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《Last World Online》  作者: 黒藤紫音
番外章
25/45

この感情は、

また短いです。

補足回。


「ツキノ、こっち」

「はい」


 シレンさんに呼ばれて、私は彼の元に駆け寄った。

 スズさんに誘われ、分布調査を手伝うために、草原フィールドに出た私たち。

 ついさっきも、出現(ポップ)したMobを倒したばかりだ。

 数歩先を歩いているスズさんとカノさんの後ろを歩く。


「前衛、御苦労さま」

「いえ。シレンさんこそ、サポートありがとうございます」


 さっきのMob、《グリーン・リザード》は、私一人だったら、苦戦してしまう相手だった。

 そんな相手を苦もなく倒せたのは、彼がサポートしてくれたおかげだ。

 シレンさん。彼のレベルは、この《Last World Online》で、上級プレイヤーに入るレベルだ。

 この間、ようやく120を超えて、中堅プレイヤーに入ったばかりの私とは、かなりの差がある。

 やっぱり、年季からして違うんだろうなぁ…。私はまだ始めて2年ちょっとだし。

 団長は……サービス開始からプレイしてるから、もう5年だっけ。シレンさんもそれくらいなのかな。

 ……気になるけど、訊けないよね。あれこれ詮索するのはマナー違反だし。そうじゃなくても、まだ知り合って一週間ちょっとだし。


「ツキノ、どうした?」

「あ、なんでもないです」


 どうやら、考え事をしていて、無意識に彼を凝視していたらしい。

 シレンさんに声をかけられて、はっとして顔を逸らした。……変な子だと思われたかもしれない。

 心配になって、ちら、と彼の顔を盗み見ると、シレンさんは、気にした様子もなく、前を見ていた。

 あまり人の美醜に詳しくはないけれど、シレンさんは、整っている顔だと思う。

 青い髪と、黒い瞳。髪や瞳の色に合わせたのか、蒼と黒を基調とした服装をしている。

 腰のホルスターは、上着で隠れてしまっているけど、抜く時に問題はなさそうだった。

 視線を、シレンさんから前に向ける。

 前方には、スズさんとカノさんがいる。

 スズさんは、茶髪のショートヘアに、同色の瞳をしていて、活動的な印象を受ける顔立ちをしていて、一方のカノさんは、少し長めの黒髪と、同色の瞳。スズさんから受ける活動的な印象とは、正反対のインドア的な印象を受ける。

 そんな正反対な二人は、前を歩きながら仲良く並んで話していた。

 その距離は、ほぼ初対面の私から見ても近くて――――、そういう関係だと邪推してしまう。

 けど、男女の幼馴染というのは、そういうものなのかもしれない。

 私には男性の幼馴染はいないから(そもそも男性の友人がいない)、よくわからないけれど。

 というか、男女が二人仲良くしているだけでそういう邪推は失礼だと思う。内心で自戒する。


「ツキノ、どうかした?」

「いえ、ちょっと考え事をしていただけです。気にしないでください」


 シレンさんに声をかけられて、そう返す。

 ……ちょっと素っ気なかったかな。

 なんて考えていると、ぽん、と頭に手の感触。

 一瞬遅れて、これはシレンさんの手だと理解した。


「何か悩み事があるのなら、話くらい聞くよ。話すだけでも違うだろうし」

「あ、ありがとう、ございます。大丈夫です。悩み事とか、そういうのじゃないですから。でも、悩みができたら、そうします」

「ん」


 私がそう言うと、シレンは頷いて、私の頭を撫でた後、少し歩みを速めて、前のスズさんとカノさんに声をかけていた。


「カノ。あとどれくらいだ?」

「…………まだ少しかかる」


 近いはずのシレンさんとカノさんの会話が、遠く聞こえる。

 撫でられた頭に、手をやった。

 そうすると、撫でられた時の、彼の手の感触が思い出されて、顔が赤くなる。


「……うぅ」


 妙な呻き声を出して、私は前にいるシレンさんたちを見る。

 私は、赤くなった顔をさすりながら、歩く足を速めた。




 シレンさんは、さっき「悩み事があるなら聞くよ」と言ってくれた。

 私は「悩み事はありません」と言ったけど。

 ……本当は、一つだけ、悩みがある。

 (シレン、さん)

 ふとした拍子に、貴方を思い出すんです。

 ふとした拍子に、貴方に逢いたいと思うんです。

 この感情は、何ですか?




次は…キャラの簡単な紹介でも書きます。

それが終わったら、5章に入ろうかと。

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