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《Last World Online》  作者: 黒藤紫音
4章:仲間・シズ
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「……あの、似合いますか」

 ティアシティ、出店街。

 件の出店に行って、ツキノは「イビル・バイコーンの両角」を店主に手渡した。


「おお……これは」

「これで、とっておきの品物、見せてくれますか?」

「ああ。もちろん」


 店主はそう言うと、自分のアイテムストレージに両角を仕舞った。


「って言っても、今この場で作れるのか?」

「ああ、それは大丈夫さ」


 店主はそう言うと、ウインドウを操作して、アイテムストレージからいくつかアイテムを引っ張りだした。

 ハンマーやらノミやらetc……が並べられていく。


「武器やら防具作るなら鍛冶の施設がいるけど、装飾品くらいなら道具があれば今この場で作れる」

「準備いいなぁ」


 売りのための店開いてるところで作成用の道具用意してるって。アイテムストレージ圧迫するだろうに。

 いや、ある意味では商売人として正しいのかもしれないけど。


「さて、じゃあ作るか」


 アイテムストレージから今度は素材アイテムを取り出した。

 さあ作ろうとハンマーを持った店主の手元を、俺もツキノも、シズもまじまじと見るが、店主はそんな俺たちの様子に、困ったように眉を寄せた。


「一応、企業秘密だから見るのは勘弁してくれないかね?」

「あ、ごめんなさい」

「すみません」

「すみませんでした」


 謝りながら、俺たちは視線を逸らした。

 相変わらず猥雑としている出店街の様子を眺める。

 ガンガン、とおそらく作業の音であろうそれを聞きながら周囲を見ていると、何故か視線が集まっているのを感じた。

 少し考えて、その理由に思い至る。

 おそらく、ツキノとシズだろう。

 ツキノは美少女だし、品の良さが仕草から滲み出ているから、こんな猥雑な空間は似合わない。そうでなくとも彼女は「光聖騎士団」だ。余計に目立つだろうな。

 そしてシズの場合は、こいつも美形だからだ。

 少なくとも人並み以上に整っていると思う。

 美少女と美形の男がいたらそりゃ目立つだろうな。

 っつーか、その二人に挟まれてる俺みたいなフツメンはどうすりゃいいんだ。

 何あの男、みたいな具合で俺も目立ってないか?

 目立つのは嫌いなんだけど……いいことないし。


「できたよ」


 なんて考えは、店主の声で途切れた。

 声のした方を見る。


「ほら」


 そう言う店主の手には、腕輪があった。

 店主の「とっておき」という言葉通り、見た目からでも強力そうだ。

 ちょっと欲しいかも。


「名前は《ホーンズ・ブレスレット》。お嬢ちゃん、どうぞ」

「あ、はい」


 手渡されたブレスレットを、ツキノが受け取る。

 ツキノはウインドウを操作し、手にした《ホーンズ・ブレスレット》のパラメータを見る。


「わ、すごいですねこれ……」


 パラメータを見て、ツキノは驚いている。

 はて、どんな効果があるのやら。

 少々気になるが、装備やスキルの詮索はマナー違反である。

 代わりに。


「ツキノ、良かったな」

「はい!」


 嬉しそうに笑うなぁ、この子。

 棚から牡丹餅…はこの場合違うかもしれないけど。


「っつーか、店主さんもいいのか?とっておきなんだろ?」

「構わないさ。わざわざ取ってきてもらったんだしね」


 ……まあ、本人がそう言うなら何も言うまい。


「ってツキノ。時間は?」

「え? ……あ、そろそろ……」

「じゃあ、この場で解散。それでいいな」


 言うが早いか、シズはさっさと歩き始めた。


「少し用事がある。先に行く」

「おう」

「はい。今日はありがとうございました!」


 ん、とツキノの言葉に手を振りながら、こちらを見ることもなく、シズの姿は消えて行った。


「じゃあ、シレンさん。私も……」

「ああ、ちょっと待ってくれ、ツキノ」

「はい?」


 こちらを見て、きょとんと首を傾げているツキノ。

 うん、可愛い、ってそれはもういいから!関係ないから今の状況に!お前頭の中パッパラパーになってないか!?……なんて、自分にツッコミを入れる。

 いや、ホント今の状況とは何も関係ないし。


「あの、シレンさん?」


 ほらツキノ、なんか困ってるだろ。

 向こうは用事もあるんだから、下手に時間取らせるわけにはいかないっての。


「ちょっと、動かないで」

「え?」


 アイテムストレージから、あるアイテムを取り出す。

 そして、身体を近づけて、手を伸ばすと、ツキノは不安そうに身体をすくめた。

 まあそうなるだろうな、と思いながらも、俺は彼女の髪に触れる。


「あの……」

「動かないで。すぐ済むから」


 髪に触れて、取りだしたアイテムを付ける。

 一歩離れて、彼女の姿を見る。

 ……うん、やっぱり可愛い。


「シレンさん?」

「ああ、自分じゃ見れないよな」


 とはいえ、俺のストレージに手鏡なんて洒落た物はない。必要ないし。


「おお、お嬢ちゃん、可愛いね」


 少し悩んでいると、店主がそうツキノに声をかけた。


「可愛い、って」

「ほら、鏡見るかい?」


 店主はストレージから手鏡を取り出し、ツキノに手渡した。

 受け取ったツキノは、鏡に写った自分の姿を見、そして驚いていた。


「え、これ……」


 そう言って、鏡を持った手とは逆の手で、髪に手をやる。

 ツキノが手をやったところには、髪飾りがついていた。

 リボンをモチーフにしていて、彼女の瞳と同じ碧をしている。


「シレン、さん?」

「ん、さっき買ったんだ。あれ、気に入らなかった?」

「い、いえ!そうじゃなくて……」


 顔を赤くして、ツキノは俺を見上げていた。


「ど、どうして……」

「いや、半分乗せられたんだけどな?でも、君に似合いそうだと思ったのも本当」

「……あぅ。いや、でも。その……」

「別に高い物じゃないし、軽い気持ちで受け取って」

「…………」


 ……。あれ、なんか反応が。

 ミスったか?


「いらなかったら捨てても……」

「そうじゃ、ないです」


 プレゼント自体は嫌じゃないみたいだ。これはミスじゃなかった。

 ……じゃあ、何だ?


「シレンさん」

「うん?」


 俺が悩んでいると、ツキノが俺の名前を呼んだ。

 思わず彼女を見下ろすと、ツキノは顔を赤くしたまま俯いていた。


「……あの、似合いますか、この髪飾り」

「あ、うん。可愛いと思う」


 俺が素直な感想を口にすると、ツキノは顔を上げて、にっこりと、すごく幸せそうな笑顔をしていた。

 一瞬、見惚れる。


「ありがとうございます」

「あ、ああ。うん。喜んでもらえたのなら何より」


 どもった。

 見惚れていて、我に返った俺は、顔が熱くなるのを隠すように、ツキノから顔を逸らした。


「それより、ツキノ。ギルドは?」

「あ、そうでした。シレンさん、私もう行きますね」


 ぺこ、と頭を下げて、ツキノは歩き始めた。


「それじゃあ、シレンさん。また。髪飾り、ありがとうございました」

「あー……、うん」


 手を振るツキノに、俺も振り返しながら、彼女を見送った。


「……青春だね」


 店主の言葉に、余計に顔が熱くなった。



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