――――護らないと。
一週間ぶりの投稿です。
さて、何やら釈然としないことが起きたが、とにもかくにも、俺たちはクエストのために、クリスタルに向かう。
「……なあ、ツキノ。ひょっとして、怒ってるか?」
「いえ、怒っていません。……どうして、そんなこと訊くんです?」
……口調は怒っているように聞こえるが、彼女の声色、態度から察するに、確かに怒ってはいない。
むしろ、落ち込んでいるように見える…けど。
「……なら、いいんだけど」
何か言おうとは思っても、上手い言葉が出てこない。
自分が口下手なのを、今以上に悔んだことはない。
「まあ、それなりに親しくなった相手と、会えなくなるのは、ちょっと悲しいわよねぇ」
スズが、唐突にそんなことを言った。
視線は、俺に向いている。…そういうこと、なのか?
「……そう、ですね。でも、仕方ないことだと思いますし……」
ツキノがそう言う。
なんか、さっきより落ち込んでいる気がする。……ああもう、何か上手い言葉捻り出せよ俺の脳みそ!
「いや、二度と会えなくなるわけじゃないし、な?」
はあ……、という溜息がいくつも聞こえた。
ほっとけ、言葉間違ってる自覚くらいある!!
「いっそ、シレン、「光聖騎士団」に入ったらどうだ?」
ワタルの言葉に、ツキノが反応した。
「あ、そういえば、それも気になってたんです。……シレンさん、どうして団長の勧誘を断ってるんですか?」
「……あー……」
……答えづらい質問である。
まあ、ワタルたちに言わせれば「くだらない理由」なんだけどさ。
「えーと……まあ、ギルドにはあんまりいい思い出なくてな……」
「……ギルドの人と、揉めたことがあるとか?」
「……まあ、間違ってはないかな」
言ってから、この先も言っていいものか、一瞬悩む。
まあ、隠すことでもないか。
「一度、ギルドに入ってたことあるんだけど……、ちょっとメンバーと揉めてな。それ以来、どうにもギルドに入る気にならなくて……」
隠すようなことでもないが、かといってあまり思い出したくもないことだ。
正直、今でも思い出すだけで、少し気分が悪くなる。
「まあ、「光聖騎士団」なら、そんな風に揉めることも無いんだろうけど。けど、どうにも気乗りしなくてな……」
けど、もう何年も経ってる。いい加減、あのことを気に病む必要はないのかもしれない。
「……そんなことは、無いですよ」
ぽつり、とツキノが何かを呟いた。
聞き取れなくて、思わず訊き返そうとすると、俺たちのではない声が割って入った。
「ツキノ。何してるんです?」
足を止め、声がしたほうを見ると、黒髪の男がいた。
白いその服装は、「光聖騎士団」の一員だということを示していた。
……なんか、俺睨まれてないか?
「……ヒュアデス、さん」
「ツキノの知り合いか?」
こく、と頷くツキノ。
ただ、その様子がおかしい。――――怯えてる?
「「光聖騎士団」の……幹部の一人です」
「初めまして。……というのもおかしいかもしれないね。私は君を知っているから――――シレン君」
「……どうも」
す、と何気なく前に出て、ツキノを後ろに庇う。
怯えてるように見えたのが、俺の気のせいならいい。けど、気のせいじゃないのなら。
――――護らないと。
ぎゅっ、と後ろでツキノが俺の服の裾を握ったのがわかった。
「しかし……ツキノ」
「は、はい……」
言いながら、俺がツキノを庇うように立っているのに、ヒュアデスは眉を寄せたが、退くわけにはいかない。
頭が悪い自覚はあるけど、だからってツキノのこんな声を聞いて、退けるわけがない。それくらいはわかる。
「他のギルドのメンバーと行動しているのは、あまり感心できないね」
「……ごめんなさい」
「しかも、彼のような銃士と、なんて」
俺を見下すような言葉と、視線だった。
それに腹が立たないわけじゃないが、表には出さないように努める。
こんなことは、銃士になってから、よくあることだった。最近は、少なくなってきてたけど。
「……っ、それは、どういう意味ですか。シレンさんが銃士だからって、それがどうしたんですか!」
ツキノが、俺の後ろでそう叫んだ。
普段おとなしい彼女からは、想像もできない声だった。
……こんな声も出せるんだな。
同時に、怒ってくれたことが嬉しかった。
「シレンさんはちゃんとサポートしてくれます。シレンさんがいるから、私は安心して前衛で戦えるんです。そんなシレンさんを、馬鹿にしないでください!!」
「…………」
そう啖呵を切るツキノに、ヒュアデスは無言だった。
「……まあ、いいさ。君の好きにすればいい。私はギルドに用があるのでね、これで失礼する」
その言葉は紳士的だったが、俺を見下すような目は変わらなかった。
そうして、ヒュアデスは俺たちの横を歩いて去っていったが、去り際に、俺に憎悪の視線を向けていった。




