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《Last World Online》  作者: 黒藤紫音
3章:仲間・スズ&カノ
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分布調査

 LWOの草原フィールド。

 ガン!と銃声が響く。

 銃口から放たれた銃弾は、寸分違わず亜人―――《グリーン・リザード》にヒットする。

 ダメージにその場でたたらを踏んでしまったトカゲが人の形を取ったような姿のモンスターに、スズが突っ込む。


「っふ!」


 槍の連続突き、《ラッシュ・スピア》。

 全て的確に《グリーン・リザード》にヒットし、HPがぐん、と削られる。

 それでもまだ動ける亜人だが、そこにツキノが斬りかかる。

 《ハイ・スラッシュ》を叩き込んだ。


「っはあ!」


 HPが0になる。

 パン、という破裂音を響かせ、亜人の姿は消えた。


「…………《グリーン・リザード》。出現率80%。……やはり、微妙に変化しているか」


 俺とツキノ、そしてスズが戦っている間、後方にいたカノが、そうぽつりと呟いた。

 ふう、と息を吐いて銃をホルスターに収め、俺は振り返ってカノを見た。


「お前、手伝えよ」

「…………手伝う必要があったのか?」


 これである。お前の頼みで手伝ってるんだけどな。

 ほらスズを見てみろ。ものすごく不満そうな顔してるぞ。


「カーノー。手伝いなさいな。あんただって戦えるでしょうが!」

「…………戦っても構わないが、それだとチェックができない。それに、お前たちなら大丈夫だろう」


 信頼してくれるのはありがたいけどな。

 やっぱり手伝え、と言いたくなる。


「シレンさん」

「うん?」


 ツキノに呼ばれて、後ろを振り返る。

 剣を鞘に収めながら、こちらに歩いてきたツキノは、何か考えているようだった。


「ちょっと耳を貸していただけませんか?」

「いいけど……どうした?」


 言いながら、俺は少し屈む。

 ツキノは一生懸命に背伸びをしながら、俺の耳に唇を寄せた。


「スズさんとカノさんって、ずいぶん仲が良いみたいですが、何か特別な関係なんですか?」

「特別って?」

「あの、つまり……交際しているとか、そういうことです」


 ぶふっ。

 ツキノの言葉に、思わず吹き出してしまった。

 だって今なんて言った?

 スズとカノが付き合ってるって?


「ぶくくく……!」

「……笑わなくてもいいじゃないですか」


 俺が腹を抱えていると、ツキノはむう、と頬を膨らませていた。

 あ、これまた拗ねてるな。


「ごめんごめん。でも、そう見えるのか?」

「……短絡的だな、とは思うんですが。なんか、距離が近いので……」


 言われて、スズとカノの二人を見てみる。

 スズがカノに詰め寄っていて、カノはそんなスズの言葉をのらりくらりとかわしている。

 見慣れている俺からすると珍しくもない光景だが、確かに言われてみると近いかもしれない。

 何せ、今カノが少し前に倒れれば、唇と唇が触れ合いそうなほどに近いのだ。


「確かに距離近いけど……あの二人は付き合ってないよ」

「……そうなんですか?」

「ああ。でもまあ、確かにある意味特別な関係かも」

「え?」


 きょとん、とツキノが首を傾げていた。

 そんなツキノを見下ろしていると、自然と微笑が浮かんだ。

 俺は口を開く。


「幼馴染なんだって、リアルじゃ」

「幼馴染……」

「うん。ちなみに、俺とワタルもそうだよ」


 俺がそう言うと、ツキノはううん、とまた考え込み始めた。

 しばらく考え込んだ後、口を開いた。


「それにしたって、近いような……」

「まあ、それがあの二人の間合いなんだろうさ」


 俺がそう結論づけると、ツキノは一応納得してくれたらしい。考え込むのをやめていた。

 そんなツキノを見、俺はまだ言い争っているスズとカノに声をかけた。


「おーい、そろそろ行こうぜー?」

「あ、うん。……ホント、手伝いなさいよ」

「…………善処する」


 言い合いつつこちらに歩いてくる二人。

 ツキノではないけど、まあ確かに、あの二人は仲が良い。

 明日から「付き合い始めたから」なんて言われても、案外納得してしまうかもな、なんて思った。



 スズとカノ、この二人のクラスは槍術士(ランサー)だ。

 ランサーはAGIが伸びやすく、スピードを活かした戦い方をする。

 スズの《ラッシュ・スピア》のように、手数が命だ。


「ほい、と!」


 スズが連撃を叩き込み、また遭遇した《グリーン・リザード》は爆散した。

 ……これ、本当にスズとカノだけで良かったかもしれない。


「…………ふむ。《アラーム・ミミック》くらいか、新型のモンスターは。後はモンスターの種類に変わりは無いし、少し出現確率が変化しているくらいか……」


 カノは言いながら、開いたウインドウに何かを書きこんでいる。


「もう調査はいいのか?」

「…………いや。もう少し調査はしないといけない」


 そう言うと、カノは前方で戦っていたスズに近づいていった。

 俺も、スズと同じように前方で戦っていたツキノに近づいた。


「お疲れ様、ツキノ」

「いえ、シレンさんが援護してくれたからですよ」


 ニコ、と笑いながらそう言うツキノ。そう言ってくれるとありがたい。


「そっか」

「はい。……でも、カノさん大変ですね。いえ、情報屋の方々皆さんが、ですけど」

「ああ、確かに」


 何せ、情報屋は分布調査以外にも、何千種類以上のアイテムのリストアップ、クエストの発生条件、モンスターの弱点と、俺が挙げた以外にもたくさんのことをしないといけないのだろう。

 情報を集めるというのが彼らのアイデンティティであり、そういうプレイスタイルが彼らの誇りだ。

 俺はその活動理念を素直に尊敬する。まず、俺には出来ないことだ。


「「光聖騎士団」には、専属の情報屋とかいなかったっけ?」

「いるにはいますが……私はただの一ギルドメンバーですから。あまり面識はないですね」

「そうか」


 レベル120超えてるとはいえ、そんなもんか。まあ上級プレイヤーが何人も所属しているはずだし、そんなものかもしれない。


「そういえば、シレンさん」

「うん?」


 ツキノに呼ばれ、彼女のほうを見る。


「どうした?」

「シレンさんには、何人か仲間がいるみたいですけど……ワタルさん、スズさん、カノさん以外にもいらっしゃるんですか?」

「ん、んー……」


 仲間か。

 プレイし始めてからできた、ただの腐れ縁なんだけどな。

 なんだかんだつるんではいるけど、同じギルドにも入っているわけでもない。

 よく考えれば、結構謎の繋がりだな。


「あと一人、いるよ。拳闘士(ボクサー)が」

「……あの、その人って……女性、ですか?」


 ツキノの言葉に、俺は首を傾げた。

 いや、どんな奴か訊くのはわかるけど、そこ気にするところか?


「いや、男だけど?」

「あ、そうなんですか?」


 俺はそう言うと、ほっとしたような顔をした。

 いやなんで?


「……どうかしたのか?」

「いえ、何でもないです。あ、呼ばれてますね」


 言われて前を見ると、スズが手を振っているのが見えた。

 俺がそれを確認すると、ツキノは俺の服の袖を掴んだ。


「行きましょう?」

「あー、うん。わかった」


 ツキノに引っ張られるように、小走りになってスズたちの元へ行く。

 ……女の子というのは、本当よくわからない。




書き溜めてたストックが切れたので、更新遅れます。

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