とっておきの
さて、店員の女性の口車に乗せられ、まんまとアクセサリーを買わされた俺は、立ち上がって、ツキノを探していた。
といっても、あの子は(良い意味で)目立つから、すぐに見つかるとは思うけど。
なんて考えている間に、見慣れた金髪を見つけた。
そこに向かって、歩を進める。
「ツキノ」
「あ、シレンさん」
ツキノは屈んで、店先に並べられた商品を見ていた。
装飾品が並んでいた。
装飾品と言っても、さっき俺が買ったようなアクセサリーとは違い、立派な装備品で、装備すると色んな効果が出る。
「興味あるのか?」
「はい。剣も替えましたし、他の装備も見直そうかなって」
なるほど。
武器が変わると、他の装備とかも色々調整いるからな。そのままでも良かったりするけど。
なんて考えていると、ツキノに店主が声をかけた。
「お嬢ちゃん、こいつらに興味があるのかい?」
「はい」
「そうか……じゃあとびっきりのを見せたいところだけど、なぁ……」
歯切れの悪い台詞だ。
どうかしたのか、と俯いている中年の店主を見る。
「どうかしたんですか?」
ツキノがそう訊くと、店主は俯いていた顔を上げた。
「……お嬢ちゃん、「光聖騎士団」かい?」
「はい、そうですけど、何か?」
「ちょっと、頼みがあるんだが、いいかい?」
「なんでしょう?」
「光聖騎士団」は信頼抜群だなぁ、と思った。
まあ、一般プレイヤーたちが楽しめるよう、規律を持って行動する彼らは、確かに信頼できる集団か。
「ある素材を取ってきてほしいんだ。それがあれば、とっておきのを作れるんだけどなぁ」
「どんな素材ですか?」
店主は一息溜めて、口を開いた。
「「イビル・バイコーンの両角」さ」
店主のその言葉に、俺は両目を剥いた。
「ちょっと待て。「イビル・バイコーン」ってあれか。あの速い奴」
俺が驚愕を隠せずにそう言うと、店主の方を見ていたツキノがこっちを向いた。
「シレンさん、知ってるんですか?」
「中堅レベルのモンスターだけど、上級でもソロやクラスによっては手間取る、面倒なモンスター」
あくまで手間取るだけだ。決して倒せないわけじゃない。
まあだからといって、何度も戦いたいと思う相手でもないけど。
二角獣の名の通り、二本の角が生えた馬型モンスター。
馬だからか、スピードが速い。そのため、こちらの攻撃は避けられる、そしてこちらが防御に回った時は、そのスピードと御立派な角で攻撃してくる。その攻撃がまた強い。
「銃士の俺でも、時間かければソロで倒せるかもしれないけど…あんまり相手したくないなぁ」
「シレンさんのレベルでもですか?」
「レベル云々よりは、相性の問題だしな。剣士なら相手しやすいだろうけど、な……」
俺がそう言うと、ツキノは俺から、また店主のほうを見た。
「その素材、取ってくればいいんですね?」
「ああ。……でもいいのかい?そこのお兄さんの言うとおり、厄介な相手だよ?」
「大丈夫です」
とん、と胸を叩いて、彼女は言った。
「任せてください。その代わり、取ってきたら、そのとっておきの品物、見せてくださいね」
「取ってきてくれるのなら、見せるどころか、差し上げるよ」
太っ腹な店主だな、と少し場違いなことを考えた。
「場所は、森フィールドの奥ですね」
出現エリアを確認すると、ツキノは立ち上がって、俺を見た。
「シレンさん、手伝ってくれませんか?」
「いや、手伝うのは全然いいけどな」
言いながら、俺はウインドウを開く。
「さっき言った通り、ちょっと面倒な相手だ。剣士と銃士だしな」
だから、と俺は続ける。
「攻撃を受けてくれる壁が要る。……心辺りあるから、ちょっと待ってて」
俺がそう言うと、ツキノは何かに気付いたのか、あ、と言う声を上げた。
「以前言っていた、仲間の一人ですね?」
「ああ。あいつがいると戦線がだいぶ安定するから」
自信を持って、そう言う。
あいつがいると、本当に心強い。
俺はウインドウからアドレスを呼び出し、入力したメッセージを飛ばした。




