テンプレに沿ってしまった異世界転移系主人公
「———はっ!ここは‥‥‥」
俺は伊呂波燈矢。
ネット小説大好きなただの男子学生だ。
ある日いつものように暗い気持ちで学校に向かっていると、俺を中心に魔法陣が現れた。
(これってネット小説の“異世界転移“ってやつ!?)
眩い光に包まれるとそこは神殿のような場所だった。
周りに見とれていると不意に声を掛かけられた。
「おい、そこのお前」
「はっ?俺ですか?」
「お前以外おらんだろ」
そこに居たのはローマ服を着た銀髪美少年(美少女?)が立っていた。
「突然だがお前を私の世界に飛ばす。完全に私の都合だ。元の世界には帰れない。
謝るつもりもない。だがその代わり何か一つ能力をくれてやる。それで文句ないだろう?」
テンプレチートキターーー!
これで俺も異世界無双できるのか。ワクワクしてきたな。
「それで何の能力を———」
「鑑定スキルがいいです!」
やっぱ鑑定スキルだよな、それ以外あるか?いや、ない(反語)
日本人だし生き物を殺すなんて無理だよ。
だから鑑定スキルを使って魔道具とかの特性を見抜いて俺SUGEEEEするのが目標だ。
商人とか、戦闘補助員とかいいんじゃないか?
「本当にいいのか?魔法とかじゃなくて?
私は“嫌がらせが大好き“だが優しいからな、もう一度だけチャンスをやろう」
「鑑定スキルがいいです!」
「‥‥‥そうか。ならその能力お前にくれてやる。
鑑定したいものの前で『鑑定』と言えば説明が出てくるぞ」
俺はまた眩い光に包まれた。
「———まあ、せいぜい魔法を選ばなかったことを後悔するんだな」
そんな呟きは俺の耳には届かなかった。
◇
気がつくと俺は高原に居た。
「ここから俺の異世界無双が始まるのか‥‥‥
さて、まずは俺に向かって『鑑定』!」
すると俺の前にゲームウインドウの様な物が出てきたのだが……
名前:伊呂波燈矢
年齢:17歳
身長:173.2cm
体重:60.7kg
得意教科:社会
獲得能力:鑑定スキル
以上
……それだけ?本当にこれだけなの?
魔力とか経験値とかレベルとか無いの?
俺は焦って周りにある草を『鑑定』する。
名前:草(名称不明)
緑色。
以上
以上って何なんだよ!ムカつくな!
そうだ、この“以上“の所を『鑑定』すれば何か分かるんじゃないか?
「『鑑定』」
名前:以上
よく気づいたな異世界人!
そうだ、この世界は数字で縛れるほど生易しくない!
私は“嫌がらせが大好き“だからな!お前が「鑑定スキルがいいです!」って言った瞬間閃いたぞ!
ついでにいちいち文章を書くのが面倒くさいからな!お前が理解ってる部分だけ文章化するようにしておいたぞ!
せいぜい魔法や翻訳能力を選ばなかった事を後悔するんだな!
バーカ!
……そうか。別の世界なんだ、言語が全く違うなんてこと全然あるんだった。
しかめ俺は学ランの完全不審者で。全くの素寒貧で。
俺は絶望した。
良い子のみんなへ!
何でも能力をあげると言われたらしっかり考えて物を言うんだぞ!
作者との約束だぞ!




