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《Last World Online》  作者: 黒藤紫音
2章:仲間・ワタル
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お気に入り

 俺たちが逃げるために走っているうちに、どうやら街にだいぶ近づいていたらしい。

 ツキノは、どうやらもう剣を試す気にもなれなかったようで、俺たちが息を整えた後、街に戻りましょう、と言った。

 俺たちは一も二もなく賛成して、街に戻った。


「っあー、なんか疲れたな……」

「同感だ」

「そうですね……」


 街中を歩きながら、ワタルが言った言葉に、俺とツキノが疲れた口調で同意した。

 本当に疲れた…色々と。


「じゃあ、今日はもう、このまま解散でいいか?」

「そうするか。ツキノも、試しはもういい?」

「はい、充分試せました」


 《ホワイトカメリア》は、見ている限り、ツキノとの相性は良かったと思う。

 あれなら、少々レベルの高い相手でも戦えるだろう。


「じゃ、解散ー」

「あ、待ってください」


 俺とワタルがツキノから離れようとすると、ツキノが俺たちを呼び止めた。


「どうした?」

「あの、もし良かったら、アドレスを交換しませんか?」

「アドレス?」


 LWOでは、リアルの携帯電話と同じように、アドレスを知っていれば、メッセージを送り合うことができる。

 ただまあ、誰彼構わず教えるなんて阿呆な真似は誰もしない。

 それはともかく。


「いいのか?」

「はい、私は、これからもシレンさん、ワタルさんと仲良くしたいです」


 そう言うツキノは、にこにこと邪気の無い笑顔をしていた。

 ……今わかった。どうやら俺は、ツキノの笑顔には弱いらしい。


「いいよ、教える」

「ありがとうございます!」

「ん。じゃあ、これが俺のね」


 ウインドウを呼び出し、アドレスを表示する。

 ツキノも同じようにウインドウを呼び出していた。


「じゃ、交換」

「はい」


 ピ、とボタンを押して、アドレスを交換し合う。数秒後、ツキノのアドレスが表示された。


「俺もいいよ。はい、これ俺のアドレス」

「ありがとうございます」


 こちらも交換し終えたようで、ワタルは楽しそうに笑っていた。

 交換が終わると、ツキノはその場で頭を下げた。


「お二人とも、今日はありがとうございます。私のクエストに付き合っていただいた上に、武器の試しにまで」

「気にするな。楽しかったし」

「そうそう」

「それに、ツキノみたいな可愛い子と一緒にいれたしね」


 そう言うと、顔を上げたツキノはまた顔を少し赤くしていた。


「あぅ……、で、では、私、ギルドに一旦戻るので」

「そうか。それじゃ、バイバイ」

「バイバイ」

「はい、次に会うのを、楽しみにしてます」


 ツキノはそう言うと、駆け出した。

 そして走っていたと思ったら、途中で振り返って、手を振っていた。


「本当に、ありがとうございました!私も、今日は楽しかったです!」


 ぶんぶんと手を振っているので、こちらも笑いながら手を振り返す。

 それに満足したのか、今度こそ、ツキノはこちらを振りかえらず、走っていった。


「……可愛い子だったな」


 ツキノの姿が見えなくなると、ワタルはぽつりとそう言った。


「なあ、本気で手ぇ出していい?」

「だから、駄目だっつうに」


 ツキノは誰の物でもない。

 けど、俺とツキノはもう友達だ。

 ワタルがいい奴なのは知ってるが、だからってはい、手を出していいですよ、なんて言えない。


「そうかい。……ま、お前のお気に入りみたいだしな」

「…………うっさい」


 否定はしないが肯定もしない。

 そんな俺をしばらく見て、ワタルはくく、と笑った。


「じゃ、俺も行くわ。クエストでもやってくる。じゃあな」

「……おう」


 そう言って、歩いていくワタルの後ろ姿を見送って、俺はふう、と息を吐いた。


「楽しかったけど、疲れた。……もうログアウトするか」


 ウインドウを呼び出し、ログアウトボタンをクリックする。

 そして次の瞬間、“シレン”の姿は、街から消えた。



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