”女の子”
番外…というか、軽い補足?
5話の、カフェからワープクリスタルまでの合間の話です。
今回も短いです。
(……妙な話だよなぁ)
ついさっきまで、顔も名前も知らなかった女の子と、クエストに行くことになるなんて。
ツキノは俺を知っているようだったけど(誠に不本意ながら、「光聖騎士団」では俺のことは有名なんだろう。主に悪名で)、俺は知らないし。
少なくとも、あんな可愛い子を(たとえ作り物なのかもしれなくとも)忘れるなんてことはないと思う。
金のロングヘア、それも腰まであるストレート。そして碧眼。ギルドの制服の上からでもわかる、スタイルの良さ。リアルは外国人なのかもしれない。向こうは発育いいらしいし(ワタルからの要らない情報)。
いや、でもこの小動物的な雰囲気はあちらの国のイメージとは結びつかない。
(……まあ、いいか)
そんなに深く考えることじゃないだろう。アバターなんだし。というか、リアルの詮索はマナー違反だ。
「あ、あの、シレンさん」
「ん?」
呼ばれて振り向くと、隣を歩いていたはずのツキノは、俺より数歩後ろにいた。
「……あれ、どうかした?」
「は、速いです。あの、できればもう少しゆっくり歩いていただけませんか?」
駆け足で隣に並んだ彼女がそう言う。
そんな彼女の姿を見下ろして思う。
(…小さい)
女の子なんだから、当たり前と言えば当たり前だけれど。
けれど、明らかにスズとは違う。
あいつも身長はそんなに高くないけど(スズ曰く同年代の女子の平均身長らしいが)、でも、ツキノとは何か違う。
別に、ツキノがか弱そうとか、そんな風に思っているわけじゃないけど。
なんというか、小さい。
(……女の子、か)
ああ、そうだ。この子は“女の子”なんだと、遅れて自覚した。
一番身近な女性がなんとも逞しいスズなので、忘れてしまっていた。
小さいと感じるのも当たり前だ、だってこの子は、“女の子”なのだから。
「ごめん、もう少し遅くする」
「はい。……あの、ごめんなさい。私が無理を言って付き合ってもらっている立場なのに」
「いや、気にしなくていいよ。俺が鈍いだけだ。男と女なんだから、歩幅違うよな」
そんな当たり前のことにも気付けなかった。
どれだけ鈍いんだ、と思う。
これがワタルなら、普通に気付いて歩幅を合わせただろうし、カノはあのスズを女の子扱いする奴だし、意識する必要すら無いだろう。シズだって無言で歩幅を合わせるはずだ。
ホント、鈍い。これもソロの弊害だろうか……、っていやいや。
「とにかく、ゆっくり行こう。これくらいでいいか?」
「あ、はい。ありがとうございます」
彼女の歩幅に合わせて、ゆっくりと歩く。
意識して歩かないと、ついいつもの歩幅で歩いてしまいそうになる。
気をつけないといけない。
(……たぶん、少しの間だけだろうけど)
けど、せめて、それまでは、ちゃんとエスコートしないとな。
この時の俺は、ツキノと長い付き合いになるとは、思ってもいなかった。
もう何話か続きます。あと何話続くかは俺も知りません。
書きたいのを書き終わったら、5章に入る予定です。




