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《Last World Online》  作者: 黒藤紫音
5章:彼の”秘密”
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合流


「――はぁ!」

「ふっ!」


 剣が煌めき、銃声が通路にこだまする。

 POPしたMobを、ツキノと二人で撃ち倒していく。ツキノは剣だけど。

 もはや隠す必要もないので、普通に《双銃》を使う。おかげで、右だけで戦うより遥かに楽だ。

 「グレイ・ゴーレム」のように硬い相手ばかりでなく、人形型や蝙蝠型のMobも出てくる。六人のパーティから二人のペアに変わったので、POPするモンスターの数も少なくなっている。

 俺がトリガーを引いてMobを撃ち抜き、ツキノの剣がMobを斬り捨てて、俺たちが落ちてから合計四度目の戦闘は終了した。


「……ふう」

「大丈夫か?」


 疲れたような息を吐いたツキノにそう声をかける。

 いくら現実の身体は動いていないとはいえ、やはり精神的な疲れというのはたまっていくものだ。


「大丈夫ですよ。まだまだいけます」

「……ならいいけど」


 まあ、ツキノなら無理なら無理と言うか。……いやでも、案外無茶しそうではあるんだよな。

 いや、ちゃんと護ればいいだけなんだけど。


「じゃ、行こうか」

「はい」


 銃を腰のホルスターに戻し、歩き始める。

 ツキノも剣を腰の鞘に収めて、俺の後ろをついてくる。

 松明が照らす神殿の通路を歩く。

 索敵スキルが常時発動しているので、まず先手を取られることはないが、だからといって警戒しないでいいわけじゃない。

 周囲に目を配りながらしばらく歩くと、進む先に段差が見えた。小さな階段くらいはあっても良さそうな段差だ。飛び降りられないほどではないけど。

 俺は軽く跳んで段差を飛び降りると、上にいるツキノに向かって手を伸ばした。

 ツキノはその手を取って、俺と同じように軽く跳んで段差を飛び降りた。

 そのまま俺たちは通路を進んでいく。すると、曲がり角に、人の影が見えた。

 一瞬空いている右手を腰にやりかけるが、影の正体を知ってやめる。

 影は、俺がこのLWOでもっとも付き合いの長い男のものだったからだ。


「ワタル」

「お、シレン!」


 やはりワタルだった。後ろを見ると、スズやカノ、シズもいる。

 どうやら、合流できたようだ。


「おー、なんとか合流できた……な……」

「どうしたよ」


 何やら動きが止まったワタルに声をかける。何がどうしたというのだろうか。


「……シレン」

「うん?」

「左手」

「は?」


 言われた通り、左手を見る。

 俺の左手は、ツキノの右手を掴んでいた。

……どうやら、離し忘れていたらしい。


「……と、ごめん」

「あ……、いえ」


 離したくない、とかほざく左手をなんとか制御して、手を離す。というか、ツキノも寂しそうな声を出さないでほしい。そのまま繋いでおきたくなる。


「シーレーンー……!」

「なんだ……どわ!」


 スズの方を見ると、槍が向かってきた。

 思わず身体を逸らして避ける。

 見間違いでなければ、スキルの赤いエフェクト光があったような気がする。


「殺す気か!」

「大丈夫よ、《スラスト》だから」


 《スラスト》は槍系の基本スキルだ。いや、だからって。


「お前レベル150超えてるんだから基本スキルでも結構な威力になりますけど!?」

「黙れツキノちゃんと手を繋ぐとか何羨ましいことしてんのよォォォ!」


 お前は抱きついたりしてただろうが!

 止めたけどな!


「ちょ、誰か止めろ!」

「…………その辺にしろ、スズ」


 ポコン、とカノが自分の十字槍(クロススピアー)の柄の部分で、スズの頭を小突いた。


「えー……どうしてよ」

「…………八つ当たりでしかないだろ、それは」

「わかってるけどぉ……」


 何と言うか、ホントスズはカノに弱いというか、カノの言うことは聞くんだよな。

 ホント、不公平だ。


「まあ、何はともあれ。無事でよかったよ、二人とも」

「おう。って、そうだカノ、ボスの部屋、わかるか?」

「…………一応、マッピングはしてるが……まだかかるな」


 マップを表示させながら、カノがそう言う。

 まだかかるのか……まあ、仕方ないか。

 先に進もうと、俺は歩き始めた。


「じゃあ、行くか」

「それはいいけど……俺ら、気を利かせて距離取って歩くべきか?」


 その言葉に、後ろを振り向くと、ワタルのにやにやとした笑みが見えた。

 ……何の気を利かせてなのかはよくわからなかったが、とりあえずむかついたので額を小突いた。


「何の気を利かせて、だよ。馬鹿言ってないで進むぞ」

「だってよー。ツキノちゃんとすごく仲良しになったみたいだし。手なんて繋いじゃってさ」

「ちょっと手を繋ぐことがあっただけだ」

「本当にそうか?」


 ワタルがじっとこちらを見てくる。

 ……まあ、何かあったといえば、あったけど。でも、それをここで言う必要はない。

 俺の傷のことでもあったけど、ツキノの傷のことでもあった。吹聴して回ることじゃない。


「いいから、行くぞ」

「へいよ」


 ワタルが歩き始め、他の皆も一緒に歩き始めた。

 と、一度俺は足を止めて、後ろを振り返った。


「ほら、ツキノ」

「あ、はい」


 呼びかけると、ツキノは少し小走りになって、俺の隣に並んだ。

 自分より小さなその身体を見下ろすと、くす、と自然に微笑が浮かんだ。


「シレンさん?」

「何にもないよ。行こう」


 俺が先を進んでいくと、ツキノも置いて行かれないように、俺の隣を歩いていた。


「……やっぱ、俺らお邪魔だよなぁ」


 後ろでワタルが何か言ったような気がしたが、声が小さくて聞き取れなかった。




ちょっと遅れました。


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