズヘッグのクエクリアした後、そんな話になったような……。


「で、俺ら今全員フリーじゃん? 俺とシレンは最初からソロだし、カノたちだって抜けたんだし。ツキノちゃんもっしょ?」

「え、はい。やめましたけど……」

「じゃあ、ギルド組めるじゃん?」


 いやその理屈はおかしい。

 つーか、俺が一番おかしいと思ってるのはそこじゃねぇ。


「なんで、俺の名前が、リーダーの欄にある?」

「やるとしたらシレンだろ?」

「おい」


 さっきから「おい」しか言ってないぞ俺。


「お前な……」

「ツキノちゃんは嫌か?」

「ふえ?」


 文句を言おうと立ち上がろうとしたところで、ワタルがツキノに話を振った。

 そしてツキノが考え込むそぶりを見せた以上、俺は何も言えなくなる。


「……私は」


 そこでツキノは一度言葉を切り、俺を見据えた。

 俺はその視線を、まっすぐに受け止める。

 数秒見つめあった後、ツキノは顔を緩めると、ワタルに向き直った。


「私はギルド作るのに賛成です。シレンさんや、皆さんがいるのなら」


 ……そんなことを言われたら断れるわけもない。

 というか、俺ツキノに甘すぎじゃないか?

 はぁと俺が溜息をつくと、周りの奴らがにやにやと笑っていた。ええい笑うな。


「シレンさんは……嫌、ですか?」

「嫌なわけないだろ」


 あ、即答してしまった。

 ツキノが嬉しそうににっこりと笑う。


「それなら、シレンさん。一緒にギルド組みませんか?」

「…………ああ、うん。わかった。組もう」


 冷静に考えて、ツキノに逆らえるわけないんだよなぁ。

 いや、逆らうというか、ツキノを悲しませるようなことできるわけがない。……甘すぎるよなぁ。


「んじゃあ確定な。メンツは俺らで」

「問題ないわー」

「…………構わない」

「ああ」


 ワタルやシズたちも問題ないようだ。

 ツキノは仲間たちのその様子に、にこにこと笑みを深めていた。


「まあ、立ち上げるのはいいけど……ギルドリーダーはやらないからな、俺。変更しろよ?」

「え、やだ」

「シレンでいいじゃない」

「ふ・ざ・け・ん・な」


 俺がドスの効いた低い声でそう言い放つが、全員どこ吹く風だ。

 ツキノだけはびくっとしてたけど。


「えー?」

「なーんーでー?」

「…………というか、この面子でお前以外にできる奴いると思うのか」

「ワタルはそういうキャラじゃないし、スズは論外。カノも向いてないし、俺も人を率いるのは無理だ。ツキノも無理だろうし」

「……消去法じゃねえか」


 そして納得してしまえる自分が腹立たしいわ。

 内心で舌打ちしていると、ワタルがへらっと笑う。


「んじゃあ、これこのまま提出ーと」

「待てって言ってんだろうが!」

「待たねえよっての」


 そう言い残し、ワタルがその場から逃げ出した。

 そのまま、あっははと笑いながらスズが、カノが、シズが逃げる。


「待てコラお前らァ!」

「やだねー!」

「んべーだ」

「…………ふっ」

「諦めろ」


 遠ざかっていくあいつらの背中を追うため、俺も立ち上がった。

 ……と、置いていくわけにはいかない。


「……ほら、ツキノ!」


 手を差し出す。

 いつぞや彼女の手を握った時とは違って、彼女が手を握ってくれるのを待つように。

 ツキノは、一瞬目を見開いた後、柔らかく笑って。


「……はい!」


 俺の手を取った。……小さな手だ。

 ぎゅっと、離さないように力を込めて握る。


「……逃げるなお前らァ!」

「待ってくださーい!」


 俺たちは駆け出した。

 ……もう、この手は離せないだろうな、なんて考えながら。



≪一部終了≫



二部も頑張りますー。

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