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《Last World Online》  作者: 黒藤紫音
3章:仲間・スズ&カノ
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「お姫様みたいだな」

「わっ……」

「おいおい、大丈夫かツキノ」


 こけそうになった彼女を抱き止める。

 LWOの森フィールド。

 道無き道を歩いている俺とツキノだが、後ろを歩いていたツキノは樹の根っこにつまずいていた。

 VRMMORPGである《Last World Online》は、世界をリアルに表現していた。

 周囲に生えている樹からも、しっかりとした存在感を感じる。

 まあ、リアルに表現しすぎたせいで、樹の根っこにひっかかるなんてドジなことをしてしまう子もいる んだが。


「大丈夫か?」

「ええ。ありがとうございます」

「ほら、手」

「あ、はい」


 俺が空いている手を差し出すと、彼女は素直に手を取った。

 柔らかく、細いその小さな手を、俺は壊さないように、優しく握る。

 そして、道無き道を歩いていく。


「……お姫様みたいだな」

「え?」

「いや、なんかツキノがお姫様みたいだなって」

「あぅ」


 何やら妙な声が、ツキノの口から出た。

 ちらりと見た彼女の顔は、赤かった。


「……じゃ、じゃあ!」

「うん?」

「シ、シレンさんは、王子様ですね!」


 ……爆弾発言が飛び出た。

 うわあ、ツキノの顔が更に赤くなっている。とんでもないことを言った自覚はあるみたいだ。

 まあ、今現在、俺も顔は赤くなってると思うけど。


「えーと……とりあえず、行きましょうか、お姫様?」

「は、はい……」


 恥ずかしくてお互いの顔を見れない。

 とはいえ、言い出したのは俺なので、男の意地と見栄で、格好つけることにした。

 ツキノの手を握ったまま、彼女が転ばないように気をつけながら、先に進む。

 俺たちが今日この森フィールドに来た目的は、クエストだ。

 クエストの手伝いをして、武器を試しにフィールドに出たらランダムエンカウントボスに出くわし、なんとか逃げ切って、アドレスを交換した日から、数日経った。

 俺とツキノは、その後も何度か会ってる。今日は、ツキノのクエストに俺が付き合っている。

 ツキノは、付き合わせてしまって悪い、と感じているようだけど、俺としては別に構わないので気にしないでいいと思う。

 まあともかく。

 今日もクエストを受けて、そのためにフィールドに出た。

 ちなみに、クエストの内容は「アイテムを指定数集めろ」という、採取クエストだ。


「あと……二つか」

「そうですね」


 ウインドウを開いて、採取したアイテムを確認する。

 この分ならそんなにかからないな、と考えていると、第六感が働いた。

 思わず足を止める。


「シレンさん?」

「来るよ」


 俺がそう言ったのと同時、樹の上から、何か影が落ちてきた。


「ひゃあ!」


 その影を見て、ツキノが可愛らしい悲鳴を上げた。

 落ちてきたのは、虫型……いや、蜘蛛型のモンスターだ。

 「ポイズン・スパイダー」。……毒持ちだ。面倒な。


「ツキノ、どうした?」

「あ、あの……大丈夫、です!」

「……いや、あんま大丈夫に見えないけど」


 まあ、事情は後で訊くとして、さっさと片付けよう。

 俺は銃を構えて、トリガーを引いた。

 銃弾が撃ち出されるのと同時、ツキノが剣を抜いて駆ける。

 そして、剣の一撃が叩き込まれた。



「……私、ちょっと虫が苦手なんです……」

「そうなのか?」


 戦闘が終わって、武器を仕舞いながら、ツキノはそう言った。

 なるほど、だからあんな反応したのか。


「特に、蜘蛛とかが駄目なんです……」

「けど、倒せてたってことは……そこまで深刻じゃないのか?」

「はい。触れないほど苦手ってわけじゃないですから」

「いやまあ、蜘蛛とか触れる奴のほうが少ないと思うけど」


 俺もカブトムシとかクワガタならともかく、蜘蛛は触りたくない。あと百足。


「さっきはいきなり現れたから?」

「はい。いきなりはちょっと」

「なるほど……でもまあ、」


 にやり、とした笑みを浮かべる。

 ツキノは、首を傾げてこっちを見ている。


「さっきはずいぶん可愛い悲鳴だったな。ひゃあ、って」

「あぅ。……あの、シレンさん……」

「可愛かったなー、本当に」

「もう、シレンさん!」


 あ、どうやら怒らせたらしい。

 むう、と眉を寄せて、頬を膨らませていた。


「ひどいです」

「ごめんごめん」

「もういいです」


 つかつかと、歩みを速めたツキノは、俺を追い越した。

 俺はくすくすと笑いながら、彼女の後を追う。


「ごめん、悪かったよ。謝るから許して、ツキノ」

「シレンさんのばか」

「ごめんって」


 怒っているんだろうけど、なんというか、先に可愛らしい、微笑ましいという気持ちが出てきてしまう。

 こんなんじゃ許してくれるわけないよなぁ、なんて思いながら、俺は足を速めた。




書くスピードが遅くなっていくと思います。


感想をくれると狂喜乱舞します。ホントに。

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