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《Last World Online》  作者: 黒藤紫音
1章:出会い
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ツキノ

 中央広場。

 ここのボードには、クエストが掲載されている。

 クエストとは、運営側が用意した、一種のイベントである。

 掲載されているクエストをクリアすると、報酬がもらえる。

 それはアイテムだったり、オルだったり、はたまたスキルだったりする。

 スキルは自分たちで習得していくしかないこのLWOで、それ以外では唯一スキルを手に入れられる方法だ。

 クエスト内容は、特定のモンスターを倒せだの、アイテムを集めろだの、結構ユニークだ。

 中には、「十人女性をナンパしろ!」なんてクエストもあった。俺はやらなかったが。

 さて、何か面白そうなクエストは無いかな……とはいえ、だいたいのクエストはこなしてしまっているし、後は時期限定のクエストくらいか……。

 と思いながら見ていると、見覚えのある白い服が見えた。

 あれは…「光聖騎士団」の制服である。


「えーと……これ、一人じゃ難しそう……」

「もし」

「きゃあ!」


 何やらうんうん悩んでいた少女に声をかけると、驚かれてしまった。

 周りのプレイヤーの視線が刺さる。


「あー……驚かせたか。すまん」

「あ、いえ、私が勝手に驚いただけです……!?」


 言いながらこちらを見た彼女は、今度は固まってしまった。

 なんだ、俺の顔が怖かったのか?

 しかし、今までそんなことを言われた経験はない。

 ……ひょっとして、何かついているのだろうか。

 そっと手を頬にやってみる。

 何もついている感覚はない。


「あ、貴方は……シレンさん、ですか?」

「……まあ、俺はシレンだけど」


 LWOに、同名のプレイヤーがいることはない。

 アカウントを作成するとき、名前が既にプレイしているプレイヤーと被ると、その名前は使用できないのだ。

 とはいえ、略称でシレン、なんて呼ばれているプレイヤーがいないとも限らないが。


「……ウェリアス団長が、何度も勧誘してる……あの……シレンさんですか?」

「……まあ、たぶん」


 どうやら俺は、あの「光聖騎士団」の中で悪い意味で有名らしい。

 ここは逃げたほうがいいかもしれない、と頭の片隅で思った。


「あの……私、ツキノと言います」

「ツキノ?」

「はい」


 ツキノ、と名乗った彼女は、俺の顔をじっと見ると、突然頭を下げた。


「お願いします、私とパーティを組んでください!」

「はあ!?」


 いきなりどういう申し出だ。

 突拍子がなさすぎる。


「いきなりなのはわかってます、でも、貴方の腕なら安心なんです!」

「いやいやいや!いきなりすぎてわけわかんないから!!」


 それからしばらく、頭を下げた状態で「お願いします!」と叫んでいる白い少女と、それに困惑している蒼い少年が、中央広場の注目を集めていた。



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