「いつも通り――――」「――――行くか」
新キャラです。
ティアシティのワープクリスタル。
ここが待ち合わせ場所である。
「シレンさん」
「うん?」
「これから来る仲間の人って、どんな人ですか?」
隣にいるツキノにそう訊かれ、俺は腕を組んだ。
どんな奴かと訊かれると――――。
「無愛想。でも常識人。苦労人とも言えるか」
「……ずいぶんな物言いだな、シレン」
後ろから聞こえた声に、振り返ると、そこには灰色の髪を緑の瞳をした男が立っていた。
腹立つことに俺より数センチ高いところにある顔が、俺を見下ろしていた。
「シズ。悪い悪い」
「……まあ、いいがな」
シズ。
俺がつるんでいる仲間の最後の一人だ。
「初めまして。ツキノと言います。「光聖騎士団」に所属しています」
「ああ、初めまして。俺はシズ。「ラストエデン」に所属してる」
シズは胸についている「ラストエデン」のバッチを見せながら言った。
「ラストエデン」というのは、このLWO内で最大のギルドである。
優に「光聖騎士団」の数倍を超える人数のプレイヤーが所属しており、「ラストエデン」のギルドリーダーは、間違いなくLWO最強の一角を誇る。
長々話してると脱線しそうなのでこのくらいで。
「「Last World(最後の世界)」の中の「Last Eden(最後の楽園)」ね。いったいどういう意味なのやら」
「まあ、それはうちのマスターに訊かないとわからないさ。まあ、それはともかく、行かないか?」
「そうだな」
シズの言葉に頷きながら、俺はツキノを見る。
「ツキノ、この後用事あるんだろ?」
「あ、そうですね。まだ余裕はありますけど……」
「余裕はあっても、早く終わらせるに越したことはないさ。さっさと行くか」
そう結論づけて、俺とツキノ、シズは、ワープクリスタルにエリアコードを入力し、目的地に飛んだ。
○
LWOの四季は、リアルとリンクしている。
春は暖かく、夏は暑く、秋は涼しく、冬は寒く。
なんともまあ、ここまでリアルにしなくていいだろというくらいリアルに再現している。
なので、現在リアルでは、四季的にはまだ春であるこの日、LWOは暖かかった。
空を見上げれば疑似太陽が周囲を照らしている。暖かな木漏れ日がなんとも言えなかった。
こんなところで昼寝したらさぞ気持ちいいんだろうな。しないけど。
閑話休題。
森フィールドに飛んだ俺たちは、「イビル・バイコーン」が出現する場所に向かって歩いていた。
「ツキノ、手」
「あ、はい」
俺が手を差し出すと、ツキノはそっとその手を取った。
転ばないよう、気をつけながら、彼女を先導する。
「……何してるんだ?」
俺とツキノより前方を歩いていたシズは、そんな俺たちのやり取りを見て、呆れたような、怪訝そうな顔をしていた。
「ああ、前にここに来た時、ツキノ転びそうになってたからさ。そうならないように手を取ってる」
「あはは……ドジでごめんなさい」
「謝らなくていいよ。俺が好きでやってることだし」
俺が微笑しながらそう言うと、ツキノはにこ、とした微笑みを返した。
そんな俺たちを見て、シズははあああ……、と深い溜息をついていた。
「俺、ひょっとしたらお邪魔か?」
「何ワタルみたいなこと言ってるんだよ。お前がいないと駄目なんだって」
「……だといいけどな」
何とも複雑そうな顔をして、シズは前に向き直って進んでいた。
そんなシズに、俺が内心首を傾げていた。
ワタルといいシズといい、何言ってるんだ?
――――と。
「……っ。シレン、ツキノ」
「わかってる」
俺はツキノの手を掴んでいた右手を離し、腰のホルスターに入っている銃を掴んだ。
そして抜くのと同時に、樹の上から影が落ちてくる。
前も戦った、「ポイズン・スパイダー」だ。
「ひゃあ!」
ツキノが、これまた前みたいな悲鳴を上げる。
「なんだ、ツキノは虫苦手か?」
「は、はい……。あ、でも、戦えないほど苦手ってわけじゃないですから!」
「でも、得意ってわけでもないだろ」
「……はい……」
ツキノがしょんぼりした。
俺はそれを見て、くす、とツキノに聞こえないように微笑った。
ここでしょんぼりしてるツキノをからかってもいいけど、そんなことしたら拗ねそうだ。
拗ねてるのも可愛いんだけど、そんなツキノを俺以外が見るとか考えるすごい不愉快というかそういうのを知ってるのは俺だけでいいとか思って違うだろ。俺別にツキノの彼氏でもなんでもないから。そんなこと言える立場じゃないから。
「シレン」
「あ、ああ。行くぞ」
シズが「ポイズン・スパイダー」に突っ込んでいくのを見ながら、俺はトリガーを引いた。
後ろでツキノが剣を抜く音が聞こえるのと同時に、放たれた銃弾が蜘蛛にヒットした。
○
何度か戦闘を繰り返し、俺たちはようやく、「イビル・バイコーン」が出現する場所についた。
……が、それらしい姿は見えない。
「シレン、この辺りにいるか?」
「ちょっと待て、軽く探ってみる」
そう言って、俺は索敵スキルを発動した。
銃士というクラスは、その特性、戦闘スタイルのため、ソロには向かない。
もし仮にソロで戦うのなら、剣士や戦士のように真正面から向かうのではなく、隙を探り、先手を取る必要がある。
なので、相手がどこにいるか、周囲に何があるか、知る必要がある。
そういうわけで、基本的に銃士は索敵スキルを上げている。
当然、俺も上げている。
そんなわけで辺りを探ってみると、マップにアイコンが浮かんだ。
おそらく、こいつが「イビル・バイコーン」だ。ここから少し奥に行ったところにいる。
「いたか?」
「ああ。もう少し奥だな」
そう言って、俺とツキノ、シズは樹の影に隠れながら進んでいく。
「便利だな、ホント。俺も少し上げてみるかな」
「お前もう結構上がってなかったか?」
「シレン並に、ってことさ」
「あんま必要ないだろ……」
などと軽口を叩き合っているうちに、見えた。
「邪悪」の名の通り、全身黒い、二つの角を持った馬だ。
あれが「イビル・バイコーン」。
数度戦ったことがあるが、やはり何度考えても、好き好んで戦いたいと思えない相手だ。
「…どうします? このまま攻めますか?」
ツキノが声を潜めて言う。
その言葉に、俺はいや、と返す。
「それは駄目だ。正面からやり合うと面倒だし……。シズ」
「ああ、わかってる」
俺が名前を呼ぶ。
シズには、それだけで伝わった。
「いつも通り――――」
「――――行くか」
言うのと同時、俺とシズは飛び出した。




