PvP
わりと一方的な戦いになってます。
PvEとPvP。
どちらがより複雑な戦いかと訊かれれば、それは間違いなくPvPだ。
PvPには相手との駆け引きが存在し、多少のレベル差はそれで埋めることができる。
勝敗はどちらがより強いかでなく、どちらがより上手く戦えるかで決まるのだ。
「ふん!」
ヒュアデスが剣を振り下ろした。
その顔は、自分が勝利することを少しも疑っていない表情をしていた。
銃士と剣士の一騎打ちなら、確かに後者のほうが勝率は高い。
だが、ウェリアスクラスならともかくお前程度の剣士なら。
振り下ろされた剣が俺に当たる前に、横から《ファングマグ》で刀身を殴りつけ、銃弾を叩きこむ。
その威力に剣筋は狙いから大きく逸れた。
「っ!?」
逸れた剣が礼拝堂の床を叩く。
驚愕で動けないヒュアデスの額に、《ブルーマグナム》の銃口を突きつける。
「くたばれ」
《クイック・ドロウ》。
連射した銃弾すべてがヒュアデスの脳天にクリティカルヒットした。
HPバーが削られ、ヒュアデスが吹っ飛んだ。バックステップで距離を取る。
「ぐ、があああ!」
汚物野郎がその場で悶絶している。
ああ、そういえば痛覚制限が解除されていたんだった。額にクリティカルヒットならそれなりの激痛だろう。
だが、知ったことか。
俺は礼拝堂に並べられている長椅子の背もたれに飛び乗り、回り込むようにその上を駆けた。
「くっ!」
立ち直ったヒュアデスは視線と身体をこちらに向けるが、遅い。
銃口はすでに両方ともが奴に向けられている。
「遅ぇ」
放たれた三発の弾丸がヒュアデスに向かって進む。
一発はガードされたが、残り二発は肩と足を撃ち抜いた。
ぎり、とヒュアデスが歯ぎしりする音が聞こえた。
「ぐがあ、が……! この、雑魚がぁ……調子に乗るなぁ!」
侮っていた雑魚の攻撃で痛みを受けたことに切れたヒュアデスは、罵詈雑言を吐き出しながら椅子と椅子の間を通り、長椅子の背もたれを足場にしている俺に向かってくる。
俺は細い背もたれを駆け抜け、ヒュアデスが振るう剣を《ジャンプ》でかわす。
自身を跳び越えた俺を追い、ヒュアデスは振り返ろうとするが、両脇の椅子が邪魔で数瞬もたつく。
格好の獲物だった。
「《ツイン・バレット》!」
《ファングマグ》と《ブルーマグナム》両方で《ツイン・バレット》を放つ。
両方が見事にヒットした。片方はクリティカルだ。
「ぐああああ!」
汚物野郎のHPバーは5分の3程度まで減っている。
もっとも、奴は身体に走る痛みでそれどころではないようだが。
「貴、様ぁ……銃士風情が……!」
「テメェが弱いだけだろ、汚物が」
《リロード》しつつ、奴の醜態を嘲笑う。
事実、奴は弱い。
おそらくこいつは、今まで自分よりも弱い相手としか戦ったことが無い。
巡回で暴行していると聞いたが、大方それも相手PKのレベルが低かっただけだろう。
そもそもその場には仲間もいただろうし、自分一人でやったのかすら疑問だ。
「おい汚物野郎。さっさと弄ったシステム直せ」
《ファングマグ》を突きつけながらそう言い放つ。
が、ヒュアデスはぶつぶつと何か独り言を延々と喋っており、俺の言葉を聞き取れていないようだ。
「……あいつのせいだ、あいつの不手際でこんなことになったんだ。あいつが……」
「……あいつ?」
仲間の誰か……という感じじゃない。
他に協力者がいるってことか?
「……ここまでお膳立てしておいて、あいつ……クソ……」
「……チッ」
冷静に考えれば、こんな小物に起こせる騒ぎとは思えない。
黒幕がいるってことか。
詳しく聞きたいが、今のこいつにまともな話ができるとは思えない。
「……お前もだ。お前も邪魔だ!」
「喋るな、悪臭がするんだよ汚物野郎」
もはや正気を失った眼前のゴミを廃棄するために、銃を構え直した。
シレンが黒い……




