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《Last World Online》  作者: 黒藤紫音
6章:クーデター
38/45

その背を押され、

2か月ぶりです。

だいぶ駆け足の展開になりました。


「カノ! ツキノがいそうな場所わかるか!? たぶんヒュアデスもそこにいる!」

「…………おそらく、ギルド奥の礼拝堂だ!」


 「光聖騎士団」のギルド本部、その廊下を全力で駆ける。

 内部は剣戟の音や叫びで満たされていた。


「礼拝堂!?」

「…………地理的に考えて、ツキノが逃げ込みそうな場所はそこが一番可能性高い!」

「その根拠は何!?」

「…………方法はどうあれ、ヒュアデスがここのシステムを乗っ取ったというのなら、おそらく執務室……マスター専用の部屋から操作したはずだ。そして、執務室から最も遠いのが礼拝堂だ!」

「正門から近いのか!?」

「…………ツキノが囮になったというのなら、おそらく正門とは真逆に逃げている。なら礼拝堂に行きつくことになるはずだ!」

「クッソ……!」


 舌打ちをする。急がないといけない。

 そう思い、俺は走るスピードを上げた。


「待てシレン! 敵はおそらくヒュアデスだけじゃない、他にも何人かいるはずだ!」

「どうしてそう思う!?」

「一派って言ってたろ! それにいくらなんでも一人だけでクーデターなんて起こすか!」

「何人かいるって思ってたほうがいいかね、これは」


 ワタルがそう予測を立てた時だ。


「正解だ」


 言葉と共に男が一人現れた。

 その背には大剣を背負っている。


「お前たちが何者かは知らないが、あの人の邪魔をするのなら――」

「どけ!」


 言い終える前に男に銃弾を叩きこむ。

 額にクリティカルヒットした。


「ぬお……! 貴様!」

「うるせえ黙れ、とっととどけ!」


 《クイックドロウ》。

 《ファングマグ》から放たれた三発の弾丸がすべて男にヒットした。


「人の話を聞け貴様!」

「あいにくだがそんな暇はない。どけ」


 言いつつ《ファングマグ》を構える。

 男と対峙する。


「先行けシレン。俺が相手しとくから」

「ワタル?」


 トリガーに指をかけ、引こうとしたところで肩にワタルの手が置かれた。

 ワタルがそう言いながら、俺の肩を押す。


「こんなモブに関わってる場合じゃないだろうが。シズ、カノ、スズ。シレンのこと頼んだ」

「任せろ」


 シズが皆を代表してそう言った。他の二人も頷いている。

 ……たしかに、悠長にやり合っている場合じゃない。


「悪い、ワタル。頼んでいいか?」

「そう言ってるだろ。さっさと行け、相棒?」


 などと言いながら、ワタルは《グレイブ》を抜いた。

 その頼もしい言葉を、信じることにする。


「行くか」

「おう」

「当然」

「…………了解だ」


 皆が頷いたのを見て、俺は眼前の男の脇を通り抜ける。

 その後に皆が続いた。


「待……!」

「はいはいストップ」


 俺たちを妨害しようとした男に、ワタルが攻撃した。

 男はそれを自身の大剣で受けとめた。


「貴様ぁ……!」

「お姫様を助ける王子様の邪魔をするもんじゃないぜ、おっさん?」


 頼りがいのある軽口が後ろから聞こえてくる。

 その声に押され、俺たちは廊下を駆け抜けた。



 ほとんどの幹部や戦闘員が留守にしているとはいえ、さすがは「光聖騎士団」と言ったところか。

 あちらこちらで、ヒュアデス一派に抵抗する団員の姿が見えた。


「おおおおお!」

「あああああ!」


 鳴り響く剣戟の音。雄叫び。

 時折聞こえてくる悲鳴。

 思わずそちらに駆け出そうとして、その度に自制する。


「シレン、落ち着け。首謀者のヒュアデスを倒せばこのクーデターは沈静化するだろうし、ウェリアスが来れば事態の解決はより早くなる」

「……わかってる」

「ツキノちゃんが囮になってあのクサレ男を引きつけてるのなら、尚のことツキノちゃんを助けることが沈静化に繋がるわ」

「…………わかってる! カノ、次はどっちに行けばいい!?」

「…………そこを右だ!」


 言われて右に曲がる。

 廊下を曲がり切ると、大きな扉が見えた。


「…………礼拝堂はあの扉の向こうにある。シレン、行け」

「カノはどうするんだ?」

「…………執務室に行く」


 俺が扉に手をかけながら訊くと、カノがそう答えた。

 視線でその意味を問うと、カノは口を開いた。


「…………ギルドマスターでもないヒュアデスがシステム権限を操作できるなんて異常だ。調べる必要がある」

「なるほどな。その異常の理由がわかれば、上手くすれば一派を強制ログアウトできるかもしれないか」

「…………可能性の話だがな。スズ」


 カノの言葉には一理ある。

 強固なセキュリティが組まれているシステム権限を乗っ取るなんて普通じゃできない。何かあると考えるのが自然だ。


「何、カノ」

「…………すまないが、一緒に来てくれ。俺一人だと一派に出くわすとまずい」

「……そりゃ確かにアンタ一人じゃまずいかもしれないけど……ツキノちゃんが」


 そう言って、スズは扉を見る。

 この扉の向こうには、ツキノがいるかもしれない。スズに無視なんてできるわけがない。

 だけど。


「スズ、行けよ」

「シレン?」

「礼拝堂にツキノがいる可能性は100%じゃない。執務室か、もしかしたらその過程にいるかもしれない」

「……それはそうだけど」

「だから、頼む。……ツキノを一秒でも早く助けたいんだ」


 そう言って、俺はスズに頭を下げた。

 今やるべきことはツキノを助けること。誰が助けるかなんてことに、こだわる必要はない。

 なら、それぞれがやれることをやるべきだ。


「……はぁ」

「スズ?」


 スズが息を吐くのを聞いて、俺は頭を上げた。

 自分の得物をくるりと回して、スズは肩に担いだ。


「カノ、行こう」

「…………いいのか?」

「いいのよ。その代わり」


 ビッと槍の穂先を俺に向け、スズは口を開いた。


「礼拝堂にツキノちゃんいたら絶対助けるのよ」

「当然だ」


 俺が頷くと、スズはその言葉に満足したのか、カノと共に走りだした。

 それを見送って、俺は今度こそ扉を開こうとする。


「何してる貴様ら!」


 俺が扉を開くと同時、どこからか白い制服を着た男が現れた。

 おそらくは、ヒュアデス一派の一人だろう。


「チッ!」

「シレン」


 俺が銃を抜いて応戦しようとすると、シズに止められる。

 開いている扉へと身体を押された。


「俺が相手しとくからさっさと行け」

「シズ……」

「助けるんだろ?」

「……当然!」


 シズの言葉に頷き、俺は走り出した。

 扉の向こうは中庭のようになっていて、石畳でできた道の先に礼拝堂があった。


「頼んだ、シズ!」

「任せとけ!」


 頼もしい言葉に背を押され、俺は駆けた。

 石畳を走り抜ける。

 走って走って、俺は礼拝堂へすぐに辿りついた。

 そしてそのままの勢いで、俺は扉を蹴り破った。


「――――ツキノ!」


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