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《Last World Online》  作者: 黒藤紫音
5章:彼の”秘密”
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この街にいる理由

「……お」


 ティアシティ、クエスト掲示板。

 そこで、俺はようやく目当てのクエストを見つけた。

 いや、見つけたというか、クエストフラグを立てられたというか、まあそれはともかく。


「……一人じゃちょっときつそうだし、あいつら呼ぶか」


 言いながら、俺はウインドウを操作し、リストを表示する。

 そのリストの中に、ツキノの名前を見つけた。

 いや登録したんだから、あって当然なんだけど。


「……ツキノも、呼ぼうかな」


 どうしてそう思ったのかわからなかったが、とにもかくにも俺はツキノの名前をクリックし、作成したメッセージを飛ばした。



 いつぞや、俺とツキノがクエスト帰りに立ち寄ったカフェにて。

 俺は、皆を集めていた。


「悪いなお前ら。わざわざ集まってもらって」

「別にいいさ」

「ああ」

 

 俺の言葉に、ワタルが笑いながら言う。

 そのワタルの言葉に、シズが同意する。

 カノは無言だったが、態度で同意してくれているのがわかる。


「サンキューな。……で、お前は何やってんだァ!」


 スズに怒鳴る。

 そのスズは、ツキノに抱きついていた。


「ツキノちゃーん! ああもう、ホント可愛いわぁぁぁ!!」

「あ、あの……」

「おい聞いてんのかスズ! ツキノも困ってるだろやめろや!!」


 全力ダッシュで二人に近づいて、スズの脳天を叩く。

 スパーン、といい音がした。


「いった……何すんのよ!」

「やかましい!」


 叫びながらツキノとスズの間に割って入り、無理やり距離を作る。

 ホントこいつは……。


「いいじゃないのー、抱きつくくらい」

「はああ……。……せめて今は話聞いてくれ……」


 脱力しながらそう言うと、スズはまだ何か言いたげだったが、とりあえずは諦めたらしい。


「ツキノは大丈夫か?」

「は、はい」


 後ろにいるツキノにそう訊く。

 身長が頭一つ分くらい違うので、どうしても見下ろす形になる。


「まあ、それならいい。……じゃあ、クエストの説明に入っていいか?」


 俺が全員を見回しながら言うと、皆頷いた。

 後ろにいたツキノは、俺の前に回る。


「クエストは討伐系だ。内容は『クロス神殿に眠る魔獣「ニーズへッグ」を撃破しろ』っての」

「まあ、ソロでやるには面倒なクエストだな」

「だろ?だから手ぇ貸してくれ」


 頼む、と頭を下げた。

 俺のそんな殊勝な態度に、ワタルたちはけらけらと笑っていた。


「手伝うために来てるんだ、んな畏まるな」

「そうだな。気にするな。持ちつ持たれつ、だ」


 なあ、とシズが呼びかけると、スズやカノは無言で頷いていた。


「私は、一度無理を言って、クエストを手伝わせてしまいましたから。私なんかで力になれるのなら、喜んで手伝います」


 ツキノは、笑顔でそう言ってくれた。

 いい子だなぁ、ホント……。


「……でも、どうしてこのクエストを?」

「ん、ああ。「ニーズへッグ」がドロップするレア素材が目当て。「ニーズへッグ」は、クエストでしか出ないから」

「…………ついでに言うと、そのクエストも掲示板に出ることは少ない。色々面倒なフラグがあるからな」


 と、これはカノだ。流石は情報屋。


「この素材が、俺が新調しようと思ってる銃を作るために必要なんだ」

「なるほど……」

「ティアシティに滞在して一ヶ月ちょっと。ようやくだ」

「……そういえば、レベル的に考えて、シレンさんが中級街(ティアシティ)にいるのはどうしてかな、と思ってたんですが、そういう理由ですか」

「ああ」


 ツキノの言葉に、こくんと頷く。

 その後、ツキノはワタルたちにも声をかけた。


「皆さんはどうして?」

「俺はシレンに付き合って」

「あたしは女の子目当て。というかツキノちゃん目当て」

「…………ギルドの本部がここにあるんだ」

「俺は純粋に、ティアシティが好きだから」


 それぞれの理由を語る。

 …他はともかく、スズの理由が阿呆らし過ぎるだろ。いやスズらしいと言えばらしいけど。


「まあ、そういうわけなんだ。だからこのクエスト終わったら、ティアシティからは離れるつもりだ」

「え」


 俺が何気なくそう言うと、ツキノはぽかんとしていた。

 まるで、言われた言葉が理解できないという風に。


「……ツキノ?」

「あ、いえ。……そうですよね。もう、いる理由が無くなりますもんね…」


 言いながら、ツキノは俯いていく。

 明らかに暗くなってしまっているツキノに、俺は戸惑ってしまう。


「いや、もう会えなくなるわけじゃないから!」

「わかってます。大丈夫です。……行きましょう」


 ツキノはそう言って、歩き始めた。

 どんどん前に向かって行く彼女の後ろ姿を見て、俺はどうしたらいいのかわからなかった。

 その場に立ちつくしていると、ツキノの後を追いかけて歩き始めたワタルたちが皆、ぽん、と俺の肩を叩いていった。


「ばーか」


 スズが言い残していった言葉が、俺の頭にのしかかった。



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