微笑んでいてほしい。ずっと。
久々投稿です!
放置してましたごめんなさい!!
立ち向かっていった俺たちを迎えたのは、「ニーズヘッグ」の炎のブレスだった。
広範囲攻撃だ。床を舐めるように炎が広がる。が、俺は元々後衛だったのでそこまで前進していない。この攻撃の範囲からは逃れられた。
むしろ心配なのはツキノやワタルたちだ。
視線を前に向けると、ワタルは《グレイブ》を盾代わりにして防いでいた。
ツキノはどうやら射程範囲からぎりぎり逃れられたようだが、ブレスのせいで、奴に近づけていない。
スズ、カノも逃れている。横から奴の身体に接近しようとしていた。
シズの姿が見えず、思わず探してしまう。
「……ふっ!」
と、前方から聞こえてきた声のほうを見ると、シズが「ニーズヘッグ」に殴りかかっていた。
どうやらブレスが自分に届く前に、懐に潜り込んだらしい。
確かに拳はステータスがバランス良く伸びるし、重くもないからAGIの減少率も低いが、だからと言っていくらなんでも無茶苦茶である。俺では同じことができる自信はない。ステータス的にはさほど差はないはずなんだけど。
そんなことを考えながら、俺は両手の銃の銃口を「ニーズヘッグ」に向ける。
俺が銃を乱射するのと同時に、ブレスを耐えきったワタルが大剣を振り上げて斬りかかる。
ツキノもそれに倣って懐に突っ込む。スズ、カノも行った。
「はっ!」
「っやあ!」
ワタルとツキノの斬撃が入る。
そんな二人に「ニーズヘッグ」が尾で攻撃しようとするが、それはスズとカノに阻まれた。
「ほい、と!」
「…………っ!」
槍で迎撃する。
「ニーズヘッグ」の尾が弾かれた。
首をもたげ、敵を噛み砕かんと口を開いた「ニーズヘッグ」の口内に銃弾を連射する。
奴はダメージにのけぞった。
「《スクエア・エッジ》!」
追撃にツキノの四連斬撃が入る。
「ニーズヘッグ」はその巨大な胴体をくねらせ、祭壇から移動する。
ずるずるずるずる、と生理的に不快になる音を立てて這いずっている。
その音からは予想できないようなスピードで、俺たちを囲むように大きく動く。
「――死ね……!」
牙を剥き出しにして、「ニーズヘッグ」は俺に突っ込んでくる。
あの牙にはおそらく“毒効果”もあるだろうし、そうでなくともあんなもので噛みつかれたらガンナーの俺は大ダメージ必至だ。
「《ハイジャンプ》!」
体術スキルの一つ、《ハイジャンプ》。その場で高く跳び上がって、奴の牙をかわした。
《リロード》し、そのまま空中で上手く身体を回転させ、下にいる「ニーズヘッグ」に銃を乱射する。
が、胴体は部位的にDEFが高いようで、HPゲージはさほど削れない。
それでも、注意を引くには充分だ。
攻撃をかわされた「ニーズヘッグ」が、俺の銃撃を受け、意識がこちらに向く。
「《デストロイ》!」
ワタルの単発重斬撃が入る。
その衝撃に、「ニーズヘッグ」の動きが一瞬止まった。
明確な隙。
「《ルーン・フルーレ》!」
「《バッシュ・ランス》!」
「《クロス・サーキュラー》」
ツキノ、スズ、カノの三人の攻撃が追撃する。
俺は落下しながら、「ニーズヘッグ」の開いた口に標準を合わせ、乱射する。
「《クイック・ドロウ》!」
胴体はDEFが高いが、流石に口内――体内は弱いようだ。
HPゲージが先ほどと比べると気持ちよいほどに削られていく。
「《剛牙狼拳》!」
更にシズの重攻撃。
「ニーズヘッグ」のHPゲージは、既に五分の三まで削られていた。
「――ごああああああああああああ!!」
俺が空中から床に着地するよりも数秒早く、「ニーズヘッグ」が咆哮した。
その咆哮はもはや“声”でも“音”でもなく、“衝撃”だった。
「ッ!?」
咆哮を受け、俺は体勢を崩し、着地に失敗する。
そんな格好の機会を、見逃すほど甘いわけがなかった。
「ニーズヘッグ」の巨大な尾が、背後から俺を叩いた。
「ご、ぐっ……!」
圧倒的な衝撃。
この身体はデータで、どれだけダメージを受けてもリアルには何の影響もないはずだというのに、現実世界の身体の内臓や骨が軋んだ気すらした。
吹っ飛ばされた身体が床を転がり、意識が飛びそうになる。
そこに、声が聞こえた。
「シレンさん!」
飛びそうになった意識を、ツキノの悲痛な声が繋ぎ止めた。
歯を食いしばり、重い身体を動かしてすぐさま立ち上がる。
「シレン大丈夫か?」
「問題、ない……!」
「割と問題あるように聞こえるが?」
「やかましい!」
もうあんなヘマはしない。
もう二度と、ツキノにあんな悲しそうな声を出させてたまるか。
「さっさと倒すぞ」
「はいよ」
「言われなくても」
俺は《クロスイーグル》と《ブルーマグナム》を改めて構え直す。
ワタルは《グレイブ》を、シズは《メタル・ブレイカー》を構えた。
「っし!」
「はっ!」
ワタルとシズが突撃する。
それをサポートしつつ、俺も前に出た。
後ろで、ツキノたちが武器を構え直す音がした。
○
ドン、と重い音がする。
ワタルの重攻撃がヒットした音だ。
「で、どこを狙うんだお前は?」
「口内。胴体を狙うよりはダメージは通る」
ワタルが気を引いている間に、シズと言葉を交わす。
銃はどうしてもATKが低い。たとえ十発胴体に叩きこんでも、剣なら一撃二撃で同程度のダメージを与えられるだろう。
なら、TECを活かすべきだ。
胴体と比べると口内は小さく、剣や拳では攻撃は当てづらい。
けれど銃のTECなら、そんな小さな箇所にも攻撃を命中させられる。
「《フル・バースト》ぶち込んでやる」
「なら俺は隙を作ろう。ワタルがメイン、俺は隙、お前が集中。行くぞ」
「オーケー!」
俺が頷くと、シズも「ニーズヘッグ」の懐に突っ込んでいく。
《リロード》し、銃弾を放ちつつ、奴の口が開くのを待つ。
その俺の横を、スズとカノが通って行った。
「シレンさん」
「ツキノ」
ツキノも俺の脇を通り過ぎる。
その一瞬に、彼女の碧眼と、俺の黒目が交差する。
――――大丈夫ですか?
――――平気だよ。
ほんの一瞬合っただけ、けれど、それで充分だった。
ツキノはほんの少しだけ微笑んだ。
…………やっぱり、ツキノには辛い表情も悲しい声も似合わない。
微笑んでいてほしい。ずっと。
「ごが……!」
「ニーズヘッグ」がひるんだ。
口も開いている。
「《クイック・ドロウ》!」
銃を連射する。
面白いほどにヒットしていた。
そして。
「《デストロイ》!」
「《王破拳》!」
「《クロス・サーキュラー》」
「《バッシュ・ランス》!」
「《ルーン・フルーレ》!」
全員の上位スキルが連続ヒットする。
HPゲージはもう五分の一程度だった。
「おおおおおお!!」
声がうるさい。
口はまだ開いている。
「ちょっと黙れ」
《リロード》し、左右の銃を構える。
狙いは、口内。
「《ツイン・フル・バースト》」
両手の銃で《フル・バースト》を放つ。
全銃弾の威力を込めた二つの弾丸は、吸い込まれるように「ニーズヘッグ」の口に叩きこまれた。
「ご、お……!」
クリティカルヒットし、大きく仰け反る。
ダメージによる硬直は数秒。
けれどそれだけあれば、もう充分だ。
「もう一発! 《デストロイ》!」
「《王破拳》!」
「《ルーン・フルーレ》!」
アタッカー三人の上位スキルが炸裂する。
「ニーズヘッグ」のHPゲージが0になった。
難産……




