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《Last World Online》  作者: 黒藤紫音
5章:彼の”秘密”
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――――護らないと。

一週間ぶりの投稿です。


 さて、何やら釈然としないことが起きたが、とにもかくにも、俺たちはクエストのために、クリスタルに向かう。


「……なあ、ツキノ。ひょっとして、怒ってるか?」

「いえ、怒っていません。……どうして、そんなこと訊くんです?」


 ……口調は怒っているように聞こえるが、彼女の声色、態度から察するに、確かに怒ってはいない。

 むしろ、落ち込んでいるように見える…けど。

 

「……なら、いいんだけど」


 何か言おうとは思っても、上手い言葉が出てこない。

 自分が口下手なのを、今以上に悔んだことはない。


「まあ、それなりに親しくなった相手と、会えなくなるのは、ちょっと悲しいわよねぇ」

 

 スズが、唐突にそんなことを言った。

 視線は、俺に向いている。…そういうこと、なのか?


「……そう、ですね。でも、仕方ないことだと思いますし……」


 ツキノがそう言う。

 なんか、さっきより落ち込んでいる気がする。……ああもう、何か上手い言葉捻り出せよ俺の脳みそ!


「いや、二度と会えなくなるわけじゃないし、な?」


 はあ……、という溜息がいくつも聞こえた。

 ほっとけ、言葉間違ってる自覚くらいある!!


「いっそ、シレン、「光聖騎士団」に入ったらどうだ?」


 ワタルの言葉に、ツキノが反応した。


「あ、そういえば、それも気になってたんです。……シレンさん、どうして団長の勧誘を断ってるんですか?」

「……あー……」


 ……答えづらい質問である。

 まあ、ワタルたちに言わせれば「くだらない理由」なんだけどさ。


「えーと……まあ、ギルドにはあんまりいい思い出なくてな……」

「……ギルドの人と、揉めたことがあるとか?」

「……まあ、間違ってはないかな」


 言ってから、この先も言っていいものか、一瞬悩む。

 まあ、隠すことでもないか。


「一度、ギルドに入ってたことあるんだけど……、ちょっとメンバーと揉めてな。それ以来、どうにもギルドに入る気にならなくて……」


 隠すようなことでもないが、かといってあまり思い出したくもないことだ。

 正直、今でも思い出すだけで、少し気分が悪くなる。


「まあ、「光聖騎士団」なら、そんな風に揉めることも無いんだろうけど。けど、どうにも気乗りしなくてな……」


 けど、もう何年も経ってる。いい加減、あのことを気に病む必要はないのかもしれない。


「……そんなことは、無いですよ」


 ぽつり、とツキノが何かを呟いた。

 聞き取れなくて、思わず訊き返そうとすると、俺たちのではない声が割って入った。


「ツキノ。何してるんです?」


 足を止め、声がしたほうを見ると、黒髪の男がいた。

 白いその服装は、「光聖騎士団」の一員だということを示していた。

 ……なんか、俺睨まれてないか?


「……ヒュアデス、さん」

「ツキノの知り合いか?」


 こく、と頷くツキノ。

 ただ、その様子がおかしい。――――怯えてる?


「「光聖騎士団」の……幹部の一人です」

「初めまして。……というのもおかしいかもしれないね。私は君を知っているから――――シレン君」

「……どうも」


 す、と何気なく前に出て、ツキノを後ろに庇う。

 怯えてるように見えたのが、俺の気のせいならいい。けど、気のせいじゃないのなら。

 ――――護らないと。

 ぎゅっ、と後ろでツキノが俺の服の裾を握ったのがわかった。


「しかし……ツキノ」

「は、はい……」


 言いながら、俺がツキノを庇うように立っているのに、ヒュアデスは眉を寄せたが、退くわけにはいかない。

 頭が悪い自覚はあるけど、だからってツキノのこんな声を聞いて、退けるわけがない。それくらいはわかる。


「他のギルドのメンバーと行動しているのは、あまり感心できないね」

「……ごめんなさい」

「しかも、彼のような銃士(ガンナー)と、なんて」


 俺を見下すような言葉と、視線だった。

 それに腹が立たないわけじゃないが、表には出さないように努める。

 こんなことは、銃士(ガンナー)になってから、よくあることだった。最近は、少なくなってきてたけど。


「……っ、それは、どういう意味ですか。シレンさんが銃士(ガンナー)だからって、それがどうしたんですか!」


 ツキノが、俺の後ろでそう叫んだ。

 普段おとなしい彼女からは、想像もできない声だった。

 ……こんな声も出せるんだな。

 同時に、怒ってくれたことが嬉しかった。


「シレンさんはちゃんとサポートしてくれます。シレンさんがいるから、私は安心して前衛で戦えるんです。そんなシレンさんを、馬鹿にしないでください!!」

「…………」


 そう啖呵を切るツキノに、ヒュアデスは無言だった。


「……まあ、いいさ。君の好きにすればいい。私はギルドに用があるのでね、これで失礼する」


 その言葉は紳士的だったが、俺を見下すような目は変わらなかった。

 そうして、ヒュアデスは俺たちの横を歩いて去っていったが、去り際に、俺に憎悪の視線を向けていった。



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