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《Last World Online》  作者: 黒藤紫音
5章:彼の”秘密”
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「どういたしまして、お姫様」

二話連続投稿です。



「……んだ、あいつ」


 ワタルがぽつりとそう言った。

 それを聞いて、カノが口を開く。


「…………ヒュアデス。一年ほど前に、「光聖騎士団」に所属したらしい。ただ素行に問題がある」

「でしょうね。態度も最悪な男だったし」


 スズがそう毒づく。

 かなり御立腹のようだ。


「…………「光聖騎士団」は、PK防止のためにフィールドを定期的に巡回してるが、その巡回中に発見したPKに対して、奴は過剰な攻撃を行ってる」

「過剰?」

「…………元々、「光聖騎士団」はPK防止のために戦闘を行うことはあるが、それはあくまで「注意」のレベルだ。けど、奴のはもはや「暴行」の域だ。PK以上に凶悪なプレイヤーだ」


 カノはそう言い切った。

 まあ、確かにあんまりいい印象を抱く奴じゃなかったが。


「……ツキノ、大丈夫か?」


 俺の服の裾を掴んみながら、俯いているツキノに、できるだけ優しく声をかける。

 ツキノは、こくん、と頷いたが、まだ裾から手は離さない。


「……大丈夫です。……ヒュアデスさんの巡回に一度立ち会ったことがあるんですけど、その時の彼は……カノさんの言うとおり、「暴行」の域でした」

「……だから、怖い?」

「……少しだけ」


 ぎゅっ、と俺の服の裾を、強く握りしめる。


「……彼が所属してから――――いえ、ひょっとしたら、その前からかもしれないですけど――――、ギルドの空気が、変わってしまったんです。言葉では上手く言えないですけど…何かが、おかしくなって」

「……うん」


 そう頷くことしかできなかった。

 どことなく、暗くなりそうな空気が漂う。

 

「……ツキノちゃん!」


 スズが、明るい声で言った。

 暗くなりそうだった空気が壊れる。


「ツキノちゃん、あの男に啖呵切った時、すごく格好よかったわよ」

「……そう、ですか?」

「うん!」


 スズがそう強く頷き、ワタルも話に入ってくる。


「ホントにな。俺もキレそうだったけど、ツキノちゃんが啖呵切ったから、タイミング逃したし」


 ワタルがけらけら笑いながら言う。

 ……お前もかよ。


「同感だな」

「…………ああ」


 シズの言葉に、カノが同意する。

 皆の言葉に戸惑ったツキノは、助けを求めるように俺を上目遣いで見た。

 俺は、ぽん、とツキノの頭に手を置いて、撫でる。


「怒ってくれて、ありがとうな、ツキノ。嬉しかったよ」


 心の底からそう思う。

 ……あの時、ツキノから出るとは思わなかった声に驚いたのと同時に、怒ってくれたことが嬉しかった。

 ツキノは、一瞬ぽかんとして。


「……そうですか。それなら……良かったです」


 にこ、と笑った。

 ……うん。


「やっぱり、ツキノは笑ってるほうが可愛いよ」

「かわ……!?」


 あ、赤くなった。


「あんた何口説いてんのよ!」


 ゲシィ、とスズの強い蹴りが脇腹に入った。

 うぐお……!


「てめ、何しやがる!いくら仮想現実って言っても痛ぇんだぞ!」


 いや、ホントに結構痛い。


「あははは。……ま、それはそれとして、クエスト行こうぜ?」

「…………そうだな」


 シズの言葉に、目的を思い出した。

 そうだよ、クエスト行くんだよ俺たち。


「そういやそうね。あんな胸糞悪い男のことなんて忘れて、行きましょうか」

「だなー」


 言いながら、皆止まっていた足を進め始めた。

 俺も遅れるわけには行かない、と歩き出そうとして、ツキノが俺の服の裾を握っているのを思い出した。


「ツキノ、手、離してくれるか?」

「あ、はい」


 ツキノは素直に手を離した。


「ごめんなさい、掴んじゃって」

「いいよ、それくらい」


 ぷらぷらと手を振る。

 別に、これくらい何でもない。


「それでツキノが少しでも怖くなくなるなら、いくらでも掴んでて」

「あぅ……」


 そう言って、歩き出す。

 俺の後ろを、ツキノも歩き出した。


「……ありがとうございます」

「どういたしまして、お姫様」


 俺が笑いながらそう言うと、ツキノもつられて笑った。




次話はアクション入ります。

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