この感情は、
また短いです。
補足回。
「ツキノ、こっち」
「はい」
シレンさんに呼ばれて、私は彼の元に駆け寄った。
スズさんに誘われ、分布調査を手伝うために、草原フィールドに出た私たち。
ついさっきも、出現したMobを倒したばかりだ。
数歩先を歩いているスズさんとカノさんの後ろを歩く。
「前衛、御苦労さま」
「いえ。シレンさんこそ、サポートありがとうございます」
さっきのMob、《グリーン・リザード》は、私一人だったら、苦戦してしまう相手だった。
そんな相手を苦もなく倒せたのは、彼がサポートしてくれたおかげだ。
シレンさん。彼のレベルは、この《Last World Online》で、上級プレイヤーに入るレベルだ。
この間、ようやく120を超えて、中堅プレイヤーに入ったばかりの私とは、かなりの差がある。
やっぱり、年季からして違うんだろうなぁ…。私はまだ始めて2年ちょっとだし。
団長は……サービス開始からプレイしてるから、もう5年だっけ。シレンさんもそれくらいなのかな。
……気になるけど、訊けないよね。あれこれ詮索するのはマナー違反だし。そうじゃなくても、まだ知り合って一週間ちょっとだし。
「ツキノ、どうした?」
「あ、なんでもないです」
どうやら、考え事をしていて、無意識に彼を凝視していたらしい。
シレンさんに声をかけられて、はっとして顔を逸らした。……変な子だと思われたかもしれない。
心配になって、ちら、と彼の顔を盗み見ると、シレンさんは、気にした様子もなく、前を見ていた。
あまり人の美醜に詳しくはないけれど、シレンさんは、整っている顔だと思う。
青い髪と、黒い瞳。髪や瞳の色に合わせたのか、蒼と黒を基調とした服装をしている。
腰のホルスターは、上着で隠れてしまっているけど、抜く時に問題はなさそうだった。
視線を、シレンさんから前に向ける。
前方には、スズさんとカノさんがいる。
スズさんは、茶髪のショートヘアに、同色の瞳をしていて、活動的な印象を受ける顔立ちをしていて、一方のカノさんは、少し長めの黒髪と、同色の瞳。スズさんから受ける活動的な印象とは、正反対のインドア的な印象を受ける。
そんな正反対な二人は、前を歩きながら仲良く並んで話していた。
その距離は、ほぼ初対面の私から見ても近くて――――、そういう関係だと邪推してしまう。
けど、男女の幼馴染というのは、そういうものなのかもしれない。
私には男性の幼馴染はいないから(そもそも男性の友人がいない)、よくわからないけれど。
というか、男女が二人仲良くしているだけでそういう邪推は失礼だと思う。内心で自戒する。
「ツキノ、どうかした?」
「いえ、ちょっと考え事をしていただけです。気にしないでください」
シレンさんに声をかけられて、そう返す。
……ちょっと素っ気なかったかな。
なんて考えていると、ぽん、と頭に手の感触。
一瞬遅れて、これはシレンさんの手だと理解した。
「何か悩み事があるのなら、話くらい聞くよ。話すだけでも違うだろうし」
「あ、ありがとう、ございます。大丈夫です。悩み事とか、そういうのじゃないですから。でも、悩みができたら、そうします」
「ん」
私がそう言うと、シレンは頷いて、私の頭を撫でた後、少し歩みを速めて、前のスズさんとカノさんに声をかけていた。
「カノ。あとどれくらいだ?」
「…………まだ少しかかる」
近いはずのシレンさんとカノさんの会話が、遠く聞こえる。
撫でられた頭に、手をやった。
そうすると、撫でられた時の、彼の手の感触が思い出されて、顔が赤くなる。
「……うぅ」
妙な呻き声を出して、私は前にいるシレンさんたちを見る。
私は、赤くなった顔をさすりながら、歩く足を速めた。
シレンさんは、さっき「悩み事があるなら聞くよ」と言ってくれた。
私は「悩み事はありません」と言ったけど。
……本当は、一つだけ、悩みがある。
(シレン、さん)
ふとした拍子に、貴方を思い出すんです。
ふとした拍子に、貴方に逢いたいと思うんです。
この感情は、何ですか?
次は…キャラの簡単な紹介でも書きます。
それが終わったら、5章に入ろうかと。




